想いを叫ぶ石

昔懐かし怖いハナシ

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始まり始まり

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「シュウ、このテーブルはここでいいか?」
「ああ、そこでいい。ちょっと休憩するか。」
「そうだな。大体片付いたし。」
シュウとヤマトは、畳の上でぺットポトルのお茶を飲んで休んだ。その部屋には、小さいタンスとテーブル、段ボール箱が置いてあった。アパートはあまり大きくはなく、家賃は安かった。
 二人は、今年から他県の同じ大学へ入学するため、引越し先の部屋に荷物を運ぶのをお互い手伝っていた。また、同じ高校からの友達であり、同じアパートに住むご近所さんでもある。
 すると玄関のドアが開き、重たそうなリュックを背負った女の人が現れた。
「シュウ、いる?」
「リン。どうしてここに?」
「あ、ヤマトもいたんだ。だって、シュウに引っ越し先教えてもらったから、気になって来たの。」
 リンは少し遠くの人の少ない町でアパートを借り、二人と同じ大学へ通う仲間であった。また、二人と同じ高校ということもあり仲が良かった。
「この通り、ヤマトと荷物の整理をしているんだ。」
「そうだったんだ。じゃあ、私も手伝うよ。」
「あと少しだしいいよ。二人でやるから。」
「えー、分かったよ。あ、部屋の中とか見ていい?」
頬を膨らませたリンは、そう提案した。
「変なとこ、触って壊すなよ。」
「ハーイ。分かってまーす。」
軽い返事をし、リンは立ち上がりリビングを出て行った。
「あ、そういえば、おれたちと同じ大学に行くって言ったわこに、どこに住んでいるかって聞いたか?」
「い、いや、聞いてないけど。」
「なんでだよ、聞かないと遊びにいけないだろ。シュウ、高校の時好きだっただろ?」
「ま、まあそうだけどさ。恥ずかしいし、まず女子に家聞くなんて、さ。」
「大丈夫だって、リンなんて恥ずかしがらずに異性の家に来ただろ?それと同じ。」
「なんか言った?」
後ろでリンが二人を鋭い目で見下ろし、ヤマトの肩を強めに叩いた。痛て、と倒れるヤマトの横にリンはリュックをストンと置き座った。その様子を見たシュウは、リュックは軽かったように思えた。
 荷物の整理が終わったその日の夜、三人で回転寿司を食べに出かけた。ずっと高校の思い出話で盛り上がり、楽しい一日だったと三人は思った。
 大学生活は始まり、最初は生活が少し大変だったが、だんだんと慣れて楽しくなってきた。
 ある日ヤマトとシュウは、大学内でリンがわこと話をしているのを見つけた。
「シュウ、行ってみようぜ。」
「あ、うん。」
二人は走って向かった。近づいてみると、わこはなんだか不安そうな表情だった。
「ひ、久しぶりだね。今から帰るとこ?」
シュウは勇気を出し、聞いてみた。
「あ、久しぶりだね。今終わって帰るとこ。」
「ど、どこ住んでるの?」
するとリンは、
「なんかわこ、これからサークルの集まりがあるらしくて、早く行かないといけないらしいんだよね。」
「あ、そうだったんだ。じゃあ、急がないとね。また話そう。」
シュウはそう言うと、わこはまだ言いたそうなまま、リンとどこかへ行ってしまった。
「また連絡すればいいよ。わこのSNS、知ってるんでしょ。」
「うん、そうだね。今日は話せたし、一歩踏みだせた。」
二人は夕方、いつものようにスーパーに買い物をしてから家へ帰った。
 六月、雨の日が次第に多くなり始めた頃だった。シュウとヤマトは同じバイトを始め、リンは青いスーツケースを持ってちょっとした一人旅に出かけることが多くなった。
ある日の夕方、空が真っ赤になりカラスが鳴き始めた時、シュウは帰り道を一人で歩いていた。すると、道の角である髪をだらっと垂らして顔の見えない女の人が立っていた。今にも倒れそうでよろよろとしており、また両腕には紐が絡まっていた。
『なんか変な人だな。大丈夫かな。』
そう心配して通り過ぎようとした。しかし、その女の人からの冷たい視線を感じると、背筋がゾクッとした。シュウは何か危険なものを感じ、自然と小走りになった。
「見つけた、見つけた、見つけた、見つけ・・」
後ろではその女と思われる声が響いた。決して足を止めなかったが、追いかけてきているのか不安を感じ、思わず後ろを振り返った。
「あれ、どこに。」
あの女が立っていた場所には誰もいなかった。ハッと思い、
「前・・」
前を見てみてもあの女はいなかった。
 結局この日は、全く訳の分からない奇妙な体験をして家へ帰った。
 

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