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取り引き

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 学校が終わり、俺はリーシャと共に店を回っていた。

「リーシャどういうのが売れると思う?」

「そうですね。紙は絶対に売れると思います。いくらあっても困りませんから」

「そうか」

 リーシャは棚にあるペンなどを見て、何か思ったのか俺の方に視線を向けてきた。

「あのアマネさん。この世界から向こうの世界に来る人って他にもいるんですか?」

「ああ、女神はそう言ってたな」

「なるほど……………」

 リーシャは何か納得したように頷いた。

「どうかしたのか?」

「いえ、大したことじゃないんですが、向こうの世界には一定数見た事も無い物を売りに来る人達がいるんです。例えばこのボールペン何かは一度向こうの世界でも見た事あります。きっとその人達が持ってきたのでしょう」

「俺みたいなやつが他にもいるわけか」

「はい。その人達は皆黒髪でどこから来たか分からない少し怪しい人達なので黒の商人と呼ばれていました」

 なら、カップ麺売ったやつとか居そうだな。
 でもリーシャはだいたい初めて見た、って感じの反応をしてたよな。
 王家に近いから怪しい商人の物は入って来なかったのか?その可能性は有り得るな。
 まず向こうに行ける人がそこまで多くないし、その中で商人になる人はもっと少ないだろう。
 知らなくてもおかしくないか。

 そうしてリーシャと財布と悩んだ末、購入したのは以下の通りだ。

 コピー用紙、千枚

 ボールペン、百本

 これだけ買っても3000円以下で済んだ。
 ホームセンターと100均はこれからもお世話になりそうだ。

 それにどれだけ重たくても保管庫に預ければ良いので無茶できるのもありがたい。


 ※


 自宅に帰り、早速異世界に向かった。

 リーシャの案内でデニムにあるカール商会という場所に来た。

「どういう訳か分かりませんがこの商会に黒の商人が集まりやすいと言う噂を聞いたことがあるんです。どうしてか分かりますか?」

「それは……………女神のせいだな」

 女神は魔王を倒させるためにこっちに送ってるから、冒険者の街であるデニムには多く集まってるのだろう。

「じゃあ行くか」

「そうですね」

 俺はドアに手をかける。
 開ける前に一つ気になり、リーシャの方に振り向く。

「……………なぁ、顔隠してるリーシャと入っても大丈夫なのか?さすがに怪しすぎて追い出されたりするんじゃ」

「そこは問題ないと思いますよ。まずこの街自体、怪しい人ばっかりですから」

「何それ怖い………」

 でも確かに冒険者なんて怪しくてもなれそうだもんな。

 俺はリーシャの言葉を信じて中に入った。

 すると髭ズラのおじさん──カールさんが出てき、応接室のような所へ通された。
 リーシャの事は全く触れてこなかった。

 俺は挨拶も早々にコピー用紙とペンを机に出した。

「(やはり黒の商人でしたか。久々に会いましたね)」

 カールさんは小声でそんなことを言った。

 久々に見たって事はやっぱりデニムに同じような奴がいるわけか。

「紙にボールペン…………良いでしょう。買い取らせて頂きます」

「ありがとうございます」

 取り引きは思ったより直ぐに成立した。
 100均に売っているような安物でもこっちの世界の物よりは質がいいのだろう。

 横に座っているリーシャが俺の方にドヤ顔を見せてき、親指を立てた。

 俺も小さく親指を立てる。

「アマネ様、50万ラーツでどうでしょうか?」

 5、50万───。
 だいたいバイト一年分位のお金だぞ。

「は、はい。も、もちろんです」

 3000円が50万円になったという夢のような状況に俺は正直震えが止まらなかった。

 何かすごい罪悪感が………………。

「アマネ様の住む国には他にもこういった便利な物があるのですか?」

「そうですね……………こちらに無いものでしたら他にもあると思いますね」

「そうですか………やはり不思議ですね。アマネ様達のような人を我々は黒の商人と呼んでいるのですが、持ってきて下さったものは必ずと言っていいほど便利な物で人気な商品になるのです。一体どうすればこんな物を作れるのでしょうか………………」

「それは…………秘密にさせてもらいます」

 俺もそれは知らん。

「もし他にも何かあるのでしたらお願いしたいのですが……………」

「そういう事ならまた何か売りに来させていただきます」

「ありがとうございます」

 俺はカールさんにまた売りに来ることを約束し、商会を出た。

 換金可能ポイント : 505190

 何か夢みたいだな………………。

 金欠がこんなに簡単に解消されるとは。

 だがこんなに貰えるなら、真面目に冒険者する人少なそうだな。
 それを防ぐための強制召喚でもあるわけか。

「リーシャ今夜はパーティだ」

「それは楽しそうですね!」
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