異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件

シュミ

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城へと招かれる

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 異世界から現実世界へ戻った時、時間は昼を過ぎていた。
 リーシャはカーテンから差し込んできた日の光で目を覚ました。

「おはよう………………」

 とは言っても本当はもう少し寝ていて欲しかった。

 なぜならお姫様抱っこをしているからだ。

「お、おはようございます………………」

 少し頬赤くしてそう言うリーシャ。

 この表情をされると、俺自身も照れてしまう。

 俺はソファーの上にリーシャを降ろした。

 さてと……………学校に行く気は完全に失せてしまった。
 それにこんなに汚れた制服で行ったらみんなから心配されるだろうしな。

 モンスターやら竜を切りまくったせいで血がべっとりついている。

「悪いリーシャ、先風呂入ってくるよ」

「分かりました」

 遠くから魔法を使ってたからかな?リーシャはあんまり汚れてない。

 制服を洗濯カゴに入れ、俺は風呂に入った。

 シェリアの言う通りなら近々俺は城に呼び出される事になる。
 明日からはしばらく異世界へ行って、様子を見る必要がありそうだな。

 それと、一つ良さそうなスキルを見つけた。
 50ポイントで取れるスキル、<色素変化>、おそらくメイドが使っているスキルだろう。
 これで髪の色を変える事が出来る。

 こんなスキルがあるならもっと早く使っておくべきだったな………………。

 これをあのローブに上書きすれば<認識阻害>が無くても多分バレないだろう。

 いや、でも王子とは面識があるわけだし、微妙なところだよなぁ。

 一応メガネとかかけさせた方が良いかもな。

 風呂から上がると、そこには眠っているリーシャの姿があった。

 リーシャにはまだ城に行ける事が確定したというのを伝えていない。
 でも行ける可能性があるということは理解している。
 でも思ったより落ち着いてるんだな。

 俺がいたら大丈夫ってめちゃくちゃ信用されているからそれもあるか。

 俺自身、信用してくれるのは嬉しいとは思うが、やはりプレッシャーというものを感じてしまう。
 でもリーシャが怯えてたり、不安になっているよりはずっと良いと思っている。

 俺がリーシャの寝顔を見ていると、不意に彼女が目を開けた。

 その瞳は俺を真っ直ぐに見つめてきていた。

「えっと……………二度目のおはよう」

 そう言うとリーシャはバッと起き上がった。

「すみません。また寝てしまって」

「疲れてるだろ。寝てていいよ。服だけは着替えた方が良いかもだけど」

 泥で汚れてるし……………。

「ソ、ソファーが……………汚してしまってすみません……………」

「全部許すから着替えてくるか、風呂入ってきな」

 無意識に俺はリーシャを撫でていた。

「ア、アマネさん……………急にどうしたんですか……………?」

 恥ずかしそうに言うリーシャ。

「っ!?あっ、ごめん!!」

 俺は咄嗟に手をどける。

「いえ、別に嫌では無いですから…………。むしろ嬉しいかったです……………」

「そっか…………なら良かったよ」

 リーシャは相手から愛された事が少ない。多分親から頭を撫でられた事も無いんだろうな。

 それから俺はソファーでしばらくくつろいでいると、いつの間にか眠ってしまっていた。

 目を覚ましたと、もうバイトに行かなきゃ行けない時間になっていた。

 まずい───。

 俺は家を飛び出し、コンビニへと走る。

 服を着替え、レジにいる店長の方へと向かった。

「遅かったね旬くん」

 どこか圧のある口調でそう言う藤崎さん。

「すみません……………ってメガネ…………?」

 あれ?藤崎さんってメガネかけてたっけ……………。
 俺の頭の中で嫌な想像が浮かんだ。

 いや、ないないない。さすがにそれは無いでしょ。

「ん?どうした旬くん」

「あっ、いえ。何でもないです」

 あまり考え過ぎないでおこう。どうせ城に行けば分かる事だ。

「あれ?天音くん。今日学校来てなかったよね?」

「い、今井さん……………」

 マジか。今日シフト被ってたんだ。
 同じクラスだから誤魔化せない。

「学校サボってもバイトは来るんだぁ」

「いや、色々事情があって……………」

「ふ~ん。事情ねぇ…………」

 少し圧のある口調でそう言う今井さん。

 何もいいわけが思いつかなかった俺はサボっていた事にし、謝った。

 そうしてバイトが終わり、店長と店を出た。

「あの店長。坂上 慎吾さんってお知り合いですか?今日向こうの世界でたまたま会って」

「慎吾は私や琴音と同じだよ。彼は捕まえた魔法使い達を結界に閉じ込める役割を担ってるんだ。普通の牢屋はなんの意味のなさないからね」

 確かに爆発で一撃だもんな。

「君が捕まえた魔法使いが暴れたせいで色々大変だったんだ。家にも帰れなかった」

 なるほど、だからメガネなのか。
 コンタクトをつける暇もなかったなんて大変だな。

「そんな時に限って琴音は連絡つかないし、何やってるんだか……………」

 連絡がつかないってまさか───。

 いやいや、疑いすぎだ。
 ほんと周りにいる人全員が敵に見えてしまう。

 城に行くまでこの事は考えないでおこう。


 ※


 そうして三日が経過した。

 リーシャにはジェリアから聞いた未来を話し、城に行くことが出来ると伝えた。

 彼女は確定した未来を聞いてからたまにぼぉーと何かを考えている時間が増えていた。
 きっと不安や希望とか色んな感情が混ざって整理しきれないのだろう。

 異世界に様子を見に行ってもどこかソワソワしており、何も無かった時は安心したようにため息をつき、本当に来るのかと不安そうな表情を浮かべていた。

「今日は来るといいな」

「ですね……………」

「やっぱ不安だよな」

「そうですね……………不安です」

 こうもはっきりと言った事は今までにあっただろうか。
 いつもなら心配をかけまいと少し濁すんだが……………。

「大丈夫だ。何とかなるさ」

 僕はリーシャの頭をくしゃくしゃに撫でた。

「フフッ、何とかなるって……………。確かに何とかはなりますよね」

「ああ、何とかなるさ!」

 俺はそうリーシャを励まし、異世界に向かった。

 正直言うと俺自身ここ三日、生きた心地がしないくらい緊張している。

 ギルドのドアを開けるのを躊躇う自分がどこかにおり、いつも以上にドアが重く感じた。

 中に入ると受付嬢の一人が俺の方に走ってきた。

 ついに来たんだと俺は理解した。

「アマネ様これを───」

 そう言って手紙を渡してきた。

 もちろん王子からのものだ。

「竜討伐のお礼がしたいとの事です。もうしばらくすると迎えの竜車が来ますのでしばらくの間ギルドでお待ちください」

 そう言われ、しばらく待っていると見た目通り執事の男が俺たちに話しかけてきた。

「アマネ様ですね。どうぞこちらへ」

 そう言われ竜車に案内された。

 そうして竜車に乗ること数時間。
 やっと城に着いた。

 ここまで来ると転移魔法とか用意してもらいたかったと思う。
 緊張で体力が持っていかれたせいで動くのが苦痛に思えた。

 それでも嫌とは言えないので大人しく竜車を降りた。

「なんか凄いな。本物の城なんてはじめてみたぞ」

「アマネさんが初めて見るのなんてあったんですね」

 少々驚いたように言うリーシャ。

 メイドの姿が無いかと周囲を確認しながら俺たちは執事に付いて行った。

 オシャレな廊下を進み、ある一室の前で執事は止まった。

 ここまであのメイドらしき人物は見ていない。

 ドアの両サイドには兵士が立っており、何もしてないことは無いが凄い殺気のような圧を向けてきた。

 そのせいでさらに緊張が増した。
 リーシャの事がバレたんじゃないかと内心焦っていた。

 そうしてドアが開かれ、中に通された。

 そこには高そうな椅子に座る王子の姿があった。

「そなたが竜を討伐した冒険者か」

「はい。天音 旬と申します」

 俺はそう言った後、リーシャの見よう見まねで頭を下げた。
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