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154 公爵令嬢は馬に乗る
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いよいよ乗馬の実践。
お互い頑張ろう、レックス。
乗馬には、実は運動神経があんまり関係ないらしい。
姿勢を正し、落馬しないように重心を中心に置いてバランスを取るように心がける事が大事なんだって。
成程、それなら私でも出来そうだ。
ただ、身体の柔らかさはかなり重要らしいので、しっかりストレッチしてから乗馬。
くっ、これだけで一旦疲れたぞ。
気を取り直して。
真後ろから見て、体重を左右バランスよくかける。
横から見て頭、肩、お尻、かかとが一直線上にあり前後のバランスを整える。
目線は進む方向を見て、視野を広くする。
肩の力を上手く抜く。
胸を適度に開く。
……あれ、これって、普段通りの姿勢とよく似てる?
とりあえず、鞍に乗ってたづなを引いてもらいながらゆっくり歩いてもらう。
おぉ、なんか思ったよりもいけそうな気がするぞ。
とりあえず、コースの外周をぐるっとゆっくり歩いてもらった。
視線がいつもより高くて、レックスと一体になったみたいで、なんだか楽しくて気持ちいいなぁ。
「なんじゃいレックス、随分楽しそうじゃないかい。」
レックスも楽しんでくれてるのか、嬉しいね。
「おい、見ろよ!
フランドール様が馬に乗れてるぞ!」
「し、信じられない光景だ……」
いや、信じろよ!
じゃあ次のステップ、軽速歩。
『軽速歩を制するものは乗馬を制す』とも言われているほど、軽速歩は大事とのこと。
軽速歩とは、速歩の時に馬の上でリズムに合わせて上下に身体を揺らすこと。
馬が走ると思っていたよりも身体に反動を受けて、長時間乗っているとお尻が痛くなることが多発するけど、正しい方法で乗ることができればすごく楽になるんだって。
上手に軽速歩が出来ると、人の身体への負担も減り、同時に馬の背中の筋肉を上手くほぐすことが出来て、一石二鳥。
奥が深い。
よっしゃ、じゃ制していこうかね。
太もも内側の内転筋付近に支えを取り、バランスを保つ。
身体の重心は馬体の中心に保ったまま、意識的に斜め前方に立つようにして、座るときは元の位置に丁寧に戻る。
私の苦手とするリズムが大事らしいので、「1、2、1、2……」と声に出しながら繰り返しタイミングを取る。
動きの中で一瞬でも体の力を完全に抜いて、馬の動きをよく感じ取り、自分の状態がどうなっているか感じ取るのが上達のコツ。
やばい、ダンスの時のように段々と力んできた。
『落ち着いて。間違えてもいいから。
もっとダンスを楽しもう。
大丈夫だ、俺を信じて。』
ふと、ロナウドと一緒に初めてパーティで踊った時の言葉を思い出した。
そうだ……レックスを信じて、もっと乗馬を楽しもう。
そう思うと、不思議と身体の力が抜けてきた。
それがレックスにも伝わったのか、さっきよりもより一体感を感じられるようになった。
今日の練習が終わってから、レックスと一緒に会話のような事をした。
「最初にレックスを見た時、小柄でゆっくり動くレックスは私によく似てるのかな、と思っちゃったけど、やっぱり私たちは全然違ったね。
動きはゆっくりだったけど、力強くしっかり歩いてて、今までたくさんの人達を乗せてきた経験と自信があるって事に、あなたに乗った時気づいたの。」
レックスの目を見つめて、続けて話しかけた。
「私ね、背が小さい事と運動神経が悪い事がすごくコンプレックスだったの。
でも、私の大切な人はそんな私をありのまま受け入れてくれてるの。
レックスも、そんな私の事受け入れてくれるかな?」
何となく「もちろんだよ」と言ってくれているような気がした。
それが本当かどうかは分からないけど、朝初めてあった時よりずっと仲良くなれたのは確か。
狐狩りまで宜しく、レックス。
狐狩り当日。
乗馬にも随分と慣れてきた私とレックスの信頼関係はバッチリ。
さて、初日に言っていたアレ、持ってきたよ。
じゃじゃーん!
戦国武将が乗ってた馬みたいな馬具。
ド派手な鞍にガッツリ刺繍の切付、ジャラジャラとした胸繋や鞦。
そして私は、戦国武将のコスプレ!
っていうのはリッカから大反対されたので、赤い手綱と、黒い革製の柔らかい鞍を用意した。
私も、乗りやすさを重視したロング丈キュロットスカート。
狐狩りはただのイベントで、何匹捕れるかどうかは特に争わない。
狐じゃない害獣を見つけたら、それらも狩っていくっていう感じ。
で、狐狩りとは別で流鏑馬みたいな競技やってて、スピードや的の点数が競われる。
主武器が弓のカーネル生徒会長は上手いにして、ロナウドとセシル様も弓が上手い。
あの二人はホントなんでも出来るな。
皆さん期待のビクター君は、スリングショットで的全当て。
流石狩りのプロや。
私とレックスは、のんびり狐狩りにいこうじゃない。
例のサーモグラフィーと火属性冷却魔法で害獣をバンバカ見つけてどんどん狩っていく。
段々と狩りにハマりすぎて、乗馬してる事を忘れる程に、私はレックスと一体化していた。
あ、狩った動物はレックスには大量過ぎて持ちきれなかったから、それらはゴーレムが持って帰ってくれてる。
あと、狩りで生態系を崩しても行けないから、食物連鎖のピラミッドを意識しながら狩りまくってたから、問題ないはずだよ☆
先生に「狩りすぎ」とゲンコツ食らった。
狐狩りが終わってからも、度々私は馬屋に顔を出している。
現役を引退したレックスは、のんびりと優雅な暮らしをしていた。
元気そうで何よりだ。
因みに、私が作った戦国武将の馬具と甲冑は、馬屋の入口に飾ってあった。
お互い頑張ろう、レックス。
乗馬には、実は運動神経があんまり関係ないらしい。
姿勢を正し、落馬しないように重心を中心に置いてバランスを取るように心がける事が大事なんだって。
成程、それなら私でも出来そうだ。
ただ、身体の柔らかさはかなり重要らしいので、しっかりストレッチしてから乗馬。
くっ、これだけで一旦疲れたぞ。
気を取り直して。
真後ろから見て、体重を左右バランスよくかける。
横から見て頭、肩、お尻、かかとが一直線上にあり前後のバランスを整える。
目線は進む方向を見て、視野を広くする。
肩の力を上手く抜く。
胸を適度に開く。
……あれ、これって、普段通りの姿勢とよく似てる?
とりあえず、鞍に乗ってたづなを引いてもらいながらゆっくり歩いてもらう。
おぉ、なんか思ったよりもいけそうな気がするぞ。
とりあえず、コースの外周をぐるっとゆっくり歩いてもらった。
視線がいつもより高くて、レックスと一体になったみたいで、なんだか楽しくて気持ちいいなぁ。
「なんじゃいレックス、随分楽しそうじゃないかい。」
レックスも楽しんでくれてるのか、嬉しいね。
「おい、見ろよ!
フランドール様が馬に乗れてるぞ!」
「し、信じられない光景だ……」
いや、信じろよ!
じゃあ次のステップ、軽速歩。
『軽速歩を制するものは乗馬を制す』とも言われているほど、軽速歩は大事とのこと。
軽速歩とは、速歩の時に馬の上でリズムに合わせて上下に身体を揺らすこと。
馬が走ると思っていたよりも身体に反動を受けて、長時間乗っているとお尻が痛くなることが多発するけど、正しい方法で乗ることができればすごく楽になるんだって。
上手に軽速歩が出来ると、人の身体への負担も減り、同時に馬の背中の筋肉を上手くほぐすことが出来て、一石二鳥。
奥が深い。
よっしゃ、じゃ制していこうかね。
太もも内側の内転筋付近に支えを取り、バランスを保つ。
身体の重心は馬体の中心に保ったまま、意識的に斜め前方に立つようにして、座るときは元の位置に丁寧に戻る。
私の苦手とするリズムが大事らしいので、「1、2、1、2……」と声に出しながら繰り返しタイミングを取る。
動きの中で一瞬でも体の力を完全に抜いて、馬の動きをよく感じ取り、自分の状態がどうなっているか感じ取るのが上達のコツ。
やばい、ダンスの時のように段々と力んできた。
『落ち着いて。間違えてもいいから。
もっとダンスを楽しもう。
大丈夫だ、俺を信じて。』
ふと、ロナウドと一緒に初めてパーティで踊った時の言葉を思い出した。
そうだ……レックスを信じて、もっと乗馬を楽しもう。
そう思うと、不思議と身体の力が抜けてきた。
それがレックスにも伝わったのか、さっきよりもより一体感を感じられるようになった。
今日の練習が終わってから、レックスと一緒に会話のような事をした。
「最初にレックスを見た時、小柄でゆっくり動くレックスは私によく似てるのかな、と思っちゃったけど、やっぱり私たちは全然違ったね。
動きはゆっくりだったけど、力強くしっかり歩いてて、今までたくさんの人達を乗せてきた経験と自信があるって事に、あなたに乗った時気づいたの。」
レックスの目を見つめて、続けて話しかけた。
「私ね、背が小さい事と運動神経が悪い事がすごくコンプレックスだったの。
でも、私の大切な人はそんな私をありのまま受け入れてくれてるの。
レックスも、そんな私の事受け入れてくれるかな?」
何となく「もちろんだよ」と言ってくれているような気がした。
それが本当かどうかは分からないけど、朝初めてあった時よりずっと仲良くなれたのは確か。
狐狩りまで宜しく、レックス。
狐狩り当日。
乗馬にも随分と慣れてきた私とレックスの信頼関係はバッチリ。
さて、初日に言っていたアレ、持ってきたよ。
じゃじゃーん!
戦国武将が乗ってた馬みたいな馬具。
ド派手な鞍にガッツリ刺繍の切付、ジャラジャラとした胸繋や鞦。
そして私は、戦国武将のコスプレ!
っていうのはリッカから大反対されたので、赤い手綱と、黒い革製の柔らかい鞍を用意した。
私も、乗りやすさを重視したロング丈キュロットスカート。
狐狩りはただのイベントで、何匹捕れるかどうかは特に争わない。
狐じゃない害獣を見つけたら、それらも狩っていくっていう感じ。
で、狐狩りとは別で流鏑馬みたいな競技やってて、スピードや的の点数が競われる。
主武器が弓のカーネル生徒会長は上手いにして、ロナウドとセシル様も弓が上手い。
あの二人はホントなんでも出来るな。
皆さん期待のビクター君は、スリングショットで的全当て。
流石狩りのプロや。
私とレックスは、のんびり狐狩りにいこうじゃない。
例のサーモグラフィーと火属性冷却魔法で害獣をバンバカ見つけてどんどん狩っていく。
段々と狩りにハマりすぎて、乗馬してる事を忘れる程に、私はレックスと一体化していた。
あ、狩った動物はレックスには大量過ぎて持ちきれなかったから、それらはゴーレムが持って帰ってくれてる。
あと、狩りで生態系を崩しても行けないから、食物連鎖のピラミッドを意識しながら狩りまくってたから、問題ないはずだよ☆
先生に「狩りすぎ」とゲンコツ食らった。
狐狩りが終わってからも、度々私は馬屋に顔を出している。
現役を引退したレックスは、のんびりと優雅な暮らしをしていた。
元気そうで何よりだ。
因みに、私が作った戦国武将の馬具と甲冑は、馬屋の入口に飾ってあった。
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