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Episode02:This is my wife
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自分の衣服に残った洋梨の香りにドキドキしながら自部署に到着すると、ジャンは既にいつも通り忙しそうに働いていた。
こうやって改めて見ると、本当に整った顔立ちをしているなと思う。
ジャンがこの会社に来てから、業績は大幅にアップしているらしい。
文句をつける人もいるけれど、ジャンは非常に優秀な人材なのだ。
噂によれば、ハーバード大学を首席で卒業しているらしい。
萌衣とは頭のつくりも全く違う。
本当に、萌衣とジャンは夫婦としてうまくやっていけるのだろうか。
「清水さん。おはよう。ちょっとお願いしたいことがあるんだけど、いいかな?」
勤怠時間を専用のアプリで記録したところに、突然同僚の荒巻圭太が、大量の書類を持ってきた。
荒巻は、萌衣が入社した時から時折面倒を見てくれている。
一時は想いを寄せていたこともあったが、美人な彼女と結婚したという噂を聞いて泣く泣く諦めたことは今は懐かしい思い出だ。
「大丈夫です。あの、午前中は会議なので、その後でもいいでしょうか?」
「大丈夫大丈夫。明日の午後までにやってくれれば大丈夫だから。俺、これから一日外に出ずっぱりでさ……」
「分かりました。そういえば、今度うちの会社のイメージモデルに、アジアンビューティーのReikoが出ると噂で聞きました」
「そうなんだよ。今日もこれから撮影で、立ち会わなくちゃいけなくて……。なのに、書類は全く減ってくれないから困るよな」
「了解です。出来上がったら社内メールで送っておきますね」
「助かるよ。今度なんか奢る」
「楽しみにしてます」
萌衣はデスクについて、一日のスケジュールを確認した。
安請け合いしてしまったが、萌衣も午後は取引先の会社に出向かいないといけないのだ。
「ミス、シミズ」
冷たい声が背後から聞こえた。
嫌な予感がする。
恐る恐る振り返ると、婚約者を見る目つきとは思えないほど冷たい眼差しで、今朝一緒に食事をして、一緒に通勤してきた男が萌衣を見下ろしていた。
「君の今月の残業可能時間は残り三十分だ。部署の規定により、それよりも一分でもオーバーした場合は始末書の提出を命じる」
パワハラで訴えたら、もしかしたら勝てるのではないだろうか。
そんな考えが脳裏をよぎった。
残業をしていて始末書を書かされるなど、今まで聞いたことがない。
一体萌衣の何が気に食わないというのだろうか。
この短時間の間で、ジャンの中に何があったのか教えてくれる機械でもあったら便利なのだが。
萌衣の中では、ジャンの考えていることなど皆目見当もつかなかった。
こうやって改めて見ると、本当に整った顔立ちをしているなと思う。
ジャンがこの会社に来てから、業績は大幅にアップしているらしい。
文句をつける人もいるけれど、ジャンは非常に優秀な人材なのだ。
噂によれば、ハーバード大学を首席で卒業しているらしい。
萌衣とは頭のつくりも全く違う。
本当に、萌衣とジャンは夫婦としてうまくやっていけるのだろうか。
「清水さん。おはよう。ちょっとお願いしたいことがあるんだけど、いいかな?」
勤怠時間を専用のアプリで記録したところに、突然同僚の荒巻圭太が、大量の書類を持ってきた。
荒巻は、萌衣が入社した時から時折面倒を見てくれている。
一時は想いを寄せていたこともあったが、美人な彼女と結婚したという噂を聞いて泣く泣く諦めたことは今は懐かしい思い出だ。
「大丈夫です。あの、午前中は会議なので、その後でもいいでしょうか?」
「大丈夫大丈夫。明日の午後までにやってくれれば大丈夫だから。俺、これから一日外に出ずっぱりでさ……」
「分かりました。そういえば、今度うちの会社のイメージモデルに、アジアンビューティーのReikoが出ると噂で聞きました」
「そうなんだよ。今日もこれから撮影で、立ち会わなくちゃいけなくて……。なのに、書類は全く減ってくれないから困るよな」
「了解です。出来上がったら社内メールで送っておきますね」
「助かるよ。今度なんか奢る」
「楽しみにしてます」
萌衣はデスクについて、一日のスケジュールを確認した。
安請け合いしてしまったが、萌衣も午後は取引先の会社に出向かいないといけないのだ。
「ミス、シミズ」
冷たい声が背後から聞こえた。
嫌な予感がする。
恐る恐る振り返ると、婚約者を見る目つきとは思えないほど冷たい眼差しで、今朝一緒に食事をして、一緒に通勤してきた男が萌衣を見下ろしていた。
「君の今月の残業可能時間は残り三十分だ。部署の規定により、それよりも一分でもオーバーした場合は始末書の提出を命じる」
パワハラで訴えたら、もしかしたら勝てるのではないだろうか。
そんな考えが脳裏をよぎった。
残業をしていて始末書を書かされるなど、今まで聞いたことがない。
一体萌衣の何が気に食わないというのだろうか。
この短時間の間で、ジャンの中に何があったのか教えてくれる機械でもあったら便利なのだが。
萌衣の中では、ジャンの考えていることなど皆目見当もつかなかった。
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