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第二章 キースの寄宿学校生活
謎のアトレー一家
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いやいや、悪いわけじゃあ、とかなんとか言い合っている大人達は、皆複雑な表情をしている。
ゲート家で一度相談した内容だから、戸惑いの理由は分かる。王族と仲良くなることの難しさは僕も、もうよくわかっている。普通の友人とはやっぱり違う面倒がある。
まずは常に不敬に当たらないか、考えないといけない。メンドクサイ。
大人達に、お茶会の時の状況説明をして、だけど、ちゃんと正しい受け答えを心掛けてはいるんです、と弁明した。
「対 王族用の定型文で返答したら、王太子妃様にグレッグ伯父さんに似ていると言われたんです。伯父さんも何かやらかしたんですか?」
「まさか。俺はいつもいい子にしていたよ」
微妙な間が訪れた。
大体わかった。
「ローラ妃は、パンチが効いた女性だからな。ぼんやりしてるとやり込められる。サイルスはのんびりしたいい奴だよ。王子様はどんな子なんだい?」
「優し気だけど掴みどころがなくって、押しがものすごく強いです。そして面倒くさい」
「うん、それは現王にそっくりだ。しかし、キース、見事に不敬な物言いだな」
聞いていた両家の祖父が、やれやれと言っている。
僕も、ちょっと心配になった。伯父までひんしゅくを買って爪はじきにされたら、またまた、とばっちりを食らうのだ。
「伯父さん、もうこれ以上の負担は、僕、負いたくないので、慎重にお願いします」
「あ~、まあ、がんばるよ。お前もな」
ここまでは明るく楽しく話をしていたが、グレッグ伯父さんが、アトレーはどうしていますかと聞くと、雰囲気が少しトーンダウンした。やはり、父のアトレーが厄介事の大本なのだ。
「領地経営に真面目に取り組んでいます。年に一度だけ、キースの誕生日に一人でこっちに来て、報告してくれていますよ」
「年に一度だけですか?キースは寂しくなかったのかい?」
「別に」
「あ~、どっかで聞いたような会話だ。やだやだ。
それで、マーシャとマックスは?」
「元気にしているそうです」
「マックスの学校とかは?」
「さあ。私達も細かいことは聞かないし、アトレーも大して話さないので、全く様子がわからないのですよ。どうしているんでしょうね」
ゲート家の祖父母がランス家の祖父母の顔をうかがっている。
お互いに、探り合っているような雰囲気で、どちらの家も、相手側が、もう少し様子を把握していると思っていたようだ。
マックスは僕の兄弟だし、両家の孫なのだ。ここにいる全員に血のつながりがある。それなのに誰一人、今まで様子を見にもいかなかったのか。
でも、僕だって両親とほとんど会わずに育ち、かわいそうだと思われていたのだ。会って見なければ、本当のところはわからないものだ。マックスも、親子三人で楽しく暮らしているのじゃないだろうか。
思いつくままに、そう言ってみたが、大人たちの反応は、あまり良くない。なぜだろう。それに対してグレッグ伯父さんが答えた。
「残念ながら、マーシャは、足りないものをあげつらう性格なんだ。だから、あんまり幸せではないかもしれない。もし不満だらけの母親に育てられたのだったら、マックスは、どうだろうなあ」
皆、しんとしてしまった。
グレッグ伯父さんが、仕方なさそうに、その内に一度会いに行ってみようかな、と言った。
その年の年末、王宮で年越しのパーティーが開かれることになった。
昼間に子供たち向けのパーティーがあり、親も一緒に出席し、夜には大人達用のパーティーが開かれる二部式の物だった。
僕たちは昼の部にだけ出席する。16歳以上の上級生は両方出席できるらしい。
盛装しないといけないので、皆、それぞれに、ドレスシャツやスーツの新調をするために、今日は仮縫いに行くとか、親と買い物に行くとかの話題がにぎやかに交わされた。
僕のスーツはグレッグ伯父さんが用意してくれることになった。老人のセンスに任せたら、とんでもないものを着せられるぞ、と伯父から耳打ちされたからだ。
二人で一緒にテーラーに行き、布地を選び、スタイルを選び、ボタンやら、カフスやら......と、細々とややこしく時間のかかる作業を経て、スーツの注文が終わった。
ティールームに寄って、お茶とお菓子を頼んで待つ間に、ゲート家の領地に行ってきたか聞いてみた。
「気になるかい?」
「はい。兄弟だし、いつか会うこともあるでしょう。彼らを僕の家族だとは思えません。でも血がつながっているのは確かだから」
「うん、そうだよな。あの後、会いに行きたいけどいいか、と手紙を出したんだ。断られたよ。もう、俺たちには会いたくないのかもな」
「そうなんだ。じゃあ、様子はわからないままなんですね」
「こちら側があいつら三人を強く拒否していたのだから、それも仕方がない。まあ、うまくやっているのだと思うしかないかな」
そう言いながら、グレッグは考え込んでいた。自分が行けない代わりに、調査員を雇って、アトレーの一家を探らせたのだ。ついこの間、報告が上がって来たばかりだ。
三人はごく控えめに静かに暮らしている。そして領地で娘が一人産まれていた。
いくら実家と疎遠でも、子供が産まれたら、それくらいは知らせるだろうに、全く連絡もなしなのだ。なんだかおかしい。
だが、表面上はごく静かな四人家族だ。社交もあまりしないような暮らしぶりで、内情は全くわからない。なんだか嫌な感じはするが、それだけだ。
キースには、もう辛い思いはさせたくない。あまり辛そうではないけどな?
それは大人達にとって、とても、ありがたい事だ。
ゲート家で一度相談した内容だから、戸惑いの理由は分かる。王族と仲良くなることの難しさは僕も、もうよくわかっている。普通の友人とはやっぱり違う面倒がある。
まずは常に不敬に当たらないか、考えないといけない。メンドクサイ。
大人達に、お茶会の時の状況説明をして、だけど、ちゃんと正しい受け答えを心掛けてはいるんです、と弁明した。
「対 王族用の定型文で返答したら、王太子妃様にグレッグ伯父さんに似ていると言われたんです。伯父さんも何かやらかしたんですか?」
「まさか。俺はいつもいい子にしていたよ」
微妙な間が訪れた。
大体わかった。
「ローラ妃は、パンチが効いた女性だからな。ぼんやりしてるとやり込められる。サイルスはのんびりしたいい奴だよ。王子様はどんな子なんだい?」
「優し気だけど掴みどころがなくって、押しがものすごく強いです。そして面倒くさい」
「うん、それは現王にそっくりだ。しかし、キース、見事に不敬な物言いだな」
聞いていた両家の祖父が、やれやれと言っている。
僕も、ちょっと心配になった。伯父までひんしゅくを買って爪はじきにされたら、またまた、とばっちりを食らうのだ。
「伯父さん、もうこれ以上の負担は、僕、負いたくないので、慎重にお願いします」
「あ~、まあ、がんばるよ。お前もな」
ここまでは明るく楽しく話をしていたが、グレッグ伯父さんが、アトレーはどうしていますかと聞くと、雰囲気が少しトーンダウンした。やはり、父のアトレーが厄介事の大本なのだ。
「領地経営に真面目に取り組んでいます。年に一度だけ、キースの誕生日に一人でこっちに来て、報告してくれていますよ」
「年に一度だけですか?キースは寂しくなかったのかい?」
「別に」
「あ~、どっかで聞いたような会話だ。やだやだ。
それで、マーシャとマックスは?」
「元気にしているそうです」
「マックスの学校とかは?」
「さあ。私達も細かいことは聞かないし、アトレーも大して話さないので、全く様子がわからないのですよ。どうしているんでしょうね」
ゲート家の祖父母がランス家の祖父母の顔をうかがっている。
お互いに、探り合っているような雰囲気で、どちらの家も、相手側が、もう少し様子を把握していると思っていたようだ。
マックスは僕の兄弟だし、両家の孫なのだ。ここにいる全員に血のつながりがある。それなのに誰一人、今まで様子を見にもいかなかったのか。
でも、僕だって両親とほとんど会わずに育ち、かわいそうだと思われていたのだ。会って見なければ、本当のところはわからないものだ。マックスも、親子三人で楽しく暮らしているのじゃないだろうか。
思いつくままに、そう言ってみたが、大人たちの反応は、あまり良くない。なぜだろう。それに対してグレッグ伯父さんが答えた。
「残念ながら、マーシャは、足りないものをあげつらう性格なんだ。だから、あんまり幸せではないかもしれない。もし不満だらけの母親に育てられたのだったら、マックスは、どうだろうなあ」
皆、しんとしてしまった。
グレッグ伯父さんが、仕方なさそうに、その内に一度会いに行ってみようかな、と言った。
その年の年末、王宮で年越しのパーティーが開かれることになった。
昼間に子供たち向けのパーティーがあり、親も一緒に出席し、夜には大人達用のパーティーが開かれる二部式の物だった。
僕たちは昼の部にだけ出席する。16歳以上の上級生は両方出席できるらしい。
盛装しないといけないので、皆、それぞれに、ドレスシャツやスーツの新調をするために、今日は仮縫いに行くとか、親と買い物に行くとかの話題がにぎやかに交わされた。
僕のスーツはグレッグ伯父さんが用意してくれることになった。老人のセンスに任せたら、とんでもないものを着せられるぞ、と伯父から耳打ちされたからだ。
二人で一緒にテーラーに行き、布地を選び、スタイルを選び、ボタンやら、カフスやら......と、細々とややこしく時間のかかる作業を経て、スーツの注文が終わった。
ティールームに寄って、お茶とお菓子を頼んで待つ間に、ゲート家の領地に行ってきたか聞いてみた。
「気になるかい?」
「はい。兄弟だし、いつか会うこともあるでしょう。彼らを僕の家族だとは思えません。でも血がつながっているのは確かだから」
「うん、そうだよな。あの後、会いに行きたいけどいいか、と手紙を出したんだ。断られたよ。もう、俺たちには会いたくないのかもな」
「そうなんだ。じゃあ、様子はわからないままなんですね」
「こちら側があいつら三人を強く拒否していたのだから、それも仕方がない。まあ、うまくやっているのだと思うしかないかな」
そう言いながら、グレッグは考え込んでいた。自分が行けない代わりに、調査員を雇って、アトレーの一家を探らせたのだ。ついこの間、報告が上がって来たばかりだ。
三人はごく控えめに静かに暮らしている。そして領地で娘が一人産まれていた。
いくら実家と疎遠でも、子供が産まれたら、それくらいは知らせるだろうに、全く連絡もなしなのだ。なんだかおかしい。
だが、表面上はごく静かな四人家族だ。社交もあまりしないような暮らしぶりで、内情は全くわからない。なんだか嫌な感じはするが、それだけだ。
キースには、もう辛い思いはさせたくない。あまり辛そうではないけどな?
それは大人達にとって、とても、ありがたい事だ。
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