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 しかし、フェリスは十一日目の夜も無事に抱き潰された。その次の日もその次の日も。違うのは彼の手つきや腰つきだ。強引さが小さくなっていて、腟内射精されたあとは、抱きしめられて話をする甘い時間かできた。
 結婚前、ともに過ごした思い出を夫から話されて、心がくすぐったい。

「メルヴィルさまは、婚約が嫌ではなかったのですか? 十歳も年下のわたくしなんかが」

「なんかが、と卑下してはいけないな。十歳年下だったから、途中までは妹を愛でる兄の気分だった。悪い虫がつかないようにする、悪い兄だった」

 メルヴィルお兄さま。メルヴィルお兄さま。と、会うたびに子犬のように彼にまとわりついた。

「フェリスが大人に変わっていくのを目の当たりにして、一番悪い虫が自分だと気がついた。十八歳になったフェリスとすぐに結婚できるように準備を進めていた。きみが、成人するまで待っていた。美しく成熟しようとするフェリスを獣のように食い散らかさないように、距離を置いていたが、間違えた我慢の仕方だった」

「間違え?」

「フェリスから笑顔を奪ってしまった。憂う表情もよかったが、笑ってほしい。……冷たくして、悪かった」

 冷たくして。距離を取って。ひとりにさせていた自覚があった。打ち明けられても、怒れない。逆に真実──フェリスに都合のいい真実だとしても、打ち明けてくれたのが、心に響く。
 とくんとくんと、テンポ早く鼓動が跳ねる。

「キスをしてくれたら、許します」

 先程、夫の精を受けた場所があつい。

(メルヴィルさまが、ほしいの。淫らな、わたくしはお好きではない?)

 大きな手がフェリスの華奢な手を握り、桜貝のような爪先にキスをする。眼鏡を外しているからか、いつもより目付きが険しい。睨まれているみたいなのに、初めてレンズ越しじゃないメルヴィルに見つめられ、頬が熱くなる。

「キスだけで終われそうにない」

 フェリスの柔らかな下腹部を夫の逞しい肉がぐいぐい押している。

「ぜ、ぜつりん、なんですか?」

「いや。きみを抱くまではこんなには。……ああ、あのウイスキーを飲んでからのしばらくは、異常だったな。理性が崩壊したというか……。今のこれは、かわいいフェリスの心がもらえて、嬉しかったから、勃った」

 ぬっ。と、先程のまぐわいで濡れている場所にメルヴィルがガチガチの肉棒を差し込む。

(え? おっきい? こんなに固くて、熱かったかしら?)

「メルヴィル、さま。キス、が、先です、よ♡」

 蜜口に亀頭が当たっているだけなのに、達してしまいそうだ。

「フェリスが挿入れようとしているんだ。……っとに、きみは」

 密着したままごろりと転がられ、フェリスはメルヴィルの上に乗る。ぐぷっと亀頭を迎え入れて拡がった刺激が、フェリスの感情をあっという間に弾けさせた。

「くふっ♡ っっ……────~~♡♡♡」

 蕩けそうに気持ちがいい。ただの快感だけでない愉悦。あたたかい、なにか。

「許しのキスを」

「ん……ふ♡」

 少し起き上がり、夫の両頬を手で包み、キスをする。じゅわじゅわ湧き出る唾液を蜜でも啜るように吸われ、狭い咥内を舐め尽くされる。
『イく』と言ってないが、メルヴィルは咎めない。ぐぽぐぽ♡ カリ首で先程の体液も溢れ出る愛蜜も掻き出すように抽挿され、フェリスは連続で達している。
 だけど、これまでのように疲れがない。もっとしてほしい。

「は。腟内なかをすごくうねらせて、おねだり上手だな。きみは、魔性だ」

「は──♡ あ──♡♡ めるうぃる、さまぁ♡ すきぃ♡ すき♡ あ♡」

 どちゅんっ。力強く突き上げられ、荒馬に乗っているかのように金の髪を振り乱し、フェリスは汗を飛ばす。

「……愛しいフェリス。好きだよ」

「あっっ♡♡ い……く……ぅ……♡♡♡」

 メルヴィルが起き上がったから、当たる場所が変わってしまった。じんじんしている子宮口に巨大な亀頭が優しくトントン小刻みに当たる。

(キス、されてる♡ とっても、すてきなところに♡)

「お手柔らかにしても?」

「?」

 はぁはぁと息を繰り返している唇にキスをされ、舌を絡めて舐めあっているあいだ、メルヴィルはフェリスの腟内なかいっぱいにして動かない。

「んぅ♡ やぁ……ぁん♡ ちくび、すりすり、だぁめぇ♡♡ また、イ…………っ♡♡」

 敏感になった乳嘴を指の腹が優しくスリスリ執拗に続ける。

「フェリス、腰が動いてる」

「あ、ぁ♡ とめ、られなぃの♡」

「かわいいな、きみは。淫らで。愛しい」

「ふぁ♡ ────…………ぁ♡♡♡」

 狂ってしまいそうだ。心身ともに愛されるセックスで。

「……はっ。フェリス。フェリス」

 愛しそうに、性急に名を繰り返されて、フェリスは恍惚のなかで幸福を感じる。
 ガツッ。最奥を穿った雄がいやらしくのたうつ。
 荒い息を繰り返す十歳も年上の夫は、汗が滴る乳房の谷間に顔をうずめていた。のに、今のフェリスが気づける余裕はないのだけれど。



 翌日、昼。寝室に食事を運んできた使用人は、上半身裸のメルヴィルに手紙を渡した。フェリスはなにも着ていない。ここ半月はメルヴィルのために用意していたナイトドレスくらいしかはおっていない。
 フェリスはメルヴィルに、メルヴィルはフェリスに互いに食べさせ合い、ベッドの上で食事を終わらせる。と、メルヴィルは忌々しげに手紙に目を通した。

「いい加減仕事をしろ。だと。ジュードめ」

 真面目な夫の意外な一面を見て、フェリスはくすくす笑う。ここ半月は夫の意外な面ばかり見たが、まだまだ知らない彼がいる。
 メルヴィルは手紙をくしゃっと握り潰して、ベッドから下りる。トラウザーズは履いているが、上半身は裸だ。食事の前までいちゃいちゃしていたのだから。
 夫はシャツをはおる。

(着方もかっこいい~。色気がすごい……。わたくしの旦那さますてき)

 メルヴィルはボタンもはめずに渋面のままフェリスに近づく。『仕事したくない』『いちゃついていたい』そう顔に書いてあるようで、フェリスは微笑わらいながら夫のシャツのボタンをはめようと手を伸ばす。

「出る前に軽くシャワーを浴びるからいい」

 メルヴィルは眼鏡を外して、フェリスの頬にキスをし、唇にもキスをする。軽いキスだったのに意地悪な夫は、フェリスの咥内を隅々味わい、ちゅぅうっと妻の唾液を啜ってから離れた。
 ぽうっとするフェリスに、眼鏡をしたメルヴィルが微笑みかける。

「行ってきます。早く帰ってくる」

「い、行ってらっしゃいませ」

 夢にまで見た行ってきますのキスは、想像していたものより情熱的だったが、フェリスは顔がにやけるのが止められなかった。


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