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140 公爵令嬢は専属侍女の母に会う

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 もうすぐ第二テストがある。

 そんな時、フィアンマ公爵家からリッカの呼び出しがあった。

 何でも、リッカにとある人を紹介したいと言う。

 ……もしかして、お見合い?

 まぁ、リッカも適齢期をとっくに過ぎてるし、今まで結婚話がなかった方がおかしいってもんよ。

 「お見合いですか?
 そんなくだらない事して、何になるのですか?」

 自分から断っていたそうだ。

 じゃあ今回の呼び出しは何だろう?



 「レベッカさん、命に変えてでもフラン様をどうかお守りください!」

 「大丈夫ですよ、フランちゃんなら自力で何とかしますから。」

 大袈裟だな、おい。

 「そうではなくて、この学校を破壊してしまうような実験をさせないように、見張りをしてください。」

 「成る程、そう言う事なら合点承知です。
 命に変えてでもフランちゃんの実験実行を阻止します。」

 えぇ!?阻止してくれるなよ!

 こうしてリッカは公爵家へ向かった。

 「ねえ、リッカもいない事だし、早速実験していかない?」

 「ダメよフランちゃん、もし実験してる事がバレちゃったら、私リッカさんに殺されちゃうもん。」

 リッカってばレベッカちゃんにそれ程脅しをかけてたの!?

 抜け目のない、いや、容赦ないヤツだ。



 テストが終わってテスト休みに入るので、私は公爵領へ向かうことにした。

 「「「「「「男爵領へ行かないの!?」」」」」」

 ごめんね、みんなもの凄く楽しみにしてたんだよね……

 でも私、リッカの事が心配なんだ。

 「「「「「「じゃあフラン様抜きで男爵領に行ってくる」」」」」」

 それ程まで行きたかったのか!

 私は公爵領に向かい、フィアンマ家に行った。

 すると、元気のなさそうなリッカと、少し困った様子のお父様がいた。

 「お父様、何があったんですか?」

 「それがな、リッカの母親と名乗る者がここへ来て、「リッカを私の元へ返してくれ」と言って来たんだよ。」

 はあぁあぁあ!?

 何ふざけた事言ってるんだ!?

 「それで、お父様はどうしたの!?」

 「もちろん追い返した。
 だが、毎日毎日ここへ来て、「人攫い」「娘を返せ」と叫んでたんだよ。」

 「侮辱罪で罰を与えないの?」

 「あぁ、そのつもりで、今牢屋に閉じ込めている。
 ただ、本当にリッカの母親という可能性もあって、少し様子を見ているんだ。」

 「彼女はなぜ今更、リッカを迎えに来たの?」

 「なんでも、リッカの今までの行いや現在の立ち位置、見た目に完全に惚れ込んだ伯爵家の長子がいて、そいつが彼女とお見合いをしたいと言っていたらしい。」

 な、何だってぇ!!?

 「じゃあそこに彼女が付け込んで、リッカの母親という地位を利用しようとしてるわけね!?」

 「その可能性はある。
 詳しくはまだ事情が聞き取れていないが、流れや推測からしておそらく。」

 信じられない!

 幼少期にリッカを捨てておいて、自分の地位を確立させようとするなんて……

 絶対に許せない!!



 リッカの様子が心配だったので、リッカの元へ向かった。

 「話は聞いたわ、リッカ。
 彼女はリッカに何を言ったの?」

 「……私の母親と名乗る者は、私をずっと探していたと言っていました。
 私がスラムで育った原因も、人攫いによって私と離れ離れになり、仕方がなかったと。
 最近になって、母の元へ私の事情を教えてくれた人物がいて、その方へのお礼に私の嫁入りを提案されたそうです。」

 「その人物は、なんでリッカの母親だとわかったの?」

 「彼女と私の顔は瓜二つと言っていい程よく似ています。
 その女性を発見した伯爵子息が、交換条件を突きつけたと言っていました。」

 ……どちらが本当の理由なんだろう。

 直接様子を見てみたい。

 お父様に許可を得て、付き添いをつけて彼女の元へ向かった。

 地下にある牢獄の中は、想像していた不衛生なものでなく、壁や床は綺麗に磨かれていた。

 その中の牢屋の一つに、リッカと見間違うほどよく似た女性が入れられていた。

 確かに、この顔なら母親と言われても納得せざるを得ない。

 「お願いします!
 娘を返してください!!」

 大声で叫ぶ女性。

 牢獄全体に、その声は響き渡っている。

 「なぜリッカを返せと言うの?」

 「私のたった一人の家族だから!
 あの子がいない人生は本当に地獄でした!」

 「どうして伯爵子息に嫁にやると約束したの?」

 「リッカが嫁入りすれば、ずっと二人で暮らしていけるよう仰ってくださいました!
 やっと娘と会えたんです!
 本当の親子として、これから歩んでいきたいんです!」

 涙ながらに私に訴えかける女性。

 本当の親子として……

 これが本当の話なら、彼女の気持ちも分からなくはない。

 でも、これが全て演技なら、私は死ぬまでこの人を許す事は出来ない。

 どちらにしても暴言を吐いている為、侮辱罪は受けてもらうことにはなるけど。

 リッカはどう思っているんだろう?



 「さっき、貴方の母親と名乗る人と会って来たわ。」

 「そうですか……」

 「ねえリッカ、貴方はどう思っているの?」

 「……分かりません。」

 「わからない?」

 「私はフラン様と離れるつもりは一切ありません。
 でも、彼女の人生において私が掛け替えの無い存在なら、それを無下にする事は出来ません……」

 当人が一番迷っているに違いない。

 そのまま何の進展もなく時は過ぎて行った。
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