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第4章 世界戦争
52話 『戦え』!!
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「≪シルバーブリザード≫」
一歩先も見えないような猛吹雪が発生する。凍えるような雪の嵐と急激に下がった気温でモンスターの体温は失われる。さらに視界が悪くモンスター同士の衝突も絶えない。
「≪ドラゴンサンダーレイン≫」
追い打ちをかけるように、モンスターに向かって雷が雨のように次々と落ちる。
リュウ君と華蓮ちゃんの息の合った攻撃で物凄い勢いでモンスターが倒されていく。これではもう私達の出番は無いかもしれない。そう思う程にモニターの向こうの戦いは一方的だった。
ここは≪緊急避難≫のスキルで転移した場所。『ガーディアン』が所有する施設で、戦闘で傷を負った人達を治せる様に診療所が併設されている。戦闘で怪我を負った人達の苦痛の声、それと負傷者を治そうと奔走する医師の声が忙しなく聞こえる。でも殆どの人はそれとは違った声を上げている。
「クッソ!なんだよあれ!」
「もう終わりだ」
絶望の声だった。
「えっ?なんで」
その絶望に疑問を覚える。だってリュウ君と華蓮ちゃんの方が圧倒的に優勢な筈なのに。
「皆あの巨大なドラゴンの圧倒的な強さに慄いている」
私の疑問に答えてくれたのは茜さんだった。
「でも今リュウ君と華蓮ちゃんが……」
「もう一度、テレビを良く見て」
茜さんはモニターを指差す。
だけど映し出されるのは沢山のモンスター相手に戦うリュウ君と華蓮ちゃん。戦いは圧倒的に優位な筈。
「でも徐々に押されてる。数が多すぎて2人だけじゃ体力が持たない」
「そんな……」
「このまま持久戦になると2人が危ない。それに他のモンスターも相手してる中であの巨大なドラゴンを2人で倒すのは難しい」
「なら今すぐ行かないと」
「でもここからだとかなりの距離があるし、私達だけ行っても数が足りない」
「ッ」
周りを見渡せば殆どの人が顔を俯かせ力無く座っている。どうにかして皆を説得するしかないけど……。
「皆さん、何をしているのですか。戦いはまだ終わっていませんよ」
何を言えば良いか分からず焦っていると部屋全体に行き渡るような声が、でも決して怒鳴り散らすのとは違う声が聞こえてくる。その声の主は吹き抜けの2階部分に立っていたおじいさんだった。
「誰だっけ?」
「何言ってんだよ。ほら、古木さん……だろ」
「あー、あの……」
「確か相談役?的な」
私は初めて見る人だった。けど他の人達もそこまで詳しくないのかひそひそと話始める。
「マ、古木……。設定適当すぎでしょ」
茜さんはボソッと呟き、おじいさんを哀れむような目で見ていた。
「コホン。兎に角、モニターを見てください。あの2人はまだ戦っています。数の差は歴然なのに諦めていません。貴方達が戻ってくると信じているんです。だから……、グズグズと落ち込んでないで『戦え』!!」
途中までは優しく諭すような口調だったのに、最後は人が変わった様に怒鳴るような口調になってびっくりした。だけど、何の根拠もないのに不思議と勇気が湧いてくる。
「おおおぉぉ!!」
「やってやるぞ!」
「俺たちはまだ終わってない!」
皆も古木さんの激励に活気が湧いてくる。先程までの絶望などなかったようにすら感じられる。
「・・・」
だけど茜さんはなんだか微妙そうな顔をしていた。
◆ ◆ ◆
あれから数十分。空を飛んでやっとリュウ君達の所まで戻って来た。
「リュウ後ろ!」
華蓮ちゃんの声。見えたのは2体のドラゴンがその拳をリュウ君に向かって振り下ろす光景だった。その光景を見た途端考えるよりも先に行動していた。
「≪鈴音ノ青砕斬≫」
≪覚醒・青≫によって強化された肉体で、尚且つ音速でモンスターの元まで行く。手、腕、肩、の順に斬り刻む。それはもう数ミリ単位で刻んでいく。斬り刻み、モンスターの腕は塵となって消えた。
「「ギャァァァ!!」」
モンスターは無くなった腕の痛みで悲鳴にも似た叫びを上げていた。
一歩先も見えないような猛吹雪が発生する。凍えるような雪の嵐と急激に下がった気温でモンスターの体温は失われる。さらに視界が悪くモンスター同士の衝突も絶えない。
「≪ドラゴンサンダーレイン≫」
追い打ちをかけるように、モンスターに向かって雷が雨のように次々と落ちる。
リュウ君と華蓮ちゃんの息の合った攻撃で物凄い勢いでモンスターが倒されていく。これではもう私達の出番は無いかもしれない。そう思う程にモニターの向こうの戦いは一方的だった。
ここは≪緊急避難≫のスキルで転移した場所。『ガーディアン』が所有する施設で、戦闘で傷を負った人達を治せる様に診療所が併設されている。戦闘で怪我を負った人達の苦痛の声、それと負傷者を治そうと奔走する医師の声が忙しなく聞こえる。でも殆どの人はそれとは違った声を上げている。
「クッソ!なんだよあれ!」
「もう終わりだ」
絶望の声だった。
「えっ?なんで」
その絶望に疑問を覚える。だってリュウ君と華蓮ちゃんの方が圧倒的に優勢な筈なのに。
「皆あの巨大なドラゴンの圧倒的な強さに慄いている」
私の疑問に答えてくれたのは茜さんだった。
「でも今リュウ君と華蓮ちゃんが……」
「もう一度、テレビを良く見て」
茜さんはモニターを指差す。
だけど映し出されるのは沢山のモンスター相手に戦うリュウ君と華蓮ちゃん。戦いは圧倒的に優位な筈。
「でも徐々に押されてる。数が多すぎて2人だけじゃ体力が持たない」
「そんな……」
「このまま持久戦になると2人が危ない。それに他のモンスターも相手してる中であの巨大なドラゴンを2人で倒すのは難しい」
「なら今すぐ行かないと」
「でもここからだとかなりの距離があるし、私達だけ行っても数が足りない」
「ッ」
周りを見渡せば殆どの人が顔を俯かせ力無く座っている。どうにかして皆を説得するしかないけど……。
「皆さん、何をしているのですか。戦いはまだ終わっていませんよ」
何を言えば良いか分からず焦っていると部屋全体に行き渡るような声が、でも決して怒鳴り散らすのとは違う声が聞こえてくる。その声の主は吹き抜けの2階部分に立っていたおじいさんだった。
「誰だっけ?」
「何言ってんだよ。ほら、古木さん……だろ」
「あー、あの……」
「確か相談役?的な」
私は初めて見る人だった。けど他の人達もそこまで詳しくないのかひそひそと話始める。
「マ、古木……。設定適当すぎでしょ」
茜さんはボソッと呟き、おじいさんを哀れむような目で見ていた。
「コホン。兎に角、モニターを見てください。あの2人はまだ戦っています。数の差は歴然なのに諦めていません。貴方達が戻ってくると信じているんです。だから……、グズグズと落ち込んでないで『戦え』!!」
途中までは優しく諭すような口調だったのに、最後は人が変わった様に怒鳴るような口調になってびっくりした。だけど、何の根拠もないのに不思議と勇気が湧いてくる。
「おおおぉぉ!!」
「やってやるぞ!」
「俺たちはまだ終わってない!」
皆も古木さんの激励に活気が湧いてくる。先程までの絶望などなかったようにすら感じられる。
「・・・」
だけど茜さんはなんだか微妙そうな顔をしていた。
◆ ◆ ◆
あれから数十分。空を飛んでやっとリュウ君達の所まで戻って来た。
「リュウ後ろ!」
華蓮ちゃんの声。見えたのは2体のドラゴンがその拳をリュウ君に向かって振り下ろす光景だった。その光景を見た途端考えるよりも先に行動していた。
「≪鈴音ノ青砕斬≫」
≪覚醒・青≫によって強化された肉体で、尚且つ音速でモンスターの元まで行く。手、腕、肩、の順に斬り刻む。それはもう数ミリ単位で刻んでいく。斬り刻み、モンスターの腕は塵となって消えた。
「「ギャァァァ!!」」
モンスターは無くなった腕の痛みで悲鳴にも似た叫びを上げていた。
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