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三人がつなぐ、昔の友へ

昔の

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 高速道路を使って、昼3時頃に着くことが出来た。
 登山道を探し、登り始める。
「早く帰ってきなさいね。」
蓮斗の母は、まだ状況は掴めない様子だった。
 登山中三人は、黙々と登っていた。話をする余裕はなかった。木々はどんどん深くなるばかり。これが、自然の恐い所でもあるし、素晴らしい所だと思う。

「これが、ロッジ」
一つ道の脇に小屋があった。木造りの少し小さな小屋だ。
「この先何もないようだね。」
道はそこで途切れていた。昔は、もっと上に行く道があったのだろう。壊れた石階段が先へと続いていたが、いまは封鎖されている。

 ギーと音を立てて、ドアを開く。椅子と椅子が向かい合わせになっている。
 テーブルはない。ただ、それだけしかない小屋だった。
「本当に漠はいるのか?」
蓮斗は、中を見ながら言った。人の気配はない。
「小説通りだと、この山で間違いはないと思うが。」
せいまは、そう言った。
 直後、三人は味わったことの無い寒気を感じた。
「源気、大丈夫か?」
源気は、気を失い入口付近で倒れてしまった。
 次にせいまが、そして最後には蓮斗が倒れ込んでしまった。
「くそ。どうなって…」
言葉はそれで最後だった。森の中で聴こえてきたのは、鳥の鳴き声、風で揺れる木の音。それだけだった。

 “おい、大丈夫か?”
自分の外から聞こえるのは、せいまの声だった。目をゆっくり開けたのは、蓮斗。ほか二人は、もう目を開けていた。
「この空間は?」
次に思ったのは、白い空間の事。さっきまで、小屋の中にいたのに。まるで霧の中にいる感じだった。
 
「奏斗君の友達だよね?」
霧の中からスッとあらわれたのは制服姿の、漠。小山 漠だ。
「そうだよ。奏斗は?どこだ。」
蓮斗は、彼女を責めるように話した。
「まだ、生きてるよ。だって、私の食材だからね。
 私はね、人の記憶を食べて生きてんだ。だから、奏斗君が居なくなると、この世界で生きていけなくなる。
 ついでに、お前達の記憶も頂こう。お前達はさきほど、私が奏斗の声で助けてと言ったから来たのだろう?騙されたな。」
彼女は笑っていた。優しそうな性格とは、真逆。人を貶める様な性格となっていた。
「奏斗を選んだのは、昔の大切な人に似ていた。それだけ。しかし、上品な記憶を持っていた。選んで正解だった。
 前の殺人犯の記憶は、まずかったね。」
せいまは、ある事件を考えた。
 記憶のない殺人犯。そうだ。クラスで聞いた、あの事件。
「あれは、お前のせいか。」
「それよりもさ、私の邪魔しないで。そうしたら、見逃してあげる。
 今から街全部の人達を、支配するんだ。それまで、大人しくしてなさい。」
源気の質問を無視し、霧の中へ消えかけた。
「かなとさんがいるんだぞ。あの街に。」
かなと…さん。ぼそっと、聞こえたのは、漠の悲しい声。
「嘘だな。あの人は、死んだ。もう八十年以上も経っているんだぞ。
 生きているはずない。」
そういえば、若かった。結構な歳をとっていてもおかしくないのに。しかし、引き下がれるわけがない。
「でも、俺たちは会ったんだ。君の話を聞いたとき、悲しそうだったぞ。」
彼女は、少し元気のない返事をした。
「そうか。」
そして彼女は、振り返ってこう言った。
「どちらにせよ、私はね人の記憶を操れるんだ。失くしたり、変えたり。それで人を支配するんだ。
 私は、人を許さない。」
彼女の声は、段々と太くなっていく。
「私から、家族やかなとさんを奪った戦争。それを生み出した人を支配し、平和な社会を作る。憎しみ、妬み、怒りを脳から消して。
 誰も作り得なかった社会を“かなと”さんの為に作る。」
ウッ、せいまは頭を抑えた。彼は、“君達は誰だ?”と不思議なことを言っている。
 どうやら、せいまの記憶を消されかけている。



「やめなさい。“令”。」
彼女の肩に手を置いたのは、霧の中から出てきたのは、かなとさん。
 しかし、若かった。
「奏斗君を連れ去ったのは、僕の名前と同じだから。
 人を支配するのは、君の本望じゃないだろ。君は、人の影響でそうなってしまった。
 昔は、そんな君じゃなかった。」
そう言って、彼女の手を握って力を抑えさせた。
「僕は、ここにいるから、君は支配する事はないんだ。
 人に迷惑はかけないでくれ。」
「…」
彼女は、ずっとうつむいていた。
 せいまは、頭を押さえるのをやめた。どうやら、彼女の力は収まったらしい。
「なんで、いなくなったの?どうして、?」
泣き声と共に、彼女の、声が聞こえた。うつむいているため、顔は見えない。
「君を見失った後。どうやら、僕は死んでしまったらしい。
 だから、君に会えなかった。
 ごめんね。」
かなとさんは、彼女を優しく包み込んでいる感じだった。

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