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異世界に行けるようになった

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 俺の名前は天音 旬あまねしゅん、17歳、高二だ。
 高校進学を機に一人暮らしを始めた。
 信じられないかもしれないがそんな俺の部屋に数日前から異世界のご令嬢が住んでいる。

「天音さん!これは何ですか?中で人が喋ってますよ!」

「これはテレビっていうんだ。それと中に人は入ってないよ」

「そうなんですか!?」

 癖のない銀色の髪を背中の中ほどまで伸ばし、透き通るような大きな瞳、肌荒れを知らない滑らかな肌。
 まるでお人形さんかと思うほどの美しさを誇っている。
 そんな彼女の名前はリーシャ・ミリセント。
 紆余曲折あり、彼女は俺の自宅で過ごす事となった。

 俺は常々思う事がある。

 どうしてこうなった?と。


 ※


 遡る事、数日前。

 俺は友達との会話を早々に切り上げ帰路に着いていた。

 すると突然───足元すらまともに見えないほどの濃い霧が立ち込め初め、俺は途方に暮れた。
 スマホのマップを使って帰ろうにも画面には圏外の文字。

 どうなってんだ?

 俺は頭を抱えた。

 そんな時だ。
 前から黒い人影が見え、明らかに普通じゃない女性が姿を現した。

 薄い水色の髪、蒼い瞳、滑らかな肌。
 容姿端麗なその女性は薄手のローブを羽織っていた。
 これでもアニメや漫画はよく見ている方だ。
 すぐにピンと来た───コイツは女神だと。

「突然呼び出してすみません。私は女神シェリアと申します」

 女神!実物も可愛いんだなぁ~。

「アマネ・シュン様。あなたに魔王を討伐してもらいたいのです!」

「魔王………もしかして異世界召喚ってやつですか!」

 俺は目を輝かせてそう質問した。

「えっ…………ま、まぁ部分的にはそうですが少し違います。一応元の世界には戻れるように配慮させてもらっています」

 反論もせず、どちらかというと大歓迎という姿勢の俺にドン引きしつつもシェリアはそう言った。

 突然の申し出にもかかわらず俺は冷静だった。というか心が踊っていた。

「優しいんですね。イメージだと召喚してさよなら、だと思ってたので」

「確かにその方が楽なんですけどね……………でも送った人のほとんどが向こうの世界に馴染めなかったり、帰らせてくれ、と泣き叫び始めたりと使い物にならないことが多く、元の世界にも戻れるようにしたんです」

「女神様も大変なんですね」

「はい……………戻せるようにしたらしたで自身のスキルを使って元の世界で悪事を働く者が出たりと正直どうすべきか迷ってるんですよね。でも今のやり方の方が続けられている人たちが増えたのも事実なので……………」

「えっ?そんなに送ってるんですか?」

「はい、召喚したもの達のほとんどは強力な戦力になりやすいので、数百人……あれ数千人だったかな?そのくらい送ってるんですけど、みなさん魔物に怖気づいたり、悪事を働いて捕まったり、死んだり、と中々魔王まで辿り着く者が現れないんですよね」

 結構送ってるじゃん。というか人数覚えてないってどうなの?とツッコミたくなるところは満載だが女神も大変なんだろうということで済ませた。

「あっ!すみません関係ない話ばかり……………」

「いえいえ、不満を溜め込むのはいい事では無いですから。たまには愚痴を漏らすのも良いと思いますよ」

「ありがとうございます」

 シェリアは申し訳なさそうな表情を見せながら頭を下げた。

「気を取り直して、天音様の今後について説明させていただきます。まず、天音様にはスキルが数種類与えられます、それは向こうの世界に行ってからご確認ください。向こうの世界は魔族と戦争をしている事もあり、魔物の動きも活発化しています、十分注意してください。最後に元の世界に戻るのも向こうの世界に行くのも自由となります、制限はありません……ただ、あまりにもサボっていましたら強制的に向こうの世界に送らせて頂くことがあります。大まかな説明は以上ですが何か質問はありますか?」

「えっと……………向こうの言語は大丈夫な感じですか?」

「それは心配しなくて大丈夫です。<召喚>による効果でアマネ様には<言語理解>が自動的に着くようになっています」

「そうですか、ありがとうございます」

 異世界かぁ。まさかこの俺が体験するとは思わなかったな。

「あっ、それともう一つ<換金システム>といわれるものも付いてきます。向こうの硬貨を元の世界の硬貨に変換するスキルとなってますので良く考えてお使いください。詳細はこちらです」

 そう言ってシェリアはお金の単位や価値を示したボードを見せてきた。

 金貨一枚→10,000ラーツ→10,000円
 銀貨一枚→1,000ラーツ→1,000円
 銅貨一枚→100ラーツ→100円
 鉄貨一枚→10ラーツ→10円

 なるほど…………価値自体は現実世界と変わらないわけか、金貨一枚で大金持ち!は実現しないというわけだ。
 でも場合によってはバイトよりも稼げる可能性があるわけか。夢が膨らむなぁ。

「一度元の世界の硬貨に換金してしまいますと戻す事は出来ないので注意してください」

「わかりました」

「それではとりあえず、最低限のお金をお渡ししますので一度、向こうの世界を体験してみてください。質問はいつでも受け付けてますので、困った事がありましたらお聞きください」

「わかりました」

「では行ってらっしゃいませ」

 すると視界が真っ白な光に包まれ、シェリアは完全に見えなくなった。

 次に視界が開けた時、そこは現実世界ではなかった。

 街並みは定番の中世ヨーロッパ風。
 整備された道には恐竜のようなトカゲのような生物が馬車?のようなものを引いていた。
 道行く彼らの髪色は俺のような黒色などおらず、金髪や茶髪の他に赤、青、緑とバリエーション豊かだ。

 どうやら本当に異世界に来たらしい。

『ここはビルヘイツ王国内にある冒険者の街デニムです』

 シェリアの声が脳内に響いた。

【固有スキル】
 <召喚・帰還>を獲得しました。
 <言語理解>を獲得しました。
 <換金システム>を獲得しました。
 <複合>を獲得しました。
【スキル】
 <闇魔法Lv1>を獲得しました。
 <火魔法Lv1>を獲得しました。

 俺の視界にゲームのログのようなものが次々に表示された。

 名前 : 天音 旬
 Lv1
 職業 : 無し
 HP : 100
 MP : 100
 筋力 : 53
 耐久 : 55
 速度 : 52
 固有スキル : <召喚・帰還>
                   <言語理解>
                   <複合>
 スキル : <闇魔法Lv1>
             <火魔法Lv1>
 スキルポイント : 0
 換金可能ポイント : 1000

『分からない部分は説明欄がありますのでご確認ください』

 俺は言われた通りに説明欄を開いた。

 <召喚・帰還> : こちらの世界と元の世界を行き来できるようになる。

 <言語理解> : 全ての言語を理解出来き、読み書きする事ができるようになる。

 <換金システム> : こちらの世界の硬貨を元の世界の硬貨に変換できるようになる。手持ちの金額が換金可能ポイントとして表示される。

 <複合> : 別のスキル同士を合わせる事が出来るようになる。掛け合わせるスキルの個数に制限は無い。

 <闇魔法> : 闇を司る魔法を使える。Lvが上がることで使える幅が広がる。

 <火魔法> : 火を司る魔法を使える。Lvが上がることで使える幅が広がる。

 <スキルポイント> : 自身のレベルが上がると得られるポイント。スキルのLvを上げたり、新たなスキルを得ることに使用出来る。

「これは強いのか?基準が分からんな」

『そこそこ強いですかね。Lv1でスキルを二つ持つことは珍しい事ですし、身体能力も平均よりかなり高いです。Lv1なら筋力10でもおかしくないですから。まぁ別世界から来た人ならこれくらいの性能は普通ですね。ただアマネ様の持つ<闇魔法>は通常、魔族が使う魔法ですし、人間にとっては希少で扱いが少々難しいところがあります。固有スキルの<複合>はまだ前例がないので分かりませんが、もしかしら化ける可能性もあります』

「そうなんですか」

 とりあえずは使ってみないと分からない感じだな。

「それで、これからどうしたらいいですか?」

『それではまず冒険者ギルドの方に向かい、加入の申請を行いましょう』

「わかりました」

 冒険者かぁ~楽しみだな………………。
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