暗愚う家で逝く

次の現場

二節

　最初にはしごへたどり着いたのは、北君だった。それからまもなく、西野君、東君がたどり着いたのは。すぐに、はしごへ上った。そんなに長くはなかった。はしごの先には、扉が付いており、光がかすかに漏れていた。
　しかし、機械は北君の横腹あたりに当たり、思わず手を離してしまったのだ。そのせいで、西野君、東君も巻き込まれ、落ちていった。
「早く上れ!イタタ」
北君は、頭から血を流していた。この地下室に落下したときから、頭に痛みを感じていたのだ。目の前がかすんで見える。しかし、ゆっくりとしている暇はない。
「分かった。」
それを知らない二人は、先に上った。
　ブルルルル!っと、何かのエンジン音が聞こえた。振り返ると、大きな四角い箱から聞こえていた。その箱には、丸い穴がある。その中の奥は、闇だった。何故かスマホの光も届かない。
「急げ。早く上れ、お前ら」
北君は、動けなかったが、口だけは素早く開くことが出来た。
「あ！」
西野君は、はしごを上っている途中、気がついた。置いてある機械全て、少しずつその箱型の機械に向かって動いているのを。
「北、早く上れ。」
東君は、それに気がついていた。
「あれに吸い込まれるぞ。」
そう言われると、無理やり体を動かさない訳にはいかなかった。
　しかし、一歩遅かった。吸い込む力が強くなっていたのだ。別に、空気ごと吸い込む感じではなかった。この地下室にある物体すべてが、ある力によって吸い込まれるようだった。
　北君は、横に転がっていった。抵抗はしたのだが、それは無意味に終わった。最後まで、力を振り絞り、その箱に吸い込まれる寸前まで粘った。
「絶対お前ら。生き残れ。」
誰も、死を恐れなかった。北君でさえ、
　地下室に置いてある機械が、彼の頭を直撃した。彼は気を失い、静かに箱の中へと、
　地下室の中が、空っぽになったとき、ようやくエンジン音は止まった。最後まで、二人は、見ていた。
　はしごをようやく上り終わり、誰も何も言うことは無かった。