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35.5 国王陛下は悩む

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儂は、この日をいつも楽しみにしている。

フィアンマ公爵家の令嬢、フランドール・フィアンマと会える日を。


彼女は本当に面白い。

美しく聡明で、努力家で天才的。

儂の前ではいつも凛とした態度でいるが、自宅では奇想天外なアイデアをいくつも実現させる発想力と行動力、かと思えばどうしてそんな事をしたのかと驚く程の破天荒っぷりだという。

夏頃には、コーラという不思議な飲み物を作ったり、公爵家自慢の庭園を破壊したりと、良い事も悪い事もやる事の規模が大きい。

どのエピソードを聞いても思わず笑ってしまいそうになる。

彼女の父、アーノルド・フィアンマは、フランドールの発明に嬉々としている時もあれば、予想もしない斜め上の行動に頭を抱えるというが、こんなに楽しい出来事がしょっちゅうあるのだから儂からすれば羨ましい悩みだ。

何度、儂の娘なら良かったかと思ったことやら、その事を奴は知らんだろう。



儂には、娘が2人と息子が3人いる。

皆優秀で容姿も整っているが、特に正妻との間に生まれた息子、ロナウド・アースフィールドは才能が頭一つ抜きん出ている。

儂と同じ風土属性魔力保持者で、魔法の訓練を始めて2週間で既に雷魔法を使うことができるようになっていた。

僅か5歳で、人を惹きつけるようなオーラも放っている。

将来を期待させる自慢の我が息子だが、成認式を終えたあたりから、ロナウドは様子が少し変わった。

何をする時も態度が大きく、自分の行いをやたらと自慢したがっている。

優しかったはずの息子が、周りに対して強めの態度を取るようになっていた。

幼少期の反抗期のようなものだと思ってはいるが、その我が儘っぷりに周りの目が少し冷たくなっているのを感じる。

何が原因なのか、どうすれば良いのか、儂にはわからなかった。



そんな事を考えていた時、息子の一人、クロード・アースフィールドが提案を持ちかけてきた。

「フランドール嬢に友人になっていただいてはいかがでしょう。
彼女なら、ロナウドの我が儘にも上手く対応出来るでしょう。
そしてあわよくば、ロナウドの悪態を直していただけるかも知れません。」

儂はその案に乗った。

早速、ロナウドにその話を持ちかけた。

「来週、フランドール嬢が来るから、その時お前も会ってみないかね?」

急にロナウドの表情が険しくなった。

「ひつようありません。
オレは、あの女がキライです。」

「なぜそんな事を言うんだ?」

「あの女はたいしたどりょくもせず何でも出来すぎです。」

「そんな事はない、多分お前より何倍も努力しているからこその結果だ。」

「お父さまは、オレよりあの女の方がだいじなんですか?」

「何を言っておるんだ!
儂は、フランドールがお前にとって良い刺激になると思って、会ってみないかと話を持ちかけたんだ。」

「…わかりました。
でも、会うだけで、ゼッタイ友だちにはなりません。」



ロナウドの反抗期の原因は、フランドールなのか?

彼女はロナウド以上に才能とオーラに溢れている。

ロナウドは、フランドールの才能にやきもちを焼いておるのだろうか。

そんな事、気にせんでも良いのに。

フランドールを気に入っているのは確かだが、何があろうとロナウドはロナウド、私の息子に違いない。

ただ少しだけ欲を言えば、ロナウドとフランドールが仲良くなって、将来嫁に来てくれればと言う邪な気持ちもある。



今日は遂に、ロナウドとフランドールが対面する日だ。

いつもの様に、先ずは二人で楽しく会話。

相変わらず少し固い口調で話してくる彼女に、いつものように緊張を解すやり取り。

そして話は、甘い芋について。

儂がこっそり並んで芋を買ったと言うと、作り方を教えてくれた。

しかも、アーノルドには内緒でと言う。

嬉しい事をしてくれるじゃないか!

明日にでも石焼き芋を作ってみよう。

その後、フランドールは目の前で錬金魔法を使ってくれた。

初めて目にする錬金魔法に興奮を隠せなかった事は、少し反省する。

しかし、それまでの雰囲気が突如として変わる。

彼女が魔法で作った箱について知ると、驚きのあまり思わず固まってしまった。

たった5歳の少女が、魔法を使わず雷を発明したと言う。

雷の危険性は、雷魔法を使う儂にとって百も承知しているようなもの。

その僅かな利便性を差し引いたとしても、国民がとても使い熟せるような物とは思えない。

だが、フランドールは「いつか便利な道具として使えるものを必ず作ります。」と自信満々に言い放った。

この発言は見栄でも戯言でもなく、きっと実現させてしまうだろう。

本当に、面白い奴だ。



ロナウドよ、頼むからフランドールと仲良くなってくれ。

そしてあわよくば、将来我がアースフィールド家に嫁いでくれるよう仕向けてくれ。
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