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Episode04:I worried about you
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帰国してからの日々は、てんやわんやの大忙しだった。
TOMOKAとの打ち合わせで決めた案を、書類にまとめ、目ぼしいキャストのリストを作成する。
全部一からやり直しだが、いつにない手ごたえを感じていた。
TOMOKAからは、帰国した際にすぐミーティングをする予定となっている。
ジャンは大事なお客様が、海外支店から来日しており、その相手をするために、帰国してから数日、オフィス以外で顔を合わせていない。
萌衣が起きる前に仕事に出かけ、萌衣が眠った頃に帰宅する。
残業をするなと萌衣には言っていたのだが、説得力のなさに笑ってしまう。
日本では部長のポジションにいるが、向こうに帰れば祖母であるロメーヌの後を継いで時期にCEOとなるだろう。
やることがたくさんあるのだろうということは、萌衣にも分かった。
毎度のこどではあるが、ジャンが席を外すとオフィスの中は一気に和やかなムードに変わる。
ジャンの存在は、いい意味でも悪い意味でも、現場に緊張感を与えるのだ。
「清水さん。ロサンゼルス出張どうだった?」
二つ年上の田口あかりがという女性先輩社員が、萌衣のデスクのところへやってきた。
入社してから、ずっと荒巻の下で働いていたので、あまり話したことがない先輩だった。
縁故入社ということもあり、あまり女性社員に喧嘩を売らないようにと目立たないようにしていたのが仇となり、萌衣は仲の良い社員があまりいないのだ。
「すみません。お休みいただいて……」
「そんなことないって。仕事でしょ。休みじゃないって」
「でも……ご迷惑かけちゃいましたよね」
気を使いながら萌衣が言葉を発すると、田口はケラケラと笑いながら「何言ってんのよ」と萌衣の背中をバシバシと叩く。
「荒巻がべったり面倒見ていたから、あんまり声をかけられてなかったけど、ずっと清水さんと話したいなと思ってたんだよね」
「そうなんですか?」
「そうだよ。すごいじゃん。大抜擢!うちら社員の中では、清水、荒巻への下克上ってもっぱらの噂だよ」
そんな噂が流れていたとはつゆ知らず、萌衣は驚いて目を丸くした。
「そんな噂が流れているの知らなかったです」
「下積みがものを言ったね。やるじゃん。ほら、荒巻って一番の出世頭じゃん。それと同じように戦える土俵に立てたのはすごいことだよ」
「荒巻さんと同じ土俵だなんて、恐れ多いですよ」
荒巻は萌衣よりもずっと仕事ができる。
そんな荒巻を下克上することなど、想像することもできなかったし、するつもりもなかった。
TOMOKAとの打ち合わせで決めた案を、書類にまとめ、目ぼしいキャストのリストを作成する。
全部一からやり直しだが、いつにない手ごたえを感じていた。
TOMOKAからは、帰国した際にすぐミーティングをする予定となっている。
ジャンは大事なお客様が、海外支店から来日しており、その相手をするために、帰国してから数日、オフィス以外で顔を合わせていない。
萌衣が起きる前に仕事に出かけ、萌衣が眠った頃に帰宅する。
残業をするなと萌衣には言っていたのだが、説得力のなさに笑ってしまう。
日本では部長のポジションにいるが、向こうに帰れば祖母であるロメーヌの後を継いで時期にCEOとなるだろう。
やることがたくさんあるのだろうということは、萌衣にも分かった。
毎度のこどではあるが、ジャンが席を外すとオフィスの中は一気に和やかなムードに変わる。
ジャンの存在は、いい意味でも悪い意味でも、現場に緊張感を与えるのだ。
「清水さん。ロサンゼルス出張どうだった?」
二つ年上の田口あかりがという女性先輩社員が、萌衣のデスクのところへやってきた。
入社してから、ずっと荒巻の下で働いていたので、あまり話したことがない先輩だった。
縁故入社ということもあり、あまり女性社員に喧嘩を売らないようにと目立たないようにしていたのが仇となり、萌衣は仲の良い社員があまりいないのだ。
「すみません。お休みいただいて……」
「そんなことないって。仕事でしょ。休みじゃないって」
「でも……ご迷惑かけちゃいましたよね」
気を使いながら萌衣が言葉を発すると、田口はケラケラと笑いながら「何言ってんのよ」と萌衣の背中をバシバシと叩く。
「荒巻がべったり面倒見ていたから、あんまり声をかけられてなかったけど、ずっと清水さんと話したいなと思ってたんだよね」
「そうなんですか?」
「そうだよ。すごいじゃん。大抜擢!うちら社員の中では、清水、荒巻への下克上ってもっぱらの噂だよ」
そんな噂が流れていたとはつゆ知らず、萌衣は驚いて目を丸くした。
「そんな噂が流れているの知らなかったです」
「下積みがものを言ったね。やるじゃん。ほら、荒巻って一番の出世頭じゃん。それと同じように戦える土俵に立てたのはすごいことだよ」
「荒巻さんと同じ土俵だなんて、恐れ多いですよ」
荒巻は萌衣よりもずっと仕事ができる。
そんな荒巻を下克上することなど、想像することもできなかったし、するつもりもなかった。
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