愛されポメガの小さな革命

温風

文字の大きさ
上 下
8 / 10

俺、人間に戻る

しおりを挟む

 人に戻れたのはほっとしたが、当然、全裸だった。

「は、はだか……肌色……!」

 久我がうろたえている。
 俺もいたたまれない気持ちになった。まず最初に俺の下腹部の小さな俺を見つめるの、やめてほしい。

「ごめん、いつも戻ると真っ裸なんだよ」

 そっと手で覆うと、こちらの恥じらいを察したらしい。

「はっ! ごめん! ピンク色できれいだったから……」と、しどろもどろになっていた。だけど、
「あっ……乳首もピンク色してるんだ……」といって、手のひらをべたりと胸に貼り付けた。

「おい、おまえ調子に乗るなよ!」

 赤くなって久我の手を引き剥がすと、あのさ、と少しトーンを落とした声になる。

「さっき、咲也に告白したんだけど……返事って今、聞けたりする?」

 真摯なまなざしで俺を見つめた。
 昨日からのポメの時間と、急に人に戻った時間、それと高校時代の思い出がないまぜになって、俺の中をぐるぐると駆け巡っている。

 正直、こいつと再会した時は、重くて苦い気持ちでいっぱいになった。フィンレイ大佐をバカにされた記憶はあまりに悔しく生々しかった。
 だけど、恨み続けるのを辞めて許すのなら……今しか機会はないのだと思う。
 こいつも謝ってくれたし、フィンレイ大佐を保護してくれた恩人だし、俺としても、できることなら高校時代の禍根をずっと引きずりたくないのだ。
 過去のしこりは現在にも影を落とす。いつまでも胸につかえを残したくない。俺は、好きなものをすなおに好きと言える、そんな人生を生きたい。

 久我のまっすぐな視線はゆらがずに俺の返事を待っている。そんなふうにお前が待っていてくれるから、俺は、俺は──……、

「──許すよ」と、ポツリと言った。
「え?」
「高校時代、お前がからかったこと。他のやつらはぜってー許さないけど、お前だけは許す」
「あ、俺だけ……あ、ありがとう! うれしい」
「それから、告白の返事だけど」
「あ、うん。無理に気を遣わなくても、覚悟はできてる」

 痛みに耐えるように顔を歪めている。
 そんな久我に俺は全裸のまま、にじりよった。

「おまえ……いいにおい、するよね」
「匂い? 汗臭いか?」
「ううん、そうじゃなくて、あまくてあったかくて……あんしんする」

 ポメになっていた時のようには嗅覚が効かなくて、すぴすぴと鼻を慣らしていると、ふふっと久我が笑った。

「咲也。人間でも犬でも、どっちも可愛い」

 まなじりを下げてやわらかく微笑むと、イケメンの甘さマシマシになる。どきんと胸が跳ねて、かあっと顔に血が巡った。

「あ、うう……」
「もしかして、告白の返事はイエスだと思っていい?」

 顔を近づけてそっと訊くので、こくんと頷く。すると頬を両手で包まれて唇に温かいものが重なった。

(ちゅっ、チューだ!)

 一度触れたものをそっと離した久我。けれど続けてまた触れ合わせる。
 唇をついばまれて、体が熱を持ちはじめる。俺、どうして興奮するんだろう……。
 ふしぎに思いながら身を任せた。

しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

謎の死を遂げる予定の我儘悪役令息ですが、義兄が離してくれません

柴傘
BL
ミーシャ・ルリアン、4歳。 父が連れてきた僕の義兄になる人を見た瞬間、突然前世の記憶を思い出した。 あれ、僕ってばBL小説の悪役令息じゃない? 前世での愛読書だったBL小説の悪役令息であるミーシャは、義兄である主人公を出会った頃から蛇蝎のように嫌いイジメを繰り返し最終的には謎の死を遂げる。 そんなの絶対に嫌だ!そう思ったけれど、なぜか僕は理性が非常によわよわで直ぐにキレてしまう困った体質だった。 「おまえもクビ!おまえもだ!あしたから顔をみせるなー!」 今日も今日とて理不尽な理由で使用人を解雇しまくり。けれどそんな僕を見ても、主人公はずっとニコニコしている。 「おはようミーシャ、今日も元気だね」 あまつさえ僕を抱き上げ頬擦りして、可愛い可愛いと連呼する。あれれ?お兄様、全然キャラ違くない? 義弟が色々な意味で可愛くて仕方ない溺愛執着攻め×怒りの沸点ド底辺理性よわよわショタ受け 9/2以降不定期更新

嫌われ者の僕はひっそりと暮らしたい

りまり
BL
 僕のいる世界は男性でも妊娠することのできる世界で、僕の婚約者は公爵家の嫡男です。  この世界は魔法の使えるファンタジーのようなところでもちろん魔物もいれば妖精や精霊もいるんだ。  僕の婚約者はそれはそれは見目麗しい青年、それだけじゃなくすごく頭も良いし剣術に魔法になんでもそつなくこなせる凄い人でだからと言って平民を見下すことなくわからないところは教えてあげられる優しさを持っている。  本当に僕にはもったいない人なんだ。  どんなに努力しても成果が伴わない僕に呆れてしまったのか、最近は平民の中でも特に優秀な人と一緒にいる所を見るようになって、周りからもお似合いの夫婦だと言われるようになっていった。その一方で僕の評価はかなり厳しく彼が可哀そうだと言う声が聞こえてくるようにもなった。  彼から言われたわけでもないが、あの二人を見ていれば恋愛関係にあるのぐらいわかる。彼に迷惑をかけたくないので、卒業したら結婚する予定だったけど両親に今の状況を話て婚約を白紙にしてもらえるように頼んだ。  答えは聞かなくてもわかる婚約が解消され、僕は学校を卒業したら辺境伯にいる叔父の元に旅立つことになっている。  後少しだけあなたを……あなたの姿を目に焼き付けて辺境伯領に行きたい。

救国の大聖女は生まれ変わって【薬剤師】になりました ~聖女の力には限界があるけど、万能薬ならもっとたくさんの人を救えますよね?~

日之影ソラ
恋愛
千年前、大聖女として多くの人々を救った一人の女性がいた。国を蝕む病と一人で戦った彼女は、僅かニ十歳でその生涯を終えてしまう。その原因は、聖女の力を使い過ぎたこと。聖女の力には、使うことで自身の命を削るというリスクがあった。それを知ってからも、彼女は聖女としての使命を果たすべく、人々のために祈り続けた。そして、命が終わる瞬間、彼女は後悔した。もっと多くの人を救えたはずなのに……と。 そんな彼女は、ユリアとして千年後の世界で新たな生を受ける。今度こそ、より多くの人を救いたい。その一心で、彼女は薬剤師になった。万能薬を作ることで、かつて救えなかった人たちの笑顔を守ろうとした。 優しい王子に、元気で真面目な後輩。宮廷での環境にも恵まれ、一歩ずつ万能薬という目標に進んでいく。 しかし、新たな聖女が誕生してしまったことで、彼女の人生は大きく変化する。

悪役令息の花図鑑

蓮条緋月
BL
公爵令息シュヴァリエ・アクナイトはある日、毒にあたり生死を彷徨い、唐突に前世を思い出す。自分がゲームの悪役令息に生まれ変わったことに気づいたシュヴァリエは思った。 「公爵家の力を使えば世界中の花を集めて押し花が作れる!」  押し花作りが中毒レベルで趣味だったシュヴァリエはゲームのストーリーなどお構いなしに好き勝手動くことに決め行動が一変。その変化に周囲がドン引きする中、学園で奇妙な事件が発生!現場に一輪の花が置かれていたことを知ったシュヴァリエはこれがゲームのストーリーであることを思い出す。花が関わっているという理由で事件を追うことにしたシュヴァリエは、ゲームの登場人物であり主人公の右腕となる隣国の留学生アウル・オルニスと行動を共にするのだが……? ※☆はR描写になります ※他サイトにて重複掲載あり  

社畜サラリーマン、異世界で竜帝陛下のペットになる

ひよこ麺
BL
30歳の誕生日を深夜のオフィスで迎えた生粋の社畜サラリーマン、立花志鶴(たちばな しづる)。家庭の都合で誰かに助けを求めることが苦手な志鶴がひとり涙を流していた時、誰かの呼び声と共にパソコンが光り輝き、奇妙な世界に召喚されてしまう。 その世界は人類よりも高度な種族である竜人とそれに従うもの達が支配する世界でその世界で一番偉い竜帝陛下のラムセス様に『可愛い子ちゃん』と呼ばれて溺愛されることになった志鶴。 いままでの人生では想像もできないほどに甘やかされて溺愛される志鶴。 しかし、『異世界からきた人間が元の世界に戻れない』という事実ならくる責任感で可愛がられてるだけと思い竜帝陛下に心を開かないと誓うが……。 「余の大切な可愛い子ちゃん、ずっと大切にしたい」 「……その感情は恋愛ではなく、ペットに対してのものですよね」 溺愛系スパダリ竜帝陛下×傷だらけ猫系社畜リーマンのふたりの愛の行方は……?? ついでに志鶴の居ない世界でもいままでにない変化が?? 第11回BL小説大賞に応募させて頂きます。今回も何卒宜しくお願いいたします。 ※いつも通り竜帝陛下には変態みがありますのでご注意ください。また「※」付きの回は性的な要素を含みます

【完結】復讐の館〜私はあなたを待っています〜

リオール
ホラー
愛しています愛しています 私はあなたを愛しています 恨みます呪います憎みます 私は あなたを 許さない

【完結】人魚姫は今世こそ結ばれたい

ちかこ
BL
初めて会った時、自分の前世に気付いた。 ばれたら海の泡になってしまう人魚姫。今世も彼に愛されることは叶わないのだろうか。 ※サブタイトルがなく、数字のみの為わかりづらいのではと頂いたのでR18部分に*つけることにしました…何かございましたら報告頂けると助かります!

別れた婚約者が「俺のこと、まだ好きなんだろう?」と復縁せまってきて気持ち悪いんですが

リオール
恋愛
婚約破棄して別れたはずなのに、なぜか元婚約者に復縁迫られてるんですけど!? ※ご都合主義展開 ※全7話  

処理中です...