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警戒
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自宅に戻り、俺はこれからの事を考えていた。
柊がメイドである以上、現実世界も安全とは言えない。
それに相手は作戦が失敗し、余裕もないだろう。どのタイミングでリーシャを狙ってくるか分からない。
落ち着くまではリーシャを一人にしない方が良いだろう。
それにリーシャの精神状態も心配だ。
まさかこんな近くに自分の命を狙っている人がいるなんて思いもいなかっただろうしな。
「リーシャ。コーヒー入れたけど飲むか?」
「………………はい。いただきます」
俺はコーヒーの入ったコップをリーシャに渡した。
「砂糖たっぷり入れたから甘くて美味しいぞ」
「ありがとうございます」と言いリーシャはコーヒーを飲んだ。
ほっ、と一息をつきリーシャは自身の気持ちを話し始めた。
「まさかシイラギさんが私を狙っていたとは驚きました。ずっとこちらの世界には敵がいないと思ってきていたのですごく怖いです………………」
「だよな。正直俺も信じられない。ずっとリーシャを苦しめていたやつがまさか俺の住む世界の人間だなんて想像もできなかった」
俺は異世界に行ける力を得た時、嬉しかったし、テンションも上がっていた。
でもそれは向こうの世界の人からしたら迷惑な事なのかもしれない。実際、別世界の人間がリーシャの人生を台無しにし、苦しめた。
女神の勝手とはいえ、俺達が存在しなければリーシャは苦しまずに済んだはずだ。
「なんだか申し訳ないな。俺の住む世界の人間がリーシャの人生を台無しにしてしまって」
「謝らないでください。少なくともアマネさんは何も悪くありませんから。それに私はアマネさんと会ってからの方が楽しいですし………………」
小さな笑みを浮かべそう言うリーシャ。
「ありがとう」
俺はリーシャの頭をくしゃくしゃに撫でた。
「こんな事になった以上、俺が絶対にリーシャを守るよ。だから安心してくれ」
「……………分かりました。じゃあ安心します」
そんな事を言って俺にもたれ掛かるリーシャ。
触れるリーシャの体は震えておらず本当に安心しているみたいだ。
「怖いなら我慢するなよ」
「怖いですけど、アマネさんが居なかった時よりは怖くありませんから。それに私が不安になってたら優しいアマネさんは安心出来ないでしょ」
そう言ってニコリと笑みを浮かべるリーシャ。
「やっぱりリーシャは強いな」
「アマネさんほどでは無いですけどね」
「…………いや、俺より強いよ」
俺はリーシャの前で強い振りをしているだけだから。
※
「事が落ち着くまでの間だけだから許してくれ」
「別に私、アマネと寝るの嫌じゃないですよ。安心しますし」
「そうか。なら良かった」
とはいってもベットと布団の距離だ。添い寝ほど近い距離にいる訳じゃない。
そうだ。一応<感覚>のLvを上げておくか。
警戒のためにあんまり寝るつもりはないけど、もし寝てしまった時に来ても起きられるように。
残りのスキルポイントは800か。
多少は残して起きたいし、2レベルくらい上げるか。
スキルポイント : 800→650
<感覚Lv1>→<感覚Lv3>
これくらいあれば問題ないだろう。
しばらくは学校は休む事になりそうだな。
バイトはどうするべきだろう。
運の悪いことに明日シフト入ってるんだよな。
柊と仲のいい店長を信用しても大丈夫か?いや、あまり信用しない方が良いだろう。スキルで操られてたらいつ攻撃を仕掛けてくるか分からない。
今井さんにシフト代わってもらうか……………。
その後、俺は今井さんに体調が良くない、という理由でシフトを代わって欲しいといえむねの連絡をいれた。
数分後、今井さんから良いよ、との連絡が返ってきていた。
サボりじゃないよね?とも送られてきていたが………………。
全くその通り過ぎて、罪悪感が湧いてきた。
一応今井さんには違うよ、と送った。
※
次の日、俺達は家から出ること無く過ごしていた。理由としては柊がどこにいるか分からないからだ。
向こうから攻めてきてくれた方が俺としてもやりやすい。
それに───俺の中で一つの仮説が浮かんでいたのもある。
柊は誰かの指示で動いてるんじゃないかというものだ。
一番有力なのは魔族だと考えている。
城に入れない魔族の代わりに人間をスパイとして潜入させていたとしたらどうだろうか?
もしそうだとしたら色々納得がいく。
柊が俺の自宅を知ったのは随分前の話だ。そのタイミングであれば、俺が学校に行っている間にリーシャを連れ去る事だって殺すことだって出来たはずだ。自身の得のためであったなら、そうしていただろう。
今まで狙ってこなかったということからして少なくとも柊一人で仕掛けてくることは無いんじゃないかと思っている。
そうして夜になった時、店長から電話がかかってきた。
「もしもし。どうしました?」
『琴音ちゃんから旬くんが体調崩したって聞いてね。心配して電話かけてみたんだけど、大丈夫そうで安心した』
そういえば体調不良で休んだんだった……………。
「ゴホゴホ。はい。大分マシになりました」
『それなら良かった。最近風邪が流行ってるみたいだから』
「そうなんですか?」
『ああ。美波も風邪で今日は休むって言ってたからな』
「柊さんも…………………」
絶対嘘だな。
念の為、俺に居場所を悟らせないようにしているのだろう。
一体何を企んでるんだ?
※
あれから二日が経過した。
特に変わった事はない。店長にやんわりと聞く限り、柊はずっと仕事を休んでいるようだ。
そんな簡単に休めるのか、と疑問に思うが、かなりこちらを警戒しているとみて良いだろう。
店長の演技の可能性もあるが、聞く限りそうは思えない。
おそらく異世界に行った時に仕掛けてくるつもりなんじゃないだろうか?
「アマネさん、冷蔵庫がもう空っぽです」
「そうか。じゃあなんか買いに行くか」
寄りにもよって夜ご飯の時に無くなってしまうとは………………。
俺達は外に出る準備を始めた。
おそらく意味は無いがリーシャには一応、黒ローブを着せた。
そうして俺達は外に出た。
「久しぶりに外に出ましたね」
「だな………………」
俺は周りを警戒しながら歩みを進める。
「……………やっぱり落ち着きませんね」
「そ、そうだな」
リーシャを不安にさせてしまったかな。
<感覚>があるとはいえ、気が抜けないのは事実だ。正直あまり余裕が無い。
人の命を守るというのがどれだけ難しい事なのか初めて知った。
そうして歩いき続け、人通りの少ない道に入った時、警官が俺達に話しかけてきた。
「君たち、夜遅くに外を歩いちゃいけないよ」
「すみません……………」
まだ20時だぞ。補導にしては早過ぎないか?それにこの警官からは嫌な気配を感じる。
「それともう一つ───貴様の隣に居るのは指名手配犯では無いか!」
そう言って警官は不気味な笑みを浮かべ、腰から銃を取りだした。
俺は警官の銃を持つ腕を掴み。上にあげた。
バン!
そんな銃声が夜道に響き渡る。
俺は<魔眼>で警官を見つめる。
───黒い魔力!?
「どうして魔族のお前がここに居るんだ!」
「クハハハハッ、もう私の正体に気づくとはやるではないか!ますます興味が湧いてくる!貴様の皮を剥いで私のものにしたい!」
狂気の瞳をうかべる魔族。
口調からして向こうにいたデビットと同じやつだろう。どうやらこの魔族は擬態することが出来るらしい。
だが今はそんなことどうだっていい。問題はどうしてこいつがこっちの世界にいるかだ。
「目的を忘れてるんじゃないわよ変態」
そう言って背後から近づいてくる一人の女───柊 美波だった。
隠すつもりも無いってことはここで決着をつける気だな。
「変態とは薄情だな。これは趣味の一環だ」
すると警官の顔が変化し始め、本性が顕になった。
青っぽい皮膚に長い二つの角。鋭い爪と筋肉質な体を持つ魔族。
「アマネさん……………この魔族。多分すごく強いです」
「ああ、それは俺もわかってる」
だって───魔力が向こうの世界にいた時と比べ物にならない程に強いのだから。
柊がメイドである以上、現実世界も安全とは言えない。
それに相手は作戦が失敗し、余裕もないだろう。どのタイミングでリーシャを狙ってくるか分からない。
落ち着くまではリーシャを一人にしない方が良いだろう。
それにリーシャの精神状態も心配だ。
まさかこんな近くに自分の命を狙っている人がいるなんて思いもいなかっただろうしな。
「リーシャ。コーヒー入れたけど飲むか?」
「………………はい。いただきます」
俺はコーヒーの入ったコップをリーシャに渡した。
「砂糖たっぷり入れたから甘くて美味しいぞ」
「ありがとうございます」と言いリーシャはコーヒーを飲んだ。
ほっ、と一息をつきリーシャは自身の気持ちを話し始めた。
「まさかシイラギさんが私を狙っていたとは驚きました。ずっとこちらの世界には敵がいないと思ってきていたのですごく怖いです………………」
「だよな。正直俺も信じられない。ずっとリーシャを苦しめていたやつがまさか俺の住む世界の人間だなんて想像もできなかった」
俺は異世界に行ける力を得た時、嬉しかったし、テンションも上がっていた。
でもそれは向こうの世界の人からしたら迷惑な事なのかもしれない。実際、別世界の人間がリーシャの人生を台無しにし、苦しめた。
女神の勝手とはいえ、俺達が存在しなければリーシャは苦しまずに済んだはずだ。
「なんだか申し訳ないな。俺の住む世界の人間がリーシャの人生を台無しにしてしまって」
「謝らないでください。少なくともアマネさんは何も悪くありませんから。それに私はアマネさんと会ってからの方が楽しいですし………………」
小さな笑みを浮かべそう言うリーシャ。
「ありがとう」
俺はリーシャの頭をくしゃくしゃに撫でた。
「こんな事になった以上、俺が絶対にリーシャを守るよ。だから安心してくれ」
「……………分かりました。じゃあ安心します」
そんな事を言って俺にもたれ掛かるリーシャ。
触れるリーシャの体は震えておらず本当に安心しているみたいだ。
「怖いなら我慢するなよ」
「怖いですけど、アマネさんが居なかった時よりは怖くありませんから。それに私が不安になってたら優しいアマネさんは安心出来ないでしょ」
そう言ってニコリと笑みを浮かべるリーシャ。
「やっぱりリーシャは強いな」
「アマネさんほどでは無いですけどね」
「…………いや、俺より強いよ」
俺はリーシャの前で強い振りをしているだけだから。
※
「事が落ち着くまでの間だけだから許してくれ」
「別に私、アマネと寝るの嫌じゃないですよ。安心しますし」
「そうか。なら良かった」
とはいってもベットと布団の距離だ。添い寝ほど近い距離にいる訳じゃない。
そうだ。一応<感覚>のLvを上げておくか。
警戒のためにあんまり寝るつもりはないけど、もし寝てしまった時に来ても起きられるように。
残りのスキルポイントは800か。
多少は残して起きたいし、2レベルくらい上げるか。
スキルポイント : 800→650
<感覚Lv1>→<感覚Lv3>
これくらいあれば問題ないだろう。
しばらくは学校は休む事になりそうだな。
バイトはどうするべきだろう。
運の悪いことに明日シフト入ってるんだよな。
柊と仲のいい店長を信用しても大丈夫か?いや、あまり信用しない方が良いだろう。スキルで操られてたらいつ攻撃を仕掛けてくるか分からない。
今井さんにシフト代わってもらうか……………。
その後、俺は今井さんに体調が良くない、という理由でシフトを代わって欲しいといえむねの連絡をいれた。
数分後、今井さんから良いよ、との連絡が返ってきていた。
サボりじゃないよね?とも送られてきていたが………………。
全くその通り過ぎて、罪悪感が湧いてきた。
一応今井さんには違うよ、と送った。
※
次の日、俺達は家から出ること無く過ごしていた。理由としては柊がどこにいるか分からないからだ。
向こうから攻めてきてくれた方が俺としてもやりやすい。
それに───俺の中で一つの仮説が浮かんでいたのもある。
柊は誰かの指示で動いてるんじゃないかというものだ。
一番有力なのは魔族だと考えている。
城に入れない魔族の代わりに人間をスパイとして潜入させていたとしたらどうだろうか?
もしそうだとしたら色々納得がいく。
柊が俺の自宅を知ったのは随分前の話だ。そのタイミングであれば、俺が学校に行っている間にリーシャを連れ去る事だって殺すことだって出来たはずだ。自身の得のためであったなら、そうしていただろう。
今まで狙ってこなかったということからして少なくとも柊一人で仕掛けてくることは無いんじゃないかと思っている。
そうして夜になった時、店長から電話がかかってきた。
「もしもし。どうしました?」
『琴音ちゃんから旬くんが体調崩したって聞いてね。心配して電話かけてみたんだけど、大丈夫そうで安心した』
そういえば体調不良で休んだんだった……………。
「ゴホゴホ。はい。大分マシになりました」
『それなら良かった。最近風邪が流行ってるみたいだから』
「そうなんですか?」
『ああ。美波も風邪で今日は休むって言ってたからな』
「柊さんも…………………」
絶対嘘だな。
念の為、俺に居場所を悟らせないようにしているのだろう。
一体何を企んでるんだ?
※
あれから二日が経過した。
特に変わった事はない。店長にやんわりと聞く限り、柊はずっと仕事を休んでいるようだ。
そんな簡単に休めるのか、と疑問に思うが、かなりこちらを警戒しているとみて良いだろう。
店長の演技の可能性もあるが、聞く限りそうは思えない。
おそらく異世界に行った時に仕掛けてくるつもりなんじゃないだろうか?
「アマネさん、冷蔵庫がもう空っぽです」
「そうか。じゃあなんか買いに行くか」
寄りにもよって夜ご飯の時に無くなってしまうとは………………。
俺達は外に出る準備を始めた。
おそらく意味は無いがリーシャには一応、黒ローブを着せた。
そうして俺達は外に出た。
「久しぶりに外に出ましたね」
「だな………………」
俺は周りを警戒しながら歩みを進める。
「……………やっぱり落ち着きませんね」
「そ、そうだな」
リーシャを不安にさせてしまったかな。
<感覚>があるとはいえ、気が抜けないのは事実だ。正直あまり余裕が無い。
人の命を守るというのがどれだけ難しい事なのか初めて知った。
そうして歩いき続け、人通りの少ない道に入った時、警官が俺達に話しかけてきた。
「君たち、夜遅くに外を歩いちゃいけないよ」
「すみません……………」
まだ20時だぞ。補導にしては早過ぎないか?それにこの警官からは嫌な気配を感じる。
「それともう一つ───貴様の隣に居るのは指名手配犯では無いか!」
そう言って警官は不気味な笑みを浮かべ、腰から銃を取りだした。
俺は警官の銃を持つ腕を掴み。上にあげた。
バン!
そんな銃声が夜道に響き渡る。
俺は<魔眼>で警官を見つめる。
───黒い魔力!?
「どうして魔族のお前がここに居るんだ!」
「クハハハハッ、もう私の正体に気づくとはやるではないか!ますます興味が湧いてくる!貴様の皮を剥いで私のものにしたい!」
狂気の瞳をうかべる魔族。
口調からして向こうにいたデビットと同じやつだろう。どうやらこの魔族は擬態することが出来るらしい。
だが今はそんなことどうだっていい。問題はどうしてこいつがこっちの世界にいるかだ。
「目的を忘れてるんじゃないわよ変態」
そう言って背後から近づいてくる一人の女───柊 美波だった。
隠すつもりも無いってことはここで決着をつける気だな。
「変態とは薄情だな。これは趣味の一環だ」
すると警官の顔が変化し始め、本性が顕になった。
青っぽい皮膚に長い二つの角。鋭い爪と筋肉質な体を持つ魔族。
「アマネさん……………この魔族。多分すごく強いです」
「ああ、それは俺もわかってる」
だって───魔力が向こうの世界にいた時と比べ物にならない程に強いのだから。
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