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第二章

婚約

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 お父様は驚いて声が上手く出ないらしい。私も驚いたけれど嬉しさの方が勝った。少しだけ口角が上がってしまった私を貶す様に見つめてたどたどしく言う。


「どうして・・・どうしてシャーロットなのですか?妹のローズの方が可愛いくて愛嬌も有り優しい子なのですよ?ローズも公爵様の事をお慕いしておりますし・・・しかも・・・」

「要件は済みました。私はシャーロットを連れて帰ります。」


 ファリンス、かっこいい。けれど・・・話が急過ぎよ。私を連れて帰る?一体どういう事なの?


「お待ち下さい!シャーロットを連れて帰るとはどういう事ですか?!」


 お父様と同じ事を考えてしまうだなんて不覚だわ。でも私も意味が分からないから仕方がない。ファリンスに何をされてしまうのだろう。

 そんな事を考えて微笑んでいるとファリンスがはぁ、と溜め息をつき言い放つ。


「平気で腕の骨を折る方々に時期妻を預ける事は出来ません。しかも・・・、まぁ良いです。必要な物はこちらで揃えますし、詳しい事は探偵を雇って調べされて頂きます。質問等有りましたら後日にお願いします。本日は素晴らしい出会いをありがとうございました。では後ほど。」


 有無を言わせぬ圧力でお父様を黙らせると、私の方を見て失礼しますと言う。意味が分からず小首を傾げるとすぐに意味が分かった。


「ひゃあ!」


 ファリンス様にいわゆるお姫様抱っこと言う奴をやられた。正直脚の怪我とかで歩きにくかったから助かるけど・・・通り過ぎる人と気まずい。お父様達が何か騒いでいるが気にせずファリンスは外へと突き進んで行った。

 周りを気にしない様にしていたらすぐ外に出た。太陽がとっても眩しいなぁとか考えていたら凄い高級そうな馬車に乗せられた。


「シャーロット・・・勝手に婚約を決めて連れて来てすまない。」

「うぅん、ファリンスありがとう。」


 ありがとうと言うとファリンスは一度目をパチクリさせ、その後照れる様に笑った。




「何がぁ!勝手に婚約を決めて連れて来てすまない、ですかぁぁああ!ファリンス様!変な事はもうしないと言ったではないですか!なのに急に来たと思ったらご令嬢を抱っこして、澄ました顔でぇえ!何を考えているんですか?!」


 びっくりした。ファリンスの事を知ってる人みたい。悪い人じゃないと思うのだけど・・・。


「五月蝿いぞ、トリー。急に騒ぐんじゃない、何時も言っているだろう。耳に悪いし、シャーロットがびっくりしたじゃないか。」

「あ゙あ゙ぁぁあ!人を憐れむ様な目で見ないで下さい!頭がおかしいのは貴方ですから!令嬢も令嬢ですよ!急に連れて来られたのにありがとう、なんてお礼の言葉を伝えて!しかも婚約ですって?結婚なんか絶対しないって言っていたじゃないですか!」


 ファリンスは安定の優しさ。そしてトリーと呼ばれた人は地団駄を踏んでいる。

 トリー様(?)はしっかり怒っているのに優しい怒り方だわ・・・。妙に怖くない。威圧感がないというか・・・なんとも言えないこの感じ。


「ファリンス様!目で五月蝿いと訴えないで下さい!あーもう!本っ当~に仕方がないですね!この話は邸宅に着いたらしましょう。とりあえず出発しますよ。・・・多分来てますから。」


  トリー様(?)は面倒くさそうな顔をしながら素早く馬車を走らせる。

 カタコトカタコトと気持ち良いし、椅子がフカフカだわ。本当に凄くフカフカする。こんな凄いのに座ったのは初めてだわ。馬車も全然揺れないから頭がぶつからないし・・・緊張も解けたから、だんだん眠くなってきちゃった。


「シャーロット、眠いの?」

「眠いです・・・」

「寝てもいいよ。」


 遠慮なくポフンッと横に寝転がり目を瞑る。今のが現実なのか自問自答し、次起きた時ファリンスが居る事を願った。しかしシャーロットの頭の中ではあの言葉がずっと響いていた。

『結婚なんか絶対しない』

 トリー様(?)が言っていたあの言葉。あれは本当なのだろうか。ファリンスが私を捨てないという保証など何処にも無い。

 カタコトカタコトと気持ち良く揺られながらシャーロットは意識を手放した。

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