the She

ハヤミ

文字の大きさ
上 下
14 / 30
その11~15

その14

しおりを挟む

「ふぁーあ…よく寝た…」
 日の光に瞼を刺激され、アタシは目を覚ます。
 隣でアイツはまだ眠っていた。
「うぉーい、起きろー」
 起きない。
 寝起き悪いタイプなのか。
「…あん? これ、アタシがプレゼントした鋏か」
 ベッドのすぐ横にある棚、目覚まし時計と並べて置いてあるペンケースに入っていた。
 机の上のケースには幾つもの鋏が入っているのだが、このケースにだけは他に鋏が入っていない。
「………」
 分かりやすい奴なのだな、とアタシは思う。
「…あっ、そうだ」
 前々から試してみたいと思っていたことを実践する時が来た。
 アタシはペンケースから普通のシャーペンを借りる。
「…えいっ」
 静かに、アイツの口にペンの先を入れる。
「…やっぱ反応無しか」
 眠っているからでもあるのだろう。
 とは言え、起きている時に試しても絶対に咥えたり、あるいは代わりになったりはしないのだろうが。
「………えいっ」
 何となく、アタシの指の先を入れてみる。

 あむっ、と咥え始めた。

「っ!? おっ、起きてんのか…!?」
 しかし、それ以外の反応は示さない。
「…えいっ」
 第2関節辺りまで指を押し進めてみる。

 あむあむ、と甘噛みしている。

 どうせなので、しばらくそのままにしておく。
「………」
 少し、気持ちいいかもしれない。
「…って何やってんだアタシは!?」
 唐突に我に返り、小声で叫ぶ。
 慌てて口から指を引き抜き、近くにあったティッシュで拭く。
「…んっ。…あら、おはよう。貴女って眠るのも早ければ、起きるのも早いのね…」
 眠そうな、ゆったりとした口調と動作で起き上がる。
「ふぁ…私はまだ眠いわ…」
「そ、そっか。それならまだ寝てても良いんじゃね?」
「んー…いえ、何故だが気分が良いから、このまま起きようかしら…」
「………ホントに寝てたんだよな?」
「?」
 キョトン、と首を傾げる。

 いつもの鋏の音は、今回は鳴らなかった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

お父様の相手をしなさいよ・・・亡き夫の姉の指示を受け入れる私が学ぶしきたりとは・・・

マッキーの世界
大衆娯楽
「あなた、この家にいたいなら、お父様の相手をしてみなさいよ」 義姉にそう言われてしまい、困っている。 「義父と寝るだなんて、そんなことは

お父さん!義父を介護しに行ったら押し倒されてしまったけど・・・

マッキーの世界
大衆娯楽
今年で64歳になる義父が体調を崩したので、実家へ介護に行くことになりました。 「お父さん、大丈夫ですか?」 「自分ではちょっと起きれそうにないんだ」 「じゃあ私が

妊娠したのね・・・子供を身篭った私だけど複雑な気持ちに包まれる理由は愛する夫に女の影が見えるから

白崎アイド
大衆娯楽
急に吐き気に包まれた私。 まさかと思い、薬局で妊娠検査薬を買ってきて、自宅のトイレで検査したところ、妊娠していることがわかった。 でも、どこか心から喜べない私・・・ああ、どうしましょう。

夫の幼馴染が毎晩のように遊びにくる

ヘロディア
恋愛
数年前、主人公は結婚した。夫とは大学時代から知り合いで、五年ほど付き合った後に結婚を決めた。 正直結構ラブラブな方だと思っている。喧嘩の一つや二つはあるけれど、仲直りも早いし、お互いの嫌なところも受け入れられるくらいには愛しているつもりだ。 そう、あの女が私の前に立ちはだかるまでは…

寝室から喘ぎ声が聞こえてきて震える私・・・ベッドの上で激しく絡む浮気女に復讐したい

白崎アイド
大衆娯楽
カチャッ。 私は静かに玄関のドアを開けて、足音を立てずに夫が寝ている寝室に向かって入っていく。 「あの人、私が

美しいお母さんだ…担任の教師が家庭訪問に来て私を見つめる…手を握られたその後に

マッキーの世界
大衆娯楽
小学校2年生になる息子の担任の教師が家庭訪問にくることになった。 「はい、では16日の午後13時ですね。了解しました」 電話を切った後、ドキドキする気持ちを静めるために、私は計算した。 息子の担任の教師は、俳優の吉○亮に激似。 そんな教師が

連れ子が中学生に成長して胸が膨らむ・・・1人での快感にも目覚て恥ずかしそうにベッドの上で寝る

マッキーの世界
大衆娯楽
連れ子が成長し、中学生になった。 思春期ということもあり、反抗的な態度をとられる。 だが、そんな反抗的な表情も妙に俺の心を捉えて離さない。 「ああ、抱きたい・・・」

ごめんなさいね・・・リストラされた夫の代わりにパートで働く私だけど若い男に誘惑されて

マッキーの世界
大衆娯楽
56歳の夫がリストラされて仕事を失ったため、お給料が貰えず、家計が苦しくなってしまった。 そこで、私はパートに出るため求人サイトで仕事を探した。 時給950円の漬物工場での仕事を見つけたので、午前9時から夕方16時まで働くことにした。 「じゃ、あなた、パートに行ってくるわね」 「ああ」 夫に朝食を作り、

処理中です...