上 下
120 / 191

101 公爵令嬢はお芝居をプロデュースする

しおりを挟む
 遂に、遂に出来ました!

 『さしすせそ』の『せ』!

 そう、醤油!

 味噌が出来たからたまり醤油が作れるようになって、一気にテンション上がって来たァ!

 ただ、味噌からすぐ作れたわけじゃないんだよ。

 味噌玉を作ってそれを一年以上発酵させて作るんだけど、ただ放置してるわけじゃない。

 熟成過程で味噌玉からしみ出すもろみ液を何度も味噌玉にかけ戻し、熟成を進めてやっと完成。

 はあぁぁ、長かったぁ!

 ああ、何から作ろうかしら。

 溜まり醤油は刺身醤油として有名だけど、お刺身とかだと寄生虫が不安だしなぁ。

 タレや煮物に相性抜群だから、そっち系がいいかな?

 とは言っても、魚醤で結構作っちゃってるから、新しいものってのが特にない。

 うーん、お米さえあれば新メニュー続々なんだけどな……




 今日は男爵領内に建てた劇場へ視察。

 プロのコンサートやオペラから、一般人がする演劇や合唱団など、町の娯楽の一つとなっている。

 舞台は常に満席で、いつもお客さんで賑わっている。

 他の領からの観光客も多く、町の新しい観光地になりつつあった。


 今日は演劇の日だったようで、所々歌を挟みダンスをするミュージカル風の演目がされていた。

 結構人気作だったようで、歌のシーンではお客さんも一緒に歌っている。

 確かに面白い。

 ちょっとコメディっぽく、でもラストは感動的なストーリー。

 子供も大人も楽しく舞台を見ている。

 演目が終わり、舞台裏でスタッフや出演者たちに声をかけた。

 「とても素晴らしい舞台でした。
 面白く鑑賞させて頂いたわ。」

 「ありがとうございます、領主様に見て頂いてとても光栄です。」

 「秋祭りから始まったこの舞台も、徐々に板についてきたって感じです。
 とても充実しています。」

 うんうん、みんないい反応している。

 「何か困ったことはない?
 協力できることがあれば力をかすわよ。」

 すると、何故か全員がもじもじし始めた。

 「な、何があったの?
 劇場に不具合でもあった?」

 「いえ、劇場はとても素晴らしく、全く問題ありません。」

 「では一体何が?」

 「あ、あの……」

 団長である男性から声が漏れた。

 彼は勇気を振り絞った様子で

 「今度の秋祭りの演目、領主様にプロデュースしていただけませんでしょうか!?」

 な、なんだってぇ!?

 「大変多忙な事は重々承知しています。
 ただ、今年は結成して五年目の記念の年、どうにか特別な事をしたいと思っていたところ、領主様のデビュタントの噂を耳にし、これしかないと思ったんです!」

 あ、あの恥ずかしのデビュタントね……

 てか、あれはぶっちゃけ私よりリッカやお母様、レベッカちゃんの茶々入れの方がおおかったんだけどね。

 そんな数年前の黒歴史を今更掘り起こしてくれるなよ。

 「是非、斬新なストーリーや演出を、可能であるならば監督をして頂けませんでしょうか!?」

 わ、私監修の演目とな……

 正直荷が重すぎる……

 ただ、ここにいる全員の必死な様子を見て、無下に出来るわけがない……

 「わ、わかったわ。
 スケジュールをどうにか調節して、お手伝いさせていただくわ。」

 「「「あ、ありがとうございます!!!」」」

 その場が歓喜で埋め尽くされた。

 プレッシャーぱない。




 「フラン様、またお仕事増やされてきたのですか!?」

 帰って早々にリッカに叱られた。

 だったらその場で止めてくれりゃいいじゃんかよ。

 「あの方たちのあの顔とあの空気を見て私が口出ししていいと思ってるんですか?」

 チクショウ、好き勝手言いやがって。

 「フランちゃん演劇するの?
 私見たーい!」

 レベッカちゃんがノリノリで参加してきた。

 「いや、私が出演するんじゃなくて、作家と演出と監督をするだけで……」

 「なんで!?
 フランちゃんも出演者になればいいのに!
 絶対大人気の舞台になるよ!」

 「確かに、フラン様がステージに立てば、立ち見の観客はおろか、劇場内に入れない観客も大勢になるはず。
 フラン様、忙しいとはお思いでしょうが、是非とも出演者になってはいかがでしょうか?」

 たからなんで勝手に決めるんだよ!?

 大体、ちゃんと演者がいるのに、監督の私が勝手にステージで演技してちゃダメでしょうが!



 「それは素晴らしい提案です!
 是非、領主様も出演者として参加してください!」

 うそーん。

 くっそー、この流れじゃあ私が主役になりそうだし、絶対恥ずかしい!!

 「ちなみに、演目内容はどのような感じのものをお考えで?」

 演目内容はその日の夜に思いついてたから、もう台本書いて渡して時々来て監督しようと思ってたんだよ。

 なのに、こんなことになるなんて思っても見なかった。

 「えっ、もう台本が完成しているんですか!?
 さすが領主様です!」

 「あの日の夜中部屋に灯りが長らく付いていたのは、こういうことだったんですね。」

 リッカ、その顔怖ぇよ!

 「私にも台本見せて!」

 レベッカちゃんが乗り出してきた。

 じーっと台本を読み込んで発言したのが、

 「これ、あの人たち呼ぼうよ。
 絶対役に立つ!」

 は、マジで言ってんの!?

 あの人たちだって暇じゃないんだよ!?

 「とか言いつつ、毎年お祭り参加してるじゃん。」

 確かにそうだけども!

 「でしたら、ここの部分をこのように演出してはいかがでしょうか?」

 り、リッカまで何参戦してんだよ!?

 「それは素晴らしい!
 本当にそんな事が可能なんですか!?
 流石は領主様!!!」

 ちょ、団長もなに決定事項にさせちゃってんの!?

 彼らに話したら絶対ノリノリになるし、もうするしかないじゃんよ……
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】偽物聖女として追放される予定ですが、続編の知識を活かして仕返しします

ユユ
ファンタジー
聖女と認定され 王子妃になったのに 11年後、もう一人 聖女認定された。 王子は同じ聖女なら美人がいいと 元の聖女を偽物として追放した。 後に二人に天罰が降る。 これが この体に入る前の世界で読んだ Web小説の本編。 だけど、読者からの激しいクレームに遭い 救済続編が書かれた。 その激しいクレームを入れた 読者の一人が私だった。 異世界の追放予定の聖女の中に 入り込んだ私は小説の知識を 活用して対策をした。 大人しく追放なんてさせない! * 作り話です。 * 長くはしないつもりなのでサクサクいきます。 * 短編にしましたが、うっかり長くなったらごめんなさい。 * 掲載は3日に一度。

髪の色は愛の証 〜白髪少年愛される〜

あめ
ファンタジー
髪の色がとてもカラフルな世界。 そんな世界に唯一現れた白髪の少年。 その少年とは神様に転生させられた日本人だった。 その少年が“髪の色=愛の証”とされる世界で愛を知らぬ者として、可愛がられ愛される話。 ⚠第1章の主人公は、2歳なのでめっちゃ拙い発音です。滑舌死んでます。 ⚠愛されるだけではなく、ちょっと可哀想なお話もあります。

【完結】異世界転移パパは不眠症王子の抱き枕と化す~愛する息子のために底辺脱出を望みます!~

北川晶
BL
目つき最悪不眠症王子×息子溺愛パパ医者の、じれキュン異世界BL。本編と、パパの息子である小枝が主役の第二章も完結。姉の子を引き取りパパになった大樹は穴に落ち、息子の小枝が前世で過ごした異世界に転移した。戸惑いながらも、医者の知識と自身の麻酔効果スキル『スリーパー』小枝の清浄化スキル『クリーン』で人助けをするが。ひょんなことから奴隷堕ちしてしまう。医師奴隷として戦場の最前線に送られる大樹と小枝。そこで傷病人を治療しまくっていたが、第二王子ディオンの治療もすることに。だが重度の不眠症だった王子はスリーパーを欲しがり、大樹を所有奴隷にする。大きな身分差の中でふたりは徐々に距離を縮めていくが…。異世界履修済み息子とパパが底辺から抜け出すために頑張ります。大樹は奴隷の身から脱出できるのか? そしてディオンはニコイチ親子を攻略できるのか?

転生王女は異世界でも美味しい生活がしたい!~モブですがヒロインを排除します~

ちゃんこ
ファンタジー
乙女ゲームの世界に転生した⁉ 攻略対象である3人の王子は私の兄さまたちだ。 私は……名前も出てこないモブ王女だけど、兄さまたちを誑かすヒロインが嫌いなので色々回避したいと思います。 美味しいものをモグモグしながら(重要)兄さまたちも、お国の平和も、きっちりお守り致します。守ってみせます、守りたい、守れたらいいな。え~と……ひとりじゃ何もできない! 助けてMyファミリー、私の知識を形にして~! 【1章】飯テロ/スイーツテロ・局地戦争・飢饉回避 【2章】王国発展・vs.ヒロイン 【予定】全面戦争回避、婚約破棄、陰謀?、養い子の子育て、恋愛、ざまぁ、などなど。 ※〈私〉=〈わたし〉と読んで頂きたいと存じます。 ※恋愛相手とはまだ出会っていません(年の差) ブログ https://tenseioujo.blogspot.com/ Pinterest https://www.pinterest.jp/chankoroom/ ※作中のイラストは画像生成AIで作成したものです。

王妃となったアンゼリカ

わらびもち
恋愛
婚約者を責め立て鬱状態へと追い込んだ王太子。 そんな彼の新たな婚約者へと選ばれたグリフォン公爵家の息女アンゼリカ。 彼女は国王と王太子を相手にこう告げる。 「ひとつ条件を呑んで頂けるのでしたら、婚約をお受けしましょう」 ※以前の作品『フランチェスカ王女の婿取り』『貴方といると、お茶が不味い』が先の恋愛小説大賞で奨励賞に選ばれました。 これもご投票頂いた皆様のおかげです! 本当にありがとうございました!

こんなとき何て言う?

遠野エン
エッセイ・ノンフィクション
ユーモアは人間関係の潤滑油。会話を盛り上げるための「面白い答え方」を紹介。友人との会話や職場でのやり取りを一層楽しくするヒントをお届けします。

【欧米人名一覧・50音順】異世界恋愛、異世界ファンタジーの資料集

早奈恵
エッセイ・ノンフィクション
異世界小説を書く上で、色々集めた資料の保管庫です。 男女別、欧米人の人名一覧(50音順)を追加してます! 貴族の爵位、敬称、侍女とメイド、家令と執事と従僕、etc……。 瞳の色、髪の色、etc……。 自分用に集めた資料を公開して、皆さんにも役立ててもらおうかなと思っています。 コツコツと、まとめられたものから掲載するので段々増えていく予定です。 自分なりに調べた内容なので、もしかしたら間違いなどもあるかもしれませんが、よろしかったら活用してください。 *調べるにあたり、ウィキ様にも大分お世話になっております。ペコリ(o_ _)o))

悪役令嬢に転生しましたが、行いを変えるつもりはありません

れぐまき
恋愛
公爵令嬢セシリアは皇太子との婚約発表舞踏会で、とある男爵令嬢を見かけたことをきっかけに、自分が『宝石の絆』という乙女ゲームのライバルキャラであることを知る。 「…私、間違ってませんわね」 曲がったことが大嫌いなオーバースペック公爵令嬢が自分の信念を貫き通す話 …だったはずが最近はどこか天然の主人公と勘違い王子のすれ違い(勘違い)恋愛話になってきている… 5/13 ちょっとお話が長くなってきたので一旦全話非公開にして纏めたり加筆したりと大幅に修正していきます 5/22 修正完了しました。明日から通常更新に戻ります 9/21 完結しました また気が向いたら番外編として二人のその後をアップしていきたいと思います

処理中です...