らしく

第２２話

　  "大人は判ってくれない"を見終わった４人は映画について語り合う。

　「やっぱり、ラストカットがこの映画の肝だよな」

　洋太郎がソファから立ち上がり背伸びをして言った。

　「海にぶつかって後ろを振り向くってことは現実と向き合う覚悟を決めたって意味だよな」

　隼人はいかにこの映画好きか伝わってくる熱量で話す。

　「俺だったら海を泳いでも逃げるけどな」

　隆一は物理的に厳しい事を言う。

　「無謀だよ、途中で体力尽きて沈んで終わりだよ」
　
　健二は隆一の非現実的な話に釘を刺す。

　「おい、雨止んだぞ。中華食いに行かないか？」

　隼人は窓の外を確認して雨が上がったのを見てにこやかな顔をして言った。
　
　「いいねぇ、炒飯食べたいし。隆一の奢りな」
 
  「なんで、俺が洋太郎に奢らねぇといけねぇんだよ。てか、お前２日前に貸した１２０円返ってきてねぇんだけど、返せよ」
　
　隆一はハッと何かを思い出した表情をしてソファから立ち上がり洋太郎に貸したお金を返させるのを催促する。

　「洋太郎、墓穴掘ったな。なぁ、健二も一緒に中華を食べに行こうぜ」

　「俺、中華には厳しいよ」

　健二は表情を緩めて言った。

　「決まりだな、この近所にオススメの中華料理屋ない？」

　「ここ周辺だとホイ・チンジャーハン屋って中華屋がオススメだね」

　「名前が色々とややこしいな。じゃあ、そこで決まりだな。おい。お前ら行くぞ」

　隼人は苦笑いを浮かべてから取っ組み合いで戯れてる洋太郎と隆一を犬を呼ぶ様に手を叩いて声を掛けた。

　２人は休戦だと言ってはだけたTシャツを袖を伸ばす。

　「俺に餃子を１個よこせよ。それで、１２０円はチャラにしてやるから」

　隆一は洋太郎に口うるさくいう。

　「わかった、２つあげるらこれでもう終わりな」

　洋太郎は両手で隆一の肩を掴み言った。

  「いいだろう」

　洋太郎は妥協して隆一と握手して２人の争いを諫めた。
　
　　　　＊     ＊     ＊

  ４人は奥まった住宅街を歩いてると前方から学ランを着た３人の高校生が騒がしい音を立てて１人の学生を自分たちより少し前に歩かせて背後から手で目隠して尻にカンチョーしたりして弄んでた。

　「おい、そこの茶髪のお前、なんか俺らに文句あるか？」

　３人の内の長髪で薄い眉毛で目つ気が悪く鋭い一重瞼の奴が隼人に痰を切った。

  「ない」

　隼人は淡白に返答した。

　「そうかよ、じゃあ早く行けよ」

　隼人達は長髪の目つきの悪い奴等の横を通り過ぎた。

　「お前ら、中華はお預けた」

　少し歩いた所でピタッと先頭にいる隼人だけが止まって言った。

　　隼人は奴等の方に体勢を変えて勢いよく突っ走って長髪の野郎にタックルをかます。

　長髪の野郎はタックルで地面に背中を打ち付け背部に激痛が走り顔が歪む。

　「戦じゃぁー」

　 洋太郎が空に向かって大きな声を上げた。

　「てめー、何すんだゴラァッ！」

　長髪の野郎は両脇にいるチビとノッポの手を借りて起き上がり怒声を上げた。その隙に、いびられてた学ランの高校生は逃げ去った。

　「隆一と健二、援護に行くぞ」

  健二は目の前で起きてる光景を見て呆然としていた。

　「おい健二、目を覚ませ！」

  洋太郎は健二の後頭部を手の側面で叩く。

　健二は洋太郎の手刀打ちで目を覚まし自分の両頬を叩き隼人の助太刀に向かった。