話し相手

糸子(イトコ)

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相談

あの日、私は死んでしまった

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「マスターこんにちはー」
「いらっしゃいませ」
「試練の酒とかない?」
「え?」

甘の亡き林
「という、仮死薬がありますよ。りんご味の仮死薬です。」
「なにそれめっちゃ興味ある。」
「彼氏さんを試したいの言うのであれば、ガツンとやってやりましょう。」
「マスター意外とひどいね。」
「提案者はあなたです。」
「うん。そうだけどね。」
「こちらが甘の亡き林です。」
「白いカクテル?」
「ええ。りんご酒と特別な魔法がかけられていますよ。」
「メルヘン~!」
「まじですから。」
「じゃ、飲んでみるか。」
「その前に、彼氏に連絡を。あと、寝床も用意しておきますので。」
「気が利くね。」
「これを飲ませるの好きじゃないんですよ。」
「そうでしょうね。」
「飲む前に、水面に向かって質問でもしていてください。その間に用意します。」
「ありがとう。…水面に?」
「鏡よ鏡」
「はい…なんでしょう…」
「水面が喋った…」
「水面が魔法の鏡なんです。」
「すごい…」
「この仮死薬、運命の相手とのキスでないと目覚めないので、注意してくださいね。ん!はぁ…重い…」
「鏡よ鏡。私の運命の人はだれ?」
「この方です」
「彼だ…彼だ!」
「良か…ったですね。それでは、これに寝転び、飲んでください。即効性があるので、やることをやってから。」
「ええ。」

「飲みます!」
「良い眠りを」
「…んっ…んん…」
「眠られましたね。あとは、来るのを待つだけですね。」

「彼女は!」
「こちらで眠っております。」
「ああなんてことだ…どおしてこんなことに…あなた…なにしたんですか!」
「彼女は自ら進んでやりました。私はその手伝いをしたまでです。」
「そんな…」
「このカクテルを見てください。」
「え?」
「そして、鏡よ鏡と質問してください。きっと答えは返ってきます。」
「…鏡よ鏡。彼女を助ける方法は!」
「はい。あなたとのキスが、彼女を助けるでしょう。」
「キス…わかった。」
「おお」
「…ん…」
「おお!」
「…ん…んん?んんん!?」
「…起きた…」
「あっ…ああ…」
「大丈夫?」
「ああ…」
「大丈夫?」
「我が生涯に一片の悔い無し…」
「おい!助かるんじゃないのか!」
「これは…ふふっ…彼女、いい彼氏さんを持ちましたね。」
「え!それ、どういう!」
「あとはその人、持ち帰ってください。このままじゃお店があれですので。」
「え?!だから彼女が!」
「もう復活しておりますので。今は軽く気絶しているだけでしょう。またのお越しをお待ちしております。」
「ええ!?そんな投げやりな!」
「彼女のやりたかったことを応援するまでです。」
「彼女の…やりたかったこと…あ…」
「今気づきましたか?」
「言えばいつでもやるのに…」
「いいですね。幸せにしてあげてください。」
「そ…そんな…ありがとうございます。」
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