あの物語の続きを知りたい！

覚醒 3

暫くウロウロしていたミラルカは、いつの間にか、王宮の奥まで来ていたようだ。
執務室と思われる部屋の前にミラルカは辿り着いた。部屋の前には厳しい顔の騎士が二人で警戒していたが、当然幽体のミラルカには気づいていない。

『お邪魔しま～す』

ドアを通り抜けると壮年の男が二人いた。

「陛下、王女様をいかがなさいますか？今のところ治療は施しておりませんが」

「死のうが生き延びようがどちらでも構わぬ。余の血を引いておりながら、無能とはの。やはり母親が平民ではいかんな」

「しかし、御髪は王家の血を受け継いだお色。王女様には 魔術が使えなくても、そのお子様には魔術の才が現れるかも知れませぬ。昨今、強力な力を持つ者が少のうなっておりますゆえ。このまま儚くさせるのはもったいのうございます」

「ふむ。子を成せる歳になったら、有力な種馬を何人かあてがうか。使える者が産まれれば儲け物……それが有益な使い道かもしれん。よかろう。助けてやるが良い」

「御意」

「それにしても…誰が毒を盛ったやら。二妃ではないのか？」

「さて？確かに二妃様は、離れの方様を忌まわしく思われていましたが、今更手を下しますでしょうか？……そういえば、今朝死体で発見された侍女が王太子妃様の従僕と何度か会っているのを見かけましたな」

「ほう？誰かが王太子妃に要らぬ事を吹き込んだかな。まあ良い」

「それでは、私は御典医に治療の指示を出して参ります。御前を失礼致します」

一人が部屋から出て行くのを見送って、ミラルカは残った壮年の男の顔をシゲシゲ見る。

『陛下ってことはこの国の王様だよね。そういえば肖像画と同じ顔だわ。こっちのがいささか老けているけど。
歳の頃は五十台後半かな？青銀の髪に赤い眼、若い頃はかなりイケてたんじゃないかな？』

王を観察した後は部屋の中を見回す。
目に入ったのは書類の山らしき物と、かべを埋め尽くしている本、本、本。

『いいなぁ、本。ああ、読みたい。そういえば、私の好きな物語。なんて題名だっけ？
続きが読みたくて急いで家に帰った……っけ？あれ？えっと……？何かあったような…？
…………。
あっ！車！そうだ信号無視の車！車に轢かれたんだよ。
て事は私は死んだのかな？でも、何でこんな見も知らないところで幽霊やってんのかしら？
それとも夢？事故の後病院で夢を見てるのかな？そう、夢ね。嫌にリアル感あるけど。
もう起きよう。起きてアレを読むんだから』

そう決意した途端ミラルカは身体（？）が強い力で何処かに引っ張られたように感じた。