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2、八千代15歳、菊華21歳─冬
11.ライオンハート③
しおりを挟む家族で借りていたホテルの座敷から、ほろ酔いの菊華がつまみ出された。酒豪うわばみ笊に升枠の飲兵衛たちは、不味そうに酒を飲む菊華が嫌だったのだ。
追い出されたのに納得できない菊華は、八千代に絡む。おおいに絡む。
「ひどいと思わない? 思うよね?」
十五歳の少年に世話になりながら、部屋に帰ってソファに身を沈めながら文句を言う。
菊華だって分かっているのだ。こんな酔い方はしたくないし、される方も迷惑だと。でも、ブレーキが利かない。
だから、酒の力を借りて言えると思った。
けれど、珍しく八千代が機嫌悪そうにしている。眉間に皺を作って難しい顔で菊華を見据えている。
人生経験が浅い六つも年下の八千代に、愚かさを見透かされているようで、菊華の酔いが一気に醒めた。
隠し事をしているのは心苦しい。嘘を吐いているわけではないし、言い難いだけ。心のわだかまりは、八千代を好きになる以前の話だから、きっと言わなくてもいいのかもしれない。
けど、言わないといけないよね。心にしまっている事を言ったら楽になるかな?
「あのね、やっくん……」
ここまで言えたのに、酒で焼けた喉から声がうまく出ない。
隣で八千代が深く息を吐いた。八千代が菊華を嫌うはずないから、呆れたわけではないのはわかる。
「言い難いこと?」
ほろ酔い気分が抜けてしまったけれど、酒でフワフワする身体に八千代の声が優しい。それから、情けないなと肩を落としてしまった。
八千代のことだけ考えてたいのに、浅い経験と年齢が邪魔をする。せめて自分が無鉄砲だった高校生だったらよかったのに。
「無理して言うことないよ」
突き放された言葉に菊華が顔を上げた。
キリッとした目を数回瞬きさせた八千代は、軽く息を吐いて菊華の肩抱く手に力を込めた。少年の頼りない胸は、今の菊華にとって大きな存在だ。
「違うよ、菊華。言いたいなら、言えるようになるまで俺は待つよ。付き合ってるからって、お互いの事をなんでも話さなくてもいいと思うんだ。分かり合わないんじゃなくてさ……。難しいな……なんて言えば伝わるだろ……」
大きくなってしまった八千代の手が、菊華の背中を摩る。風邪で心身弱った時、雷で震える夜、大声で泣いた日……。いつも細い八千代の手がたどたどしく背中を摩ってくれた。なにも聞かずに、なにも言わずに。傍にいてくれるだけの八千代の優しさは、なによりも誰よりも温かい。
今はもっと温かい。
「……誰だって秘密にしたいことは持ってるだろ。菊華だけじゃない。無理して言わなくても、それをひっくるめて菊華が好きだから」
言葉を探していた八千代が静かにそう告げると、いくらか気持ちが軽くなった。
「でも……、いつかは言うから」
待っててほしい。その言葉が八千代にキスをされて塞がれてしまった。
何度も何度も角度を変えるキスをして、2人の体温を同じにする。
「……酒の匂い」
「飲んだからするよ。やっくんはいつもの香水の匂いだね。……私、この匂いも好きよ」
いつから八千代がメンズパフュームを着けるようになったのか、酒とキスでふわりとする頭では思い出せない。
胸元をくんくん匂いをかいで、八千代の香りで肺を満たす。
「やめろって、酔っ払い」
むぎ、と八千代が菊華の小さな鼻を抓むと「むぬー」と菊華が訳の分からない呻きを漏らす。
「……よそで飲むなよ?」
「なんで?」
コンパなんかには行かないが、友達との飲み会でも飲めなくなるのは若干困るのだ。それに菊華自分自身は、酒に強いと思っている。
眉を上げた八千代がふぅん、と謎の納得をすると菊華の唇を指でなぞった。
「酔うとキスされたそうな顔してる。俺の前以外でそんな顔しないで……菊華」
ふと見せた年相応の表情が菊華の心臓を跳ねさせ、バクバクさせる。
「……う、うん」
「気をつけて」
ソファの背もたれに押しつけられて、八千代の腕が菊華を囲う。そのままキスをされて浴衣の前が緩くなるのを感じた。
節度を持たないと……今日は。
けれど、八千代の唇が、手が、香りが菊華の思考を緩やかに解いていく。
「ダメ……」
口先だけの抵抗なんて、八千代がアッサリと壊してしまう。
□
横抱きに抱えられている菊華は裸なのに、八千代はシャツを大きく開けているだけ。
ちゃんと触れ合いたい……、やっくん。
言いたいのに、言わせてくれないのは、キスで口が塞がれているからだ。乳房も胸の頂も嬲られて溺れた声しか出ない。
六つも年下の男の子に好き勝手にされて、溺れさせられる。
触られて熱を溜めているのは菊華なのに、八千代が掠れた溜め息を零す。少年から青年になりつつある色っぽい表情には、憂いがあるようで菊華の腰がゾクリと粟立つ。
「菊華……。やわらかいのに、ここは硬いんだ」
「ひゃあっ」
触られてなくてもジンジンしている濡れた場所の芯を、八千代の指にくちくち擦られて泣くような声が出る。
細く節立った指に、ぐちゅん、と蜜をかき混ぜられて、菊華が泣くような甘い息を吐く。圧されて扱かれた芯から、身体中の自由を奪う甘い痺れがピリピリ駆け抜ける。
「あぁ……っ!」
全身が強ばる刺激を受けたばかりなのに、菊華のドロドロの場所に八千代の指が埋められた。
「もう2本、入った」
「ま……って、や……くん」
「すごいギュウギュウ」
達したばかりの欲しがりの蜜洞が八千代の指を締め付ける。菊華がしたくて締め付けている訳じゃない。悦んで指を迎えていると思われたくなくて、菊華は高揚した赤い顔でいやいやと首を降る。
今の菊華には年上とか年下とかどうだっていいのだ。
「かわいい、菊華……」
何かを模してピストンをしていた二本の指が、腹側のそれを圧してぬるぬるの親指が雌芯を圧す。同時に胸を八千代が食みついてぢぅぅと吸い上げると、身体が放り投げ出されるような感覚になった。
「あ――……ぁ!」
ガクガク身体が震えて、身体中を巡る痺れが恍惚を菊華に降り注いだ。
けれど、お腹の奥が満たされない。気持ちは満たされているのに、そこだけがポツンと取り残されていた。
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