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96 公爵令嬢は料理大会を開催する 2

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まずは予選第一グループ。

セシル様とポスカ君がいるグループ。

やっぱり、チョコレートを使う人が多い。

それほどまでに、チョコレートは国民のハートを掴んでるんだね。

ただ、こっちで見てて『そこでチョコレート使う!?』って人がたまにいた。

チョコレートを溶かすのに、フライパンで炒めてる人もいるし、クッキーにチョコレートを乗せてから焼いて黒焦げになってたし、チョコレートで可愛いイラストを描いたつもりなんだろうけどゾンビだし。

あぁあ、リッカがワナワナ震えてる。

皆んな、練習してから今日の本番に望んでるよね?

あぁ惜しい、クマさんパンの中に入れたチョコレートが口から吹き出してる。

ん、そのアイスクリームとビスケットで作っているのは、牛? あ、ウサギですか。

おぉ、この人は自力で糖質おばけシベリアを完成させている!

そう言えば、セシル様達は何を作ってるのかな?

わぁかわいい!

冷やしたバナナにチョコレートをかけて、クッキーで羽を付けてペリカドロスを作ったのね!

よっぽどクッキーを失敗してない限り、美味しいに決まってるわ!

ポスカ君はどうかな?

おぉ!

ハーブのクッキーね!

色んな種類のハーブクッキーがたくさん!

これは高評価だわ!


制限時間になったので、審査員が実食し、決勝進出者を決める。

いきなり審査員になったことを後悔するんじゃないよ、ちゃんと食べて!

私も審査員として全種類の創作菓子を食べる。

グハァッ!

ど、毒でも盛られたんじゃないかってのがあった。

本当に、本当ぉに練習して来たんだよね?

でも、味が酷いのはごく一部で、他はまあまあ美味しかった。

ただし、見た目も採点に入れてるから、吐血クマパンとか牛ウサギとかゾンビとかは採点低いからね。

セシル様のペリカドロスチョコバナナは、ちゃんとクッキーが美味しくて見た目も可愛くて、花丸合格。

ポスカ君のハーブクッキーも、ハーブの量が抜群で、ハートや星の形にくり抜かれた見た目も可愛いくて、大変美味しゅうございました。

全員分実食して、決勝進出者を選出。

審査員の意見はほぼ一致していたので、スムーズに選出出来た。

もちろん、セシル様とポスカ君は決勝進出。



続いて予選第二グループ。

こちらには、ロナウド王子とレベッカちゃんがいる。

一体何を作るかな?

はぁ、ここにもトンデモクッキングがいた。

今の時点で美味しくないわ。

皆んな、練習したやつ味見してる?

あ、あの人のはいいんじゃない?

いわゆる野菜ケーキってやつだよね?

いい感じにスポンジが焼きあがってるし、あとはトッピング次第だね。

ん?何あれ。

なんであんなに毒々しい色してるの?

あ、もしかして、ブドウを皮ごと調理したのか!

なんでそこにハーブを混ぜた!?

ツッコミどころ満載の料理はひとまず置いて、ロナウド王子は?

おぉ、やっぱり餡子料理できたか。

へぇ、パイ生地に餡子を挟むときたか。

はい、美味しい決定。

ロナウド王子は安心して、レベッカちゃんを見てみよう。

ゲテモノ料理に手をつけ始めてたから、ちょっと不安なんだよね。

え!?マジで!?

レベッカちゃん、物凄い飴細工してるじゃん!!

あれ触るの、相当熱いんだよ?

てか、いつの間に飴細工のレシピ考えたの!?

器用に飴でアクセサリー作ってる!

はぁ……しゅごい……


実食の時間が来ました。

覚悟を決める六人。

ゲハァッ!

や、やっぱり不味い物があるんだね……

一刻も早く、ロナウド王子の餡子パイで口直ししないと!

サクッ、ふぅ。

皆んなも落ち着きを取り戻したようだ。

そして、レベッカちゃんの飴細工。

皆んな、触れない。

いや、これ食べるの勿体ない出来栄え。

でも食べないと、実食だから。

意を決して、カリッ。

うん、飴なんだよ。

分かってたからこそ、食べるのが惜しかったんだよ……

ロナウド王子もレベッカちゃんも問題なく決勝進出。



決勝戦の前に、さっきまでに作られたお菓子を、観客にも食べてもらう。

取り合いになるお菓子もあれば、誰も手を伸ばさないものも。

そりゃ皆んな美味しい物が食べたいんだもん、次に料理する時は、しっかり基本を身につけてから、ちゃんと味見をするんだよ?

お、勇気ある猛者が珍料理に手を出したぞ。

誰か水を持ってきてあげて!

この間に、ケンは予告通りポテチとコーラを持ってきてくれた。



いよいよ決勝戦。

いつものメンバーは全員残れている。

開始のゴングが鳴り響いた。

先程の不安な様子はなく、打って変わって真剣な顔をする審査員。

「お、生クリームが泡立ってきたぞ。」

「陛下、あれはメレンゲでございます。」

「仕上げに砂糖をひとつまみ入れた。」

「フィアンマ公爵、あれは塩でございます。」

「む、ケーキに小麦粉をかけているな。」

「団長様、あれは粉砂糖でございます。」

「ん?菓子に魚醤をつかったぞ?」

「ヤークン侯爵、あれはバニラエッセンスでございます。」

皆んな、知ったかぶりが甚だしいなぁ!

さすが、予選で美味しいお菓子を作るだけあって、皆んな慣れた手つきで黙々とお菓子を作り上げていく。

あ!セシル様のあれは!

ポテチにチョコレートをかけただと!?

美味いポテチ×美味いチョコ=美味すぎるの方程式が成り立つ代表作じゃないか!

想像しただけで美味しかった。

ポスカ君のは……

わっ、アップルタルト!

はぁー、遂にタルトがお菓子になる日が来たか。

リンゴとシナモンの匂いがたまらん!

ロナウド王子は?

餡子を使ってクッキー?

あ!あれは、カントリーなマアム!!

そうそう、チョコチップを入れて、お、砕いたナッツも入れるか!

さすがロナウド王子!
誰も出来ないことを平然とやってのける、そこにシビれる!憧れるゥ!

最後にレベッカちゃんを。

ん?レベッカちゃんは普通にショートケーキ?

何か策があるのかな?


実食タイムになり、先程までとは打って変わって皆んなのワクワクが最高潮。

どれを食べてもある程度美味しいから、しっかりと味を吟味しないとね。

セシル様、ポスカ君、ロナウド王子の作ったお菓子はどれも絶品。

だからこそ甲乙付け難い。

もう、味の好みが審査に影響しちゃうほど。

最後の実食はレベッカちゃんのショートケーキ。

……私の誕生日ケーキだった。

「誕生日までまだ一週間あるけど、一番最初にプレゼントしたかったの。」

「レベッカちゃん、ありがとう!
ホントに、ホントに嬉しい!!」

思わずレベッカちゃんに抱きついた。

少し照れるレベッカちゃん。

微笑ましく見守るおっさん達。

「「「この手があったか……」」」と何故か悔しがる三人。



結果は、優勝者なし。

「「「「なんでぇ!?」」」」

ケーキめちゃ美味しかったし、技術的にはレベッカちゃんだったけど、結果的に審査員に賄賂をしたから。

ただまぁ、参加者の中でかなり腕のいい人が何人もいたから、その人達のパティシエ支援はする事が決定。

全員が、私プロデュースのお菓子屋で働くことになった。


さぁ、スイーツも名産品になったフィアンマ男爵領、ぜひ一度足を運んでくださいな!
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