異世界に行けるようになったんだが自宅に令嬢を持ち帰ってしまった件

シュミ

文字の大きさ
上 下
6 / 40

討伐ミッション

しおりを挟む
 俺は状況を判断するため現実世界に帰ってきた。

 俺が<召喚・帰還>を使えばリーシャも強制的に付いてくることになる。これは大問題だ。
 指名手配にされている彼女を向こうの世界に持っていくのはかなりのリスクがある。
 こちらの世界に戻ろうにも<帰還>が即発動のスキルでない以上囲まれたらおしまいだ──いや、最悪殺されなければどこからでも彼女をこっちに戻せるか。
 でもこれはあくまで有効範囲が無かったらの話だ、あまり過信しすぎない方がいいか。

 もし有効範囲がなければ彼女が向こうの世界に帰りたくなっても帰れないという問題が生じるな。

 どっちに転んでもデメリットが付いてくるわけか………………。

「リーシャ大丈夫か?」

「は、はい……………少しびっくりしてしまっただけなので……………」

 突然向こうの世界に飛ばされたリーシャは酷く怯えていた。
 もしかしたら俺に捨てられるんじゃないか、と思っていたのかもしれない。

 シェリアさん、これはどうにかできないんですか?

『解決策は今のところありません。術者本人に働くスキルに別の人が巻き込まれるなんて聞いた事ありませんから』

 そうですか………………。
 なら、強制的に向こうの世界に召喚するのだけやめてもらうことは出来ないですか?

『すみませんが決まりのですので私個人の判断で変えることは出来ません』

 ………………そうですか。

 女神も好き放題できる訳じゃないのか。

 これじゃあ異世界に行くのが相当危険になったな、でもずっと行かない訳にもいかないんだよなぁ。

「リーシャ、少しいいか?」

「はい」

「今、俺とリーシャはお互い同じ世界でしか居られない状態になってる。これを解決する策は残念ながら無いんだ。それにさっきも言ったけどこっちの世界にずっと居ることも出来ないんだ」

「───なら、連れてってもらって構いませんよ」

「そうか、悪いな」

「いえ、アマネさんが謝る必要はありません。それにあの時助けて貰っていなかったらとっくに捕まっていましたから。バレた時はその時です」

 覚悟を決めたような強い眼差しを向けてくるリーシャ。

 こうなった以上、俺はできる限り彼女を守るつもりだ。
 一つ救いがあるとすれば、彼女の外見を隠すのが容易だというところだろう。サングラスやらパーカーやら使えば髪も顔も分からなくなる。

 ただの学生である俺に最適解を出せる程の頭は無い。
 だから彼女を守るためには自分を強くする事しか思い浮かばないのだ。
 俺はこれから討伐ミッションだけを受け、速攻レベルを上げようと思う。

危なくなればすぐに<帰還>で戻れば多分大丈夫だろう。

「じゃあリーシャ、君にこれをさずけよう」

 俺は去年の夏におふざけで買ったサングラスをリーシャに渡した。

 リーシャはそのサングラスをかける。

「これすごく見えにくいですね」

「でもこれを使えばそうそうバレることは無いと思う」

 現にあの可愛らしい顔がサングラスによって分からなくなっているのだから。

 外見を隠す魔法とかあったら便利なんだけどなぁ。

 シェリアさんなんか無いですか?

『<認識阻害>というスキルは存在しますよ。ただスキル単体で使っても魔力を大量消費するのみで使い物になりませんね』

 マジか……………。

 とりあえずはフードとサングラスで隠す事にするか。

「よし、じゃあリーシャ。一度向こうの世界に行くぞ。バレないかだけでも確かめたい」

「わかりました」

 俺は「召喚」と口にする。
 いつものように10のカウントが始まった。

 するとリーシャが俺の手を強く握ってきた。
 その手は少し震えていた。

「大丈夫か?無理はしなくていいんだぞ」

「いえ、少し緊張してますが大丈夫です。それに逃げ腰のままだと覚悟が薄れてしまいそうなので」

「そっか……………。なぁ、リーシャはこのまま隠れて過ごしたいのか?それとも無実を証明したのか?」

「そうですね。出来ることなら無実を証明したいですね………………」

「そうか。分かった」

 10のカウントが終わり、異世界に召喚された。

 その瞬間、道行く人達が俺たちに視線を向けてきた。

「アマネさん、すごく見られてますけどこれバレてませんか?」

 俺の背中で顔を覆うリーシャ。

「いや、多分俺達が着てる服が変わってるから見られてるだけだと思う」

「そうですか……………」

 小さくため息を着くリーシャ。

「じゃあ行くぞ」

 俺達は冒険者ギルドに入った。

 周りの冒険者の反応を見るに、誰もリーシャには気づいてないようだ。

 ゴブリン×5の討伐。
 スライム×5の討伐。
 薬草×5の採取。

 報酬はゴブリンの1000ラーツが高いな。
 D級ミッションだし、経験値もそこそこありそうだ。

 俺はゴブリン討伐ミッションの紙を取り、受付嬢に渡した。

「これを受けたいんですが」

「ゴブリン討伐ですね。了解しました」

 ミッションを受ける事ができ、俺達は森へと向かった。

「そういえばリーシャって戦えるの?」

「はい、少しは魔法が使えますので」

「そうか」

 自衛が出来るなら、安心だな。

 草むらを抜けた先に五体のゴブリンが群れをなしていた。

 緑色の肌と小さい子供程の大きさのゴブリン。
 力はそこまで強くないらしいが武装しているので気は抜けない。

 俺の前にいる五体は剣持ちが二体、棍棒持ちが二体、盾持ちが一体だ。

「じゃあ行くぞ」

「はい!」

 俺は草むらを飛び出し、背後から剣持ちのゴブリンに剣を振るった。

 もう一体倒したかったが他のゴブリンが直ぐに反応し、戦闘態勢に入っていた。

 棍棒持ちの一体が俺に襲いかかってくる。

火炎ブレイズ

 火魔法の一つであり、直線上に火の柱を飛ばす。

 それを食らったゴブリンは焼け焦げた。

「ギェェェェッ!!」

 剣持ちの一匹がいつの間にか俺の背後を取っていた。

 まずい───。

氷の塊アイスショット

「ぐぇぇぇぇ……………」

 ゴブリンの胸から先の尖った氷の塊が貫通してきた。

「リーシャ、ナイス!」

 俺はそう言って親指を立てた。

 ドヤ顔を見せるリーシャ。

 三体殺られたことで後退りをし始めるゴブリン。

「悪いが逃がす訳にはいかないんだ」

 俺は一気に二体のゴブリンへと近づく。

 ゴブリンが棍棒を振るう。
 俺はそれを避けた後、剣を振るう。

 棍棒持ちを倒した後、盾持ちのゴブリンへと近づき蹴りを入れ、盾を落とさせた。

 その後、剣を振るい倒した。

「これで終わりだな」

 Lv2→Lv3

 名前 : 天音 旬
 Lv3
 職業 : 無し
 HP : 120
 MP : 115/120
 筋力 : 58(+3)
 耐久 : 60(+2)
 速度 : 57(+3)
 固有スキル : <召喚・帰還>
                   <言語理解>
                   <複合>
 スキル : <闇魔法Lv1>
             <火魔法Lv1>
 スキルポイント : 200
 換金可能ポイント : 1190

 レベルも上がったか。

「アマネさん、右───!」

 突然、そう叫ぶリーシャ。

「グァァァァ!!」

 さっきよりもデカいゴブリンが巨大な棍棒を振り下ろしてきていた。

 くっ、避けられないか───。

 俺は剣でその棍棒を受け止める。

 俺は無理やり剣を起こし、棍棒を払い除け、後ろに下がる。

 なんだコイツ……………ミッションには含まれてないぞ。

「大丈夫ですか?」

 草むらからリーシャが走ってくる。

「ああ、大丈夫だ」

「アマネさん、ホブゴブリンです。一体でD級の上位くらいの強さがあります」

「D級か…………」

 大きさは太った成人男性ぐらい。
 棍棒を受け止めた時にわかったがそこそこ攻撃が重たいし、速い。

「私も手伝います」

「危なくなったら頼むよ」

 ずっと試してなかった固有スキル<複合>を使ってみるか。
しおりを挟む
感想 9

あなたにおすすめの小説

第5皇子に転生した俺は前世の医学と知識や魔法を使い世界を変える。

黒ハット
ファンタジー
 前世は予防医学の専門の医者が飛行機事故で結婚したばかりの妻と亡くなり異世界の帝国の皇帝の5番目の子供に転生する。子供の生存率50%という文明の遅れた世界に転生した主人公が前世の知識と魔法を使い乱世の世界を戦いながら前世の奥さんと巡り合い世界を変えて行く。  

貧民街の元娼婦に育てられた孤児は前世の記憶が蘇り底辺から成り上がり世界の救世主になる。

黒ハット
ファンタジー
【完結しました】捨て子だった主人公は、元貴族の側室で騙せれて娼婦だった女性に拾われて最下層階級の貧民街で育てられるが、13歳の時に崖から川に突き落とされて意識が無くなり。気が付くと前世の日本で物理学の研究生だった記憶が蘇り、周りの人たちの善意で底辺から抜け出し成り上がって世界の救世主と呼ばれる様になる。 この作品は小説書き始めた初期の作品で内容と書き方をリメイクして再投稿を始めました。感想、応援よろしくお願いいたします。

巻き込まれ召喚されたおっさん、無能だと追放され冒険者として無双する

高鉢 健太
ファンタジー
とある県立高校の最寄り駅で勇者召喚に巻き込まれたおっさん。 手違い鑑定でスキルを間違われて無能と追放されたが冒険者ギルドで間違いに気付いて無双を始める。

【完結】実はチートの転生者、無能と言われるのに飽きて実力を解放する

エース皇命
ファンタジー
【HOTランキング1位獲得作品!!】  最強スキル『適応』を与えられた転生者ジャック・ストロングは16歳。  戦士になり、王国に潜む悪を倒すためのユピテル英才学園に入学して3ヶ月がたっていた。  目立たないために実力を隠していたジャックだが、学園長から次のテストで成績がよくないと退学だと脅され、ついに実力を解放していく。  ジャックのライバルとなる個性豊かな生徒たち、実力ある先生たちにも注目!!  彼らのハチャメチャ学園生活から目が離せない!! ※小説家になろう、カクヨム、エブリスタでも投稿中

フリーター転生。公爵家に転生したけど継承権が低い件。精霊の加護(チート)を得たので、努力と知識と根性で公爵家当主へと成り上がる 

SOU 5月17日10作同時連載開始❗❗
ファンタジー
400倍の魔力ってマジ!?魔力が多すぎて範囲攻撃魔法だけとか縛りでしょ 25歳子供部屋在住。彼女なし=年齢のフリーター・バンドマンはある日理不尽にも、バンドリーダでボーカルからクビを宣告され、反論を述べる間もなくガッチャ切りされそんな失意のか、理不尽に言い渡された残業中に急死してしまう。  目が覚めると俺は広大な領地を有するノーフォーク公爵家の長男の息子ユーサー・フォン・ハワードに転生していた。 ユーサーは一度目の人生の漠然とした目標であった『有名になりたい』他人から好かれ、知られる何者かになりたかった。と言う目標を再認識し、二度目の生を悔いの無いように、全力で生きる事を誓うのであった。 しかし、俺が公爵になるためには父の兄弟である次男、三男の息子。つまり従妹達と争う事になってしまい。 ユーサーは富国強兵を掲げ、先ずは小さな事から始めるのであった。 そんな主人公のゆったり成長期!!

明日を信じて生きていきます~異世界に転生した俺はのんびり暮らします~

みなと劉
ファンタジー
異世界に転生した主人公は、新たな冒険が待っていることを知りながらも、のんびりとした暮らしを選ぶことに決めました。 彼は明日を信じて、異世界での新しい生活を楽しむ決意を固めました。 最初の仲間たちと共に、未知の地での平穏な冒険が繰り広げられます。 一種の童話感覚で物語は語られます。 童話小説を読む感じで一読頂けると幸いです

異世界転移しましたが、面倒事に巻き込まれそうな予感しかしないので早めに逃げ出す事にします。

sou
ファンタジー
蕪木高等学校3年1組の生徒40名は突如眩い光に包まれた。 目が覚めた彼らは異世界転移し見知らぬ国、リスランダ王国へと転移していたのだ。 「勇者たちよ…この国を救ってくれ…えっ!一人いなくなった?どこに?」 これは、面倒事を予感した主人公がいち早く逃げ出し、平穏な暮らしを目指す物語。 なろう、カクヨムにも同作を投稿しています。

爺さんの異世界建国記 〜荒廃した異世界を農業で立て直していきます。いきなりの土作りはうまくいかない。

秋田ノ介
ファンタジー
  88歳の爺さんが、異世界に転生して農業の知識を駆使して建国をする話。  異世界では、戦乱が絶えず、土地が荒廃し、人心は乱れ、国家が崩壊している。そんな世界を司る女神から、世界を救うように懇願される。爺は、耳が遠いせいで、村長になって村人が飢えないようにしてほしいと頼まれたと勘違いする。  その願いを叶えるために、農業で村人の飢えをなくすことを目標にして、生活していく。それが、次第に輪が広がり世界の人々に希望を与え始める。戦争で成人男性が極端に少ない世界で、13歳のロッシュという若者に転生した爺の周りには、ハーレムが出来上がっていく。徐々にその地に、流浪をしている者たちや様々な種族の者たちが様々な思惑で集まり、国家が出来上がっていく。  飢えを乗り越えた『村』は、王国から狙われることとなる。強大な軍事力を誇る王国に対して、ロッシュは知恵と知識、そして魔法や仲間たちと協力して、その脅威を乗り越えていくオリジナル戦記。  完結済み。全400話、150万字程度程度になります。元は他のサイトで掲載していたものを加筆修正して、掲載します。一日、少なくとも二話は更新します。  

処理中です...