上 下
1 / 191

0 公爵令嬢は目覚める

しおりを挟む
目が覚めると、見慣れた広くて高い天井があった。

少しも疲れの溜まっていない身体を起こして、ググッと伸びをした。

「おはようございます、お嬢様」

「おはよう、リッカ。
朝の支度をお願い。」

「かしこまりました。
すでに用意は出来ております。」

専属侍女のリッカロッカといつものやり取りをすませ、顔を洗って、服を着替えて、髪を整えてもらう。

これが私、公爵令嬢 フランドール・フィアンマの日常。

そう、『私』の日常。

つまり、『俺』の日常ではない。

ん?え?

どういう事なんだ?

さっきまで研究室に居たはずなのに?

4連休だからと研究室を貸切にして、私事の研究に没頭してて、ろくに飲み食いせず4日程徹夜して急に記憶が途切れたと思ったら、今に至る。

これはあれか?

流石の4徹で睡魔に負けて、夢を見てるのかな?

でも、手の甲をつねってみるとちゃんと痛い。

まあ、痛みを感じる夢も無くはないらしいけど、こんなに現実味を帯びた夢なんてあるのかな。

『私』の今までの記憶もちゃんとある。

もしかして、『俺』原田輝行の方が夢だったのかな?

うーん、そっちもかなりリアルだったんだよなー。

食べ物の味や勉学、研究の内容なんかも全部覚えてる。

夢だったとして、37年分の人生をここまでハッキリしっかり覚えているもんなんだろうか。

はっ、まさか、ネット小説とかでよくある転生とかなんじゃないの!?

…って、そんな厨二病設定ある訳ないか。

非現実的すぎる。

でも、絶対ないとは言いきれないこの状態。

もう、訳わかんなくなってきた。

「お嬢様、随分と考え込まれているようですが、如何なさいましたか?」

「…ねぇリッカ、私、夢を見たの。」

「どのような夢をみられたのですか?」

「異世界の一般人の男性になる夢だったわ。」

「その夢がいかがなさったのですか?」

「とてもリアルな夢だったわ。
まるで、その男性として生きていたかのような。」

「そうだったのですね。」

「ねぇリッカ、他人の人生の記憶や人格、いわば魂が今生きている人に乗り移る、なんて事ってあるのかしら。」

「失礼申し上げますが、それはあり得ません。
魂というものは、肉体が死んでなお、その身体に留まるものです。
悪魔付きならともかく、一般人男性、ましてや異世界の人間の魂が乗り移るなど、考えられません。」

「…そうよね、ありがとうリッカ。」

「とんでもございません。
朝食の準備が出来ておりますよ。」



この世界じゃ魂と身体は文字通り一心同体。

神や悪魔の認識や、魂のないゴースト系の魔物はいても、幽霊や憑依のような魂だけの存在、ついでに言うと異世界は、完全に物語の中だけのもので、現実では絶対にないって事になっている。

でも、『わからない』から有り得ない、と存在を否定しているだけなのかもしれない。

『わからない』

原田輝行の好奇心が疼く!

まぁ一先ず、朝食を食べることにしよう。

フランドールのいつも通りの朝食を。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

【完結】TS転生で悪役令嬢に?~婚約破棄され辺境に嫁ぎ、ホットケーキで結納金返済です。~

近衛 愛
ファンタジー
黒沢茜(男)が、女装していた所を同級生にみられた。SNSで暴露され、心ない言葉をかけられ、意識を失った。神界で神に出会い、自分の本心を語る。『私は生まれ変わって女の子になりたい』 転生先はガーネットという悪役令嬢。王子様と婚約していたが、ガーネットの不祥事が色々とバレテ、婚約破綻に。それだけならまだしも、家も没落し、ガーネットは辺境の農家の嫁として、結納金と引き換えに渡されることに。そこで様々なかっこいい亜人と会い、たすけてもらいホットケーキミックスを作成し商売を広げていく。私は好きな男の人と自由恋愛するために頑張るんだ。

家族と移住した先で隠しキャラ拾いました

狭山ひびき@バカふり160万部突破
恋愛
「はい、ちゅーもーっく! 本日わたしは、とうとう王太子殿下から婚約破棄をされました! これがその証拠です!」  ヴィルヘルミーネ・フェルゼンシュタインは、そう言って家族に王太子から届いた手紙を見せた。  「「「やっぱりかー」」」  すぐさま合いの手を入れる家族は、前世から家族である。  日本で死んで、この世界――前世でヴィルヘルミーネがはまっていた乙女ゲームの世界に転生したのだ。  しかも、ヴィルヘルミーネは悪役令嬢、そして家族は当然悪役令嬢の家族として。  ゆえに、王太子から婚約破棄を突きつけられることもわかっていた。  前世の記憶を取り戻した一年前から準備に準備を重ね、婚約破棄後の身の振り方を決めていたヴィルヘルミーネたちは慌てず、こう宣言した。 「船に乗ってシュティリエ国へ逃亡するぞー!」「「「おー!」」」  前世も今も、実に能天気な家族たちは、こうして断罪される前にそそくさと海を挟んだ隣国シュティリエ国へ逃亡したのである。  そして、シュティリエ国へ逃亡し、新しい生活をはじめた矢先、ヴィルヘルミーネは庭先で真っ黒い兎を見つけて保護をする。  まさかこの兎が、乙女ゲームのラスボスであるとは気づかづに――

婚約破棄をされ、父に追放まで言われた私は、むしろ喜んで出て行きます! ~家を出る時に一緒に来てくれた執事の溺愛が始まりました~

ゆうき@初書籍化作品発売中
恋愛
男爵家の次女として生まれたシエルは、姉と妹に比べて平凡だからという理由で、父親や姉妹からバカにされ、虐げられる生活を送っていた。 そんな生活に嫌気がさしたシエルは、とある計画を考えつく。それは、婚約者に社交界で婚約を破棄してもらい、その責任を取って家を出て、自由を手に入れるというものだった。 シエルの専属の執事であるラルフや、幼い頃から実の兄のように親しくしてくれていた婚約者の協力の元、シエルは無事に婚約を破棄され、父親に見捨てられて家を出ることになった。 ラルフも一緒に来てくれることとなり、これで念願の自由を手に入れたシエル。しかし、シエルにはどこにも行くあてはなかった。 それをラルフに伝えると、隣の国にあるラルフの故郷に行こうと提案される。 それを承諾したシエルは、これからの自由で幸せな日々を手に入れられると胸を躍らせていたが、その幸せは家族によって邪魔をされてしまう。 なんと、家族はシエルとラルフを広大な湖に捨て、自らの手を汚さずに二人を亡き者にしようとしていた―― ☆誤字脱字が多いですが、見つけ次第直しますのでご了承ください☆ ☆全文字はだいたい14万文字になっています☆ ☆完結まで予約済みなので、エタることはありません!☆

義母に毒を盛られて前世の記憶を取り戻し覚醒しました、貴男は義妹と仲良くすればいいわ。

克全
ファンタジー
「カクヨム」と「小説家になろう」にも投稿しています。 11月9日「カクヨム」恋愛日間ランキング15位 11月11日「カクヨム」恋愛週間ランキング22位 11月11日「カクヨム」恋愛月間ランキング71位 11月4日「小説家になろう」恋愛異世界転生/転移恋愛日間78位

お父様、お母様、わたくしが妖精姫だとお忘れですか?

サイコちゃん
恋愛
リジューレ伯爵家のリリウムは養女を理由に家を追い出されることになった。姉リリウムの婚約者は妹ロサへ譲り、家督もロサが継ぐらしい。 「お父様も、お母様も、わたくしが妖精姫だとすっかりお忘れなのですね? 今まで莫大な幸運を与えてきたことに気づいていなかったのですね? それなら、もういいです。わたくしはわたくしで自由に生きますから」 リリウムは家を出て、新たな人生を歩む。一方、リジューレ伯爵家は幸運を失い、急速に傾いていった。

断罪されているのは私の妻なんですが?

すずまる
恋愛
 仕事の都合もあり王家のパーティーに遅れて会場入りすると何やら第一王子殿下が群衆の中の1人を指差し叫んでいた。 「貴様の様に地味なくせに身分とプライドだけは高い女は王太子である俺の婚約者に相応しくない!俺にはこのジャスミンの様に可憐で美しい女性こそが似合うのだ!しかも貴様はジャスミンの美貌に嫉妬して彼女を虐めていたと聞いている!貴様との婚約などこの場で破棄してくれるわ!」  ん?第一王子殿下に婚約者なんていたか?  そう思い指さされていた女性を見ると⋯⋯? *-=-*-=-*-=-*-=-* 本編は1話完結です‪(꒪ㅂ꒪)‬ …が、設定ゆるゆる過ぎたと反省したのでちょっと色付けを鋭意執筆中(; ̄∀ ̄)スミマセン

無一文で追放される悪女に転生したので特技を活かしてお金儲けを始めたら、聖女様と呼ばれるようになりました

結城芙由奈 
恋愛
スーパームーンの美しい夜。仕事帰り、トラックに撥ねらてしまった私。気づけば草の生えた地面の上に倒れていた。目の前に見える城に入れば、盛大なパーティーの真っ最中。目の前にある豪華な食事を口にしていると見知らぬ男性にいきなり名前を呼ばれて、次期王妃候補の資格を失ったことを聞かされた。理由も分からないまま、家に帰宅すると「お前のような恥さらしは今日限り、出ていけ」と追い出されてしまう。途方に暮れる私についてきてくれたのは、私の専属メイドと御者の青年。そこで私は2人を連れて新天地目指して旅立つことにした。無一文だけど大丈夫。私は前世の特技を活かしてお金を稼ぐことが出来るのだから―― ※ 他サイトでも投稿中

悪役令嬢と言われ冤罪で追放されたけど、実力でざまぁしてしまった。

三谷朱花
恋愛
レナ・フルサールは元公爵令嬢。何もしていないはずなのに、気が付けば悪役令嬢と呼ばれ、公爵家を追放されるはめに。それまで高スペックと魔力の強さから王太子妃として望まれたはずなのに、スペックも低い魔力もほとんどないマリアンヌ・ゴッセ男爵令嬢が、王太子妃になることに。 何度も断罪を回避しようとしたのに! では、こんな国など出ていきます!

処理中です...