話し相手

店長の休憩

世間話

「お隣、いいかい？店長さん。」
「…ん…ん？イチゴのおばさんじゃないか。いちごは扱わないよ。」
「それはもう諦めたさ。少し、世間話をしたいだけだよ。」
「イチゴのばぁちゃん…それはまた珍しいねぇ。」

カツ丼
イチゴのおばちゃんは机の端の割り箸を取り、割って、カツをつかんだ。
「90超えてカツ丼かい？」
「わしゃまだまだ元気じゃよ。」
サクサクした音を奏でながら美味しそうなカツを米と一緒に頬張り言った。
「さすが人生で虫歯ができたことの無いおばちゃんだよ。」
おばちゃんは鼻で笑い、カツを食べながら、
「あとぁりむぁえだ。」
と言った。
「きたねぇババアだ。」
店長は辛く言った。
「何だとね！」
カツ一切れ分を食べきったおばちゃんが言った。
「事実…」
おばちゃんに聞こえる程度の小声で言った。
「ったく。年下をもっと可愛がれんのか。」
「これが精一杯の可愛がりさ。」
「むかつく"ババア"ね。」
「店長権限で出禁にするよ？」
「そこで店長権限出すのは反則よ～！」
「ふ！早く食べな。冷める。」
「おっとそうだった。」
おばちゃんはまた食べ始めた。
おばちゃんがカツ丼を半分以上食べ終わった頃、なんとなく気になったことをおばちゃんは言った。
「あんた、何歳だい？」
その時、周りにいた常連さんの数人がざわめき出した。
「知りたい？」
「もちろん。」
周りに緊迫した空気が流れる。
・・・
「明治以前生まれ。」
常連全員が振り向いた。そしておばちゃんは箸を置いた。
「…話は終わり。一回バックヤード戻ってるから。」
店長は逃げた。常連たちの口は、しばらく閉じることはなかった。