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144 公爵令嬢は学校祭をする2

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 学校祭二日目。

 昨日にも劣らない来客で大賑わいの学校祭。

 昨日みたいに出店売り切れは嫌だという事で、今日はあさイチで屋台へ向かった。

 フィアンマ男爵領からの出店屋台は朝から行列ができていて、長蛇の列でごった返している。

 「うへぇ、朝から行列が凄いな。」

 「流石フィアンマ男爵領の料理ですね。」

 「今日こそわたあめを食べますよ!」

 元一班のメンバーも、

 「各々で並んで、後で持ち寄りましょう。」

 「オレはお菓子メインで買って来ますね。」

 「じ、じゃあ、僕は、麺類を。」

 汁系はかなりヤバいんじゃない?

 こうしてみんなで買ってきた物を分け合って食べることに。

 お祭りのように混み合う屋台の行列に、買うことより集合場所に持っていく方が大変そう。

 何とか全員集まることが出来た。

 ビクター君がラーメン4種類をこぼさず持ってきたことに、みんなから拍手喝采。

 「人混みを、避けるのは、狩りと、似てるから。」

 ホンマかいな。

 こうしてみんなで持ち寄った食事を無事食べることが出来た私達。

 リリーちゃんがホクホク顔でわたあめを食べているのが可愛い。

 「フランドール様、一人でそんなに食べないで下さいよ。
 オレたちの分が無くなっちゃう。」

 おっと失礼。

 いつものように食べてしまってたよ。



 昨日の演劇が大好評過ぎて、急遽今日もする事になってしまった。

 午後から私がジョニー先生と決闘があるので、今日は午前中に行われる事になった。

 昨日の噂を聞いた人達で、会場は入場規制がかかってしまう程の人気。

 学校祭の素人の演劇に入場規制がかかるとか、どんだけよ。

 今日も『美少女戦士キラマジョプリキュン』、いっきまーす!

  「誰か、私たちに力を……」

 「みんなの力を、私たちに分けて……」

 「みんな、私たちを応援して!」

 観客席からは昨日以上に

 「「「「「フレー!フレー!プリキュン!!」」」」」

 大きくなる声援に、力を取り戻す三人。

 立ち上がった私たちを見て、「うぉーーー!」と大盛り上がり!

 演目が終わり、カーテンコールで全員がステージに出ると、

 「プ・リ・キュン!プ・リ・キュン!」

 「アンコール!アンコール!」

 いや、アンコールは無理だってば!



 午後からは、私はジョニー先生との決闘。

 これにはお忍びで忍べてない国王陛下が見に来ていて、会場大パニック。

 おいおい、そんな事だから「昔から変わらない」
って言われちゃうんでしょうが。

 午前は陸上競技、午後からは筋肉の番付。

 参加するのは男子四人。

 お互い得意競技をどんどんこなしていく。

 瞬発型のウッディ君、パワー型のビクター君、そして万能型のロナウドとセシル様。

 みんな大健闘に大活躍。

 今回もメダルがあって、ロナウドとセシル様が三個、ビクター君が一個、ウッディ君は残念ながらメダルなし。

 「悔しい!
 来年は絶対にメダルを取ってやる!!」

 気になったことがあった。

 なんで騎士団長様とお兄様が参加してるんだよ!


 全ての競技が終わり、トリとして遂にジョニー先生と私の試合が始まる。

 ジョニー先生攻略の目処は立っているけど、「速攻で試合終わると盛り上がらないから、なるべく派手に長時間引き延ばせ」と指摘があった。

 まるでプロレスのようだな。

 良いね、その提案、乗ってやろうじゃないの。

 「おい、フランドール嬢。
 前回のようにコテンパンにやっつけてやるぞ!」

 「フフっ、ジョニー先生こそ油断しないでください。
成長した私を見くびらないでくださいよ。」

 マイクパフォーマンスを終わらせて、いざ試合開始!

 お互い大量の泥人形とゴーレムを出し合い、相手を派手に倒していく。

 ジョニー先生は正統派な攻撃で、パンチやキックでゴーレムを粉砕。

 対する私は、ムーンサルト、ジャーマンスープレックス、ドロップキック等プロレス技で泥人形を派手にぶっ潰す。

 飛び散る泥飛沫と鉄の塊。

 派手な技のオンパレードで、会場全体から歓喜の叫び声が湧き上がる。

 続いて殺陣。

 アニメや舞台さながらの剣舞のような剣さばきに、会場は更に盛り上がる。

 お互い魔力が底を尽きかけ、肩で息をし始める。

 そして遂に、最後の一撃。

 お互いの泥人形とゴーレムがクロスカウンターのような状態に。

 勝負は……私に軍配が上がった。

 ジョニー先生は仰向けに倒れて、

 「今回は俺の完敗だ……
 だか次は絶対に勝ってやるからよ。」

 「次に勝つのも私です。
 覚悟していてくださいよ。」

 最後の茶番で会場はスタンディングオベーション。

 国王陛下も立ち上がって歓声をあげる程試合を楽しんだみたい。
 
 いやぁ、私が勝つのが決定していた出来レースだった訳だけど、本当に魔力限界ギリギリまで使ったからヘトヘト。

 後でリリーちゃんに回復してもらおう。



 長かった学校祭も、終わりに近づいていた。

 私は、二日間に渡って出店統括をしてくれたケンに、お礼をしに行った。

 「二日間本当にありがとう。
 おかげで、私も学校祭を楽しむことが出来たわ。」

 「フラン様のお役に立てるのなら、いつでもお力をお貸しします。」

 お礼に、出店で売ってた手作りアクセサリーをプレゼントしようかと思ったけど、イマイチパッとするものがなかった。

 「これ、私からのお礼。」

 結局私の手作りのアクセサリーをあげることに。

 アダマンタイトで作られた模様付きの腕輪。

 一箇所だけ、ケンの髪と目と同じ黒色のオニキスがはめ込まれている。

 「いつも私を助けてくれてありがとう。」

 「こんな素晴らしい物、頂いてもいいんですか?」

 「もちろんよ。
 気に入って頂けると嬉しいわ。」

 「ええ、とても嬉しいです。
 大切に使わせていただきます。」

 男前の笑顔を私に向けるケン。

 そして、その様子をこっそり見ていたご令嬢達は、鼻血を出していた。
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