上 下
94 / 191

77 公爵令嬢は反省会をする

しおりを挟む
「第三回フィアンマ男爵領秋祭り反省会をします。」

集められたメイン会場スタッフと各地区代表、プラスお兄様。


まず良かった点を挙げていく。

年々観光客が増えて、落としてくれるお金の額が多くなっている事。

もう、フィアンマ男爵領の秋祭りは、近隣領どころか王都でも有名になりつつあった。

なので、フィアンマ男爵領近辺にある宿場は、この時期は予約でいっぱいになるそうだ。


次に、お祭り準備や当日の催しで、領民が一致団結する。

御神輿を作ったり、法被を用意したり、屋台に出す新作料理を考えたり。

皆んなが知恵を出し合い、工夫しながら、良いお祭りを全力で作り上げようとしてくれた。

素晴らしい事だと思う。


他に何かあるかな?

「食べ物が美味しい。」

うーん、それはお祭りに限った事じゃないと思うんだけど。

「「メイン会場のステージが面白かった!」」

それは嬉しい意見だね。

ただ、貴方達スタッフだよね、いつの間に観客になってたの?

他に意見はない?



じゃあ問題点。

「「「「ステージ企画、見たかった。」」」」

この声が一番多いてどういう事よ。

まぁ、御神輿担いで回ってる人達や、屋台をやってる人達は見れないよね。

でも、お祭りってそう言うものだよ、仕方がない。

「メイン会場に客持ってかれすぎて、御神輿の見物人が減った。」

いやー、それは言い過ぎじゃない?

メイン会場がいくら広いとはいえ、屋台もあるし、1,000人も集まればいっぱいになっちゃうから!

というか、これが問題なんだよ。

メイン会場に人が溢れかえって、防犯や防災対策が全然出来なかった。

これはかなりの反省点。

来年からは、各地区ごとにもステージを用意して、何かしらの企画をやってもらって、見物人を散らばせるかな?

あと、柵のようなものを作って、観客席と通路を完全に分離させて、避難経路をしっかり確保させるとかも必要だ。


あとはやっぱり、警備が圧倒的に足りない。

領内の自衛団以外にも、国王様に依頼して騎士団を幾人か派遣してもらったんだけど、全然不十分だった。

ただ、今後の為にこれを解決する手段の一つが、今回の企画ステージではあったんだけど。

やたら体力自慢大会になった企画ステージ。

成績上位の人や、お兄様や騎士団長様のお眼鏡にかかった領民を自衛団へ直接スカウトして、男爵領の自衛団を大幅強化しようと思ってた。

その為にお兄様と騎士団長様を来賓で呼んだのに、二人とも全競技皆勤賞ってどういう事だよ。

「領主の兄として、力を見せつける事が出来たでしょ?」

見せつけなくても、お兄様がスゴいってのは皆さんご存知ですから!

お兄様だけじゃないよ、なんでチャンバラは私以外全員参加しちゃってるの?

「俺強かっただろ?」

ええ、強かったけども!

私の周りの凄い人をアピールする場にさせるつもりじゃなかったんですけど?

あと、なにあのチャンバラの時の茶番劇は!

「「「いやぁ、ロナウド王子の漢っぷりが見られて、良かったよ!」」」

私の求めてる答えと違う!

「大丈夫だ、俺が守ってやるから。」

どうもありがとう!

「領主様ったらいい男捕まえて、モテモテじゃねぇか!」

「ばっ、そう言うんじゃねぇよ!」

もう、どのタイミングで恥ずかしがってんのか、さじ加減が分からない!

「来年は僕が勝ちますから、フランさん見ていてくださいね。」

来年開催するのも、もう決定事項なんだね?

「悔しい! 来年は僕が勝てる競技をしようね!」

反省会をちゃんとしようよ、皆んな!!


企画ステージの反省点。

スタッフも参加してもいいけど、黙って勝手に参加しない。



反省会が終わって、反省会参加者全員で改めて打ち上げ。

男爵邸で簡単な立食パーティをした。

食べ物は勿論、屋台料理。

私、ロナウド王子、セシル様、ポスカ君、リリーちゃんはパーティに参加、レベッカちゃんとケンは給仕に回ってもらった。

「フラン様、私、あのような楽しいお祭り、生まれて初めてでした。
フラン様に良いところを見せられず、残念でしたが……」

「何言ってるの、企画中に怪我した人たち治してたじゃない。」

「でも、チャンバラは最初で負けてしまいましたし……」

……そう言えば、参加してたね。

正直、リリーちゃんがバッサバッサと人を斬る姿、全く想像できないんだけど。

てか、私リリーちゃんにそれ求めてない。

あぁ、でもこの天然ボケな感じが、男心をくすぐるんだろうな。

「フランちゃん先生、僕、何だったら勝てそう?
来年は絶対勝ちたいんだ!」

うーん、ポスカ君もバトルで勝つイメージないんだよなー……

器用そうだし、リフティングとか?

だとしたら、ボールを作らないと。

ゴムの木探すかぁ。

っていやいや、身内を勝たすための企画にするつもりないからね?



パーティーも時間が進み、どこからか余興が始まった。

歌を歌ったり、踊ったり、パントマイムしてたり。


私達も余興に参加。

まず最初に私、ジャグリング。

錬金魔法で棒の数をだんだん増やしていって、どこまで行けるか挑戦してみた。

やっぱり五本まででした。


続いて、ポスカ君とリリーちゃんのダンス。

バックミュージックにセシル様のバイオリン。

見ていた皆んなはため息をついて見惚れていた。

ダンスも音楽もとっても素敵。

……早く踊れるように頑張ろう。


ロナウド王子は剣舞を披露すると言う。

音楽は引き続きセシル様。

……なんだけど、チャンバラの時の帽子をかぶって、両手の剣もチャンバラ。

その姿で真剣に踊るもんだから、可笑しくて可笑しくて。

会場大笑い。

ロナウド王子、ああいう愉快な事も出来る人だったんだね。

新たな一面を知った。



打ち上げも終わって、いよいよ解散。

お祭りで、知らなかった皆んなの一面が見られた気がした。

課題もたくさんあるし、大変だったけど、良いお祭りになって良かった。

「来年に向けて、更に精進いたします。」

リッカも、来年からは何かする時は一言教えてね?
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

初夜に「君を愛するつもりはない」と夫から言われた妻のその後

澤谷弥(さわたに わたる)
ファンタジー
結婚式の日の夜。夫のイアンは妻のケイトに向かって「お前を愛するつもりはない」と言い放つ。 ケイトは知っていた。イアンには他に好きな女性がいるのだ。この結婚は家のため。そうわかっていたはずなのに――。 ※短いお話です。 ※恋愛要素が薄いのでファンタジーです。おまけ程度です。

【完結】悪役令嬢に転生したけど、王太子妃にならない方が幸せじゃない?

みちこ
ファンタジー
12歳の時に前世の記憶を思い出し、自分が悪役令嬢なのに気が付いた主人公。 ずっと王太子に片思いしていて、将来は王太子妃になることしか頭になかった主人公だけど、前世の記憶を思い出したことで、王太子の何が良かったのか疑問に思うようになる 色々としがらみがある王太子妃になるより、このまま公爵家の娘として暮らす方が幸せだと気が付く

【本編完結】さようなら、そしてどうかお幸せに ~彼女の選んだ決断

Hinaki
ファンタジー
16歳の侯爵令嬢エルネスティーネには結婚目前に控えた婚約者がいる。 23歳の公爵家当主ジークヴァルト。 年上の婚約者には気付けば幼いエルネスティーネよりも年齢も近く、彼女よりも女性らしい色香を纏った女友達が常にジークヴァルトの傍にいた。 ただの女友達だと彼は言う。 だが偶然エルネスティーネは知ってしまった。 彼らが友人ではなく想い合う関係である事を……。 また政略目的で結ばれたエルネスティーネを疎ましく思っていると、ジークヴァルトは恋人へ告げていた。 エルネスティーネとジークヴァルトの婚姻は王命。 覆す事は出来ない。 溝が深まりつつも結婚二日前に侯爵邸へ呼び出されたエルネスティーネ。 そこで彼女は彼の私室……寝室より聞こえてくるのは悍ましい獣にも似た二人の声。 二人がいた場所は二日後には夫婦となるであろうエルネスティーネとジークヴァルトの為の寝室。 これ見よがしに少し開け放たれた扉より垣間見える寝台で絡み合う二人の姿と勝ち誇る彼女の艶笑。 エルネスティーネは限界だった。 一晩悩んだ結果彼女の選んだ道は翌日愛するジークヴァルトへ晴れやかな笑顔で挨拶すると共にバルコニーより身を投げる事。 初めて愛した男を憎らしく思う以上に彼を心から愛していた。 だから愛する男の前で死を選ぶ。 永遠に私を忘れないで、でも愛する貴方には幸せになって欲しい。 矛盾した想いを抱え彼女は今――――。 長い間スランプ状態でしたが自分の中の性と生、人間と神、ずっと前からもやもやしていたものが一応の答えを導き出し、この物語を始める事にしました。 センシティブな所へ触れるかもしれません。 これはあくまで私の考え、思想なのでそこの所はどうかご容赦して下さいませ。

婚約破棄は結構ですけど

久保 倫
ファンタジー
「ロザリンド・メイア、お前との婚約を破棄する!」 私、ロザリンド・メイアは、クルス王太子に婚約破棄を宣告されました。 「商人の娘など、元々余の妃に相応しくないのだ!」 あーそうですね。 私だって王太子と婚約なんてしたくありませんわ。 本当は、お父様のように商売がしたいのです。 ですから婚約破棄は望むところですが、何故に婚約破棄できるのでしょう。 王太子から婚約破棄すれば、銀貨3万枚の支払いが発生します。 そんなお金、無いはずなのに。  

婚約破棄と領地追放?分かりました、わたしがいなくなった後はせいぜい頑張ってくださいな

カド
ファンタジー
生活の基本から領地経営まで、ほぼ全てを魔石の力に頼ってる世界 魔石の浄化には三日三晩の時間が必要で、この領地ではそれを全部貴族令嬢の主人公が一人でこなしていた 「で、そのわたしを婚約破棄で領地追放なんですね? それじゃ出ていくから、せいぜいこれからは魔石も頑張って作ってくださいね!」 小さい頃から搾取され続けてきた主人公は 追放=自由と気付く 塔から出た途端、暴走する力に悩まされながらも、幼い時にもらった助言を元に中央の大教会へと向かう 一方で愛玩され続けてきた妹は、今まで通り好きなだけ魔石を使用していくが…… ◇◇◇ 親による虐待、明確なきょうだい間での差別の描写があります (『嫌なら読むな』ではなく、『辛い気持ちになりそうな方は無理せず、もし読んで下さる場合はお気をつけて……!』の意味です) ◇◇◇ ようやく一区切りへの目処がついてきました 拙いお話ですがお付き合いいただければ幸いです

《勘違い》で婚約破棄された令嬢は失意のうちに自殺しました。

友坂 悠
ファンタジー
「婚約を考え直そう」 貴族院の卒業パーティーの会場で、婚約者フリードよりそう告げられたエルザ。 「それは、婚約を破棄されるとそういうことなのでしょうか?」 耳を疑いそう聞き返すも、 「君も、その方が良いのだろう?」 苦虫を噛み潰すように、そう吐き出すフリードに。 全てに絶望し、失意のうちに自死を選ぶエルザ。 絶景と評判の観光地でありながら、自殺の名所としても知られる断崖絶壁から飛び降りた彼女。 だったのですが。

3歳で捨てられた件

玲羅
恋愛
前世の記憶を持つ者が1000人に1人は居る時代。 それゆえに変わった子供扱いをされ、疎まれて捨てられた少女、キャプシーヌ。拾ったのは宰相を務めるフェルナー侯爵。 キャプシーヌの運命が再度変わったのは貴族学院入学後だった。

祝・定年退職!? 10歳からの異世界生活

空の雲
ファンタジー
中田 祐一郎(なかたゆういちろう)60歳。長年勤めた会社を退職。 最後の勤めを終え、通い慣れた電車で帰宅途中、突然の衝撃をうける。 ――気付けば、幼い子供の姿で見覚えのない森の中に…… どうすればいいのか困惑する中、冒険者バルトジャンと出会う。 顔はいかついが気のいいバルトジャンは、行き場のない子供――中田祐一郎(ユーチ)の保護を申し出る。 魔法や魔物の存在する、この世界の知識がないユーチは、迷いながらもその言葉に甘えることにした。 こうして始まったユーチの異世界生活は、愛用の腕時計から、なぜか地球の道具が取り出せたり、彼の使う魔法が他人とちょっと違っていたりと、出会った人たちを驚かせつつ、ゆっくり動き出す―― ※2月25日、書籍部分がレンタルになりました。

処理中です...