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出口を目指して

脱出

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 東君の悲鳴を聞いたあとすぐ、無言のまま、崩れた地下通路を見ている、西野くんがある事に気が付いた。
 外にいたはずの園長やスタッフやらが、全くいないのである。それに加え、遊園地へと遊びに来ていた、他の客も全くいなかった。四人が遊びに来たときよりも、静かなのは、そのせいであった。
「あれ?なんで?」
西野くんは、周りを見渡したが、誰もいない。アトラクション一つも動いていない。むしろ、壊れていた。錆びついて折れた柱等、到底動くとは思わなかった
 すると、何もわからぬ西野くんの周りを囲むように、霧らしきモヤが出てきた。それどころか、遊園地ごと飲み込んでいた。
 少し時が経ち、西野くんの周りのモヤが晴れると、遊園地のアトラクションは、古びた鉄の塊となっていた。観覧車は、ゴンドラが所々無くなって、コーヒーカップは、あちこちに散らばっていた。そんなふうに、全てのアトラクションは、昔閉園したままの状態で放置されていた、ようになっていた。
「最初来た時と、全く違うじゃないか。どうしたら良いんだ、僕。」
その場で、落ち込んでしまった。
 もしその時、誰も助けなかったら、あの“身体”は、完成されていただろう。

「急げ!立ち上がるんだ。西野!」
気が付いた時、右に丸い白いモヤが現れた。先程助けてくれたものと、全く同じ物だった。
 すると、それは人の形になり、こう言っていた。
「あの“園長”の言っていた事は、本当だ。だが、あやつはその悪霊の仲間だ。
 決して、お前たち四人は逃さない。とにかく、走れ。」
すると西野くんは、誰かに背中を押されたような感触がした。
 訳もわからず立ち上がり、正門まで走った。あのモヤも浮きながら、西野君について来ている。
「本当は、この遊園地全体が封印されている場所なんだ。決してあの家だけではない。
 そして、あの“園長”は、昔恨みを抱えて死んだ悪霊の長なんだ。そして、その周りにいたスタッフ達は、その長を長年支えてきた悪魂なんだ。“園長”ほど、力は無いが、集まればその力は計り知れない。
 あの家は、体を集める場所でもある。だから、あそこでお前たち四人を殺せば、すぐに復活出来る。しかし、遊園地内では無理だ。だから、あそこに閉じ込めたんだ。
 お前たちは一人が死んだ時、入口に戻って来ただろう?」
 西野君に、説明をしていた。
「その時、外には誰もいなかった。それは、沢山の悪魂がお前たちを殺そうと、タイミングを伺っていたんだ。
 急げ、まだここはあいつらの、行動範囲だ。捕まれば、家に引きずられて死ぬ。
 正門出れば助かる。」

 その時、話は終わり、西野くんはある疑問を持った。
「あなたは誰?」
「俺は、お前の先祖。守護霊として、生きている。それより、走れ。振り返るなよ。」
西野くんはそれ以上、聞き出すことが出来なかった。振り返ることも、出来なかった。それほど、一生懸命だった。
 突然後ろから、
「どこへ行く?もうお前しか、生き残ってないんだぞ。現実に戻っても、一人ぼっち。
 それよりも、こっちで遊ぼうじゃないか。体はなくても、俺たちがいる。友達だって、会えるさ。」
聞き慣れた声が、響いてきた。
 と、突然メリーゴーランドの近くで足を掴まれ、倒れ込んだ。メリーゴーランドはなぜかギシギシと不器用に回り始めた。
 しかし、彼は足を止める事はなかった。
 もう正門の目の前まで来た。この短い階段を下れば、終わりだった。
「お前だけは生きろ。西野。」
「俺たちは、大丈夫だ。安心しろ。」
「うん。これ以上、子供は近づけさせない。身体が完成しないように。」
ここで、西野君は、立ち止まってしまった。身体が震え、泣きそうだった。うまく力が入らない。しかし、
「ドン!!」
 両肩を強く叩かれた。そして、腹に力が入った。
「お前の守護霊は言っただろう、振り返るなって。あの正門まで、俺たちはついていくよ。だから、腹に力を入れて走れ。これからも、そうして頑張って生きろよ。俺たちの分マデ…」
そう聞こえた時、体が軽くなって、熱くなった。
 

 気づいたら、もう錆びついた鉄格子を越し、遊園地の前にいた。体は冷えて震え、全身の疲れが急に出てきた。
 いつの間にか、寝ていた。

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