38 / 39
第二章
出来た!
しおりを挟む出来た!出来た、出来たぁ!
お庭を歩ける様になった!
少しなら走れる様になった!
食器を落とさなくなった!
あと、カレア曰く、儚い度が減ったらしい!
僕、出来る事が増えました~!
そして、団長職に、復帰出来る事になりましたぁ!
やった~!
いやぁ、一ヶ月でここまで回復出来るとは思っていなかった。嬉しい誤算ってヤツだね!
まだ朝早く起きるのはダメだからって、七時からの出勤となった。ルンルンと団長服を身にまとったのだが・・・。
服って、こんなに重かったっけ?久しぶりに着たら、団長服が重く感じるよぉ・・・。あれ、靴ってこんなに歩きにくかったっけ?そういえばずっとスリッポンみたいなの履いてたじゃん。ヒール、歩きにく!
僕、ヒールで歩けるかな?
でも、でも!身長盛りたいじゃん!カツカツ音鳴るの良いじゃん!団長らしくかっこよく居たいじゃん!ヒールは履きたいよ・・・。マントも外せないよ・・・。
「お兄ちゃん、元気出して!お兄ちゃんはいつでもヒールで身長盛りたいの、カレア達は分かってるから!ヒールのために団長服をどうにかしよう?で、考えたんだけど、服に軽量化魔道具付ければ良いじゃん?」
「カレアったら天才!大好き!」
「グハッ・・・!」
カレアをノックアウトしておいて準備を進める。
カチッと軽量化魔道具をマントに着けてみれば、ふわっと軽くなった。コレならヒールでも歩けそうだと安心する。試しにつま先で床をトントンと蹴ると、笑みが零れた。
凄く嬉しい。こうやってまた、団長として服を纏う事が出来るのが。
でも緊張するなぁ・・・。誰ですか、って言われたらどうしよう。皆が超絶にサボってたらどうしよう。皆にちゃんと言えるかな・・・。
―――数分後
「随分と緩くなったなぁ!走れ走れ!そこ!姿勢が悪い!お前もだ!お前は剣を持つ位置を下にしろと言っただろう!覚えていないのか!俺が居なかった分、この一日で叩きのめしてやる!おいそこ!足の運び方が悪い!」
「「「はい団長!」」」
言えないとか、全然そんな事なかった。兎に角駄目、駄目、駄目!出来てた事が出来てない!言いたい事が山ほどあって止まらない!そしてどうして怒られて嬉しそうなんだよ!
うわぁ~ん!僕も皆に会えて嬉しいよって言ってやりたい!でも、取り敢えず休んでた分の事を取り返したい!でも取り敢えず・・・。
喉が痛い。大きな声出し過ぎたかな?でも立ってるのでも疲れてくるから歩きたくないし、壁の花と化しているカレアからの視線は痛いから下手に歩けない。
あ、可愛いカレアに見惚れて集中力が低下しているじゃないか。
「集中しろ!」
「「「はい!」」」
それから三時間程、根性を叩き直して鍛え上げてやった。でも限界は来る訳で。
あ・・・喉が痛い。やばいやばいやばい、咳が出ちゃう。喉に咳が居る、もう・・・無理かも。
「・・・げふっ・・・ごほっ、ごほっ・・・げほげほっうぅ・・・」
「っお兄ちゃん!大丈夫?!」
うわぁ、咳が止まんない。凄く喉がイガイガする。息吸えないし、もうヤダ。めっちゃ見られてるし、カレアに迷惑掛けてるし・・・。うぅ・・・また咳出る・・・
止まらない咳を膝を付きながら出して、カレアに背中を摩ってもらって、騎士団の皆の視線を感じて・・・──────喀血した。
もう咳はコレで最後だと何故か分かって居て、咳き込んだ。それと同時に、僕の手のひらには赤い液体が付着していた。・・・血が出ちゃった。
可笑しいな、元気なのに。まぁ、平気か。
僕はスっと立ち上がり、足に付いた砂を片手で払った。そしてハンカチで、手と口元を綺麗にした。仕上げにハンカチを綺麗に畳んで、元気だ、と言った。
「・・・お兄ちゃん?何、言ってるの?」
「もう元気になった、ょ・・・?」
「あはは、お兄ちゃん。カレアと一緒にさぁ、お家に帰ろうねぇえ?ねぇ、帰るよねぇえ?ほらぁ、『今直ぐ』帰ろう?」
カレアの右手から不穏な空気を感じた瞬間、ピリッとした物が伝わった。
視界がグルンと一回転して、意識が無くなった。
0
お気に入りに追加
25
あなたにおすすめの小説
侯爵令息セドリックの憂鬱な日
めちゅう
BL
第二王子の婚約者候補侯爵令息セドリック・グランツはある日王子の婚約者が決定した事を聞いてしまう。しかし先に王子からお呼びがかかったのはもう一人の候補だった。候補落ちを確信し泣き腫らした次の日は憂鬱な気分で幕を開ける———
ーーーーーーーーーーーーーーーーーーー
初投稿で拙い文章ですが楽しんでいただけますと幸いです。
【完結】生贄になった婚約者と間に合わなかった王子
ゴールデンフィッシュメダル
恋愛
フィーは第二王子レイフの婚約者である。
しかし、仲が良かったのも今は昔。
レイフはフィーとのお茶会をすっぽかすようになり、夜会にエスコートしてくれたのはデビューの時だけだった。
いつしか、レイフはフィーに嫌われていると噂がながれるようになった。
それでも、フィーは信じていた。
レイフは魔法の研究に熱心なだけだと。
しかし、ある夜会で研究室の同僚をエスコートしている姿を見てこころが折れてしまう。
そして、フィーは国守樹の乙女になることを決意する。
国守樹の乙女、それは樹に喰らわれる生贄だった。
転生貧乏貴族は王子様のお気に入り!実はフリだったってわかったのでもう放してください!
音無野ウサギ
BL
ある日僕は前世を思い出した。下級貴族とはいえ王子様のお気に入りとして毎日楽しく過ごしてたのに。前世の記憶が僕のことを駄目だしする。わがまま駄目貴族だなんて気づきたくなかった。王子様が優しくしてくれてたのも実は裏があったなんて気づきたくなかった。品行方正になるぞって思ったのに!
え?王子様なんでそんなに優しくしてくるんですか?ちょっとパーソナルスペース!!
調子に乗ってた貧乏貴族の主人公が慎ましくても確実な幸せを手に入れようとジタバタするお話です。
一宿一飯の恩義で竜伯爵様に抱かれたら、なぜか監禁されちゃいました!
当麻月菜
恋愛
宮坂 朱音(みやさか あかね)は、電車に跳ねられる寸前に異世界転移した。そして異世界人を保護する役目を担う竜伯爵の元でお世話になることになった。
しかしある日の晩、竜伯爵当主であり、朱音の保護者であり、ひそかに恋心を抱いているデュアロスが瀕死の状態で屋敷に戻ってきた。
彼は強い媚薬を盛られて苦しんでいたのだ。
このまま一晩ナニをしなければ、死んでしまうと知って、朱音は一宿一飯の恩義と、淡い恋心からデュアロスにその身を捧げた。
しかしそこから、なぜだかわからないけれど監禁生活が始まってしまい……。
好きだからこそ身を捧げた異世界女性と、強い覚悟を持って異世界女性を抱いた男が異世界婚をするまでの、しょーもないアレコレですれ違う二人の恋のおはなし。
※いつもコメントありがとうございます!現在、返信が遅れて申し訳ありません(o*。_。)oペコッ 甘口も辛口もどれもありがたく読ませていただいてます(*´ω`*)
※他のサイトにも重複投稿しています。
新しい道を歩み始めた貴方へ
mahiro
BL
今から14年前、関係を秘密にしていた恋人が俺の存在を忘れた。
そのことにショックを受けたが、彼の家族や友人たちが集まりかけている中で、いつまでもその場に居座り続けるわけにはいかず去ることにした。
その後、恋人は訳あってその地を離れることとなり、俺のことを忘れたまま去って行った。
あれから恋人とは一度も会っておらず、月日が経っていた。
あるとき、いつものように仕事場に向かっているといきなり真上に明るい光が降ってきて……?
愛などもう求めない
白兪
BL
とある国の皇子、ヴェリテは長い長い夢を見た。夢ではヴェリテは偽物の皇子だと罪にかけられてしまう。情を交わした婚約者は真の皇子であるファクティスの側につき、兄は睨みつけてくる。そして、とうとう父親である皇帝は処刑を命じた。
「僕のことを1度でも愛してくれたことはありましたか?」
「お前のことを一度も息子だと思ったことはない。」
目が覚め、現実に戻ったヴェリテは安心するが、本当にただの夢だったのだろうか?もし予知夢だとしたら、今すぐここから逃げなくては。
本当に自分を愛してくれる人と生きたい。
ヴェリテの切実な願いが周りを変えていく。
ハッピーエンド大好きなので、絶対に主人公は幸せに終わらせたいです。
最後まで読んでいただけると嬉しいです。
誰よりも愛してるあなたのために
R(アール)
BL
公爵家の3男であるフィルは体にある痣のせいで生まれたときから家族に疎まれていた…。
ある日突然そんなフィルに騎士副団長ギルとの結婚話が舞い込む。
前に一度だけ会ったことがあり、彼だけが自分に優しくしてくれた。そのためフィルは嬉しく思っていた。
だが、彼との結婚生活初日に言われてしまったのだ。
「君と結婚したのは断れなかったからだ。好きにしていろ。俺には構うな」
それでも彼から愛される日を夢見ていたが、最後には殺害されてしまう。しかし、起きたら時間が巻き戻っていた!
すれ違いBLです。
ハッピーエンド保証!
初めて話を書くので、至らない点もあるとは思いますがよろしくお願いします。
(誤字脱字や話にズレがあってもまあ初心者だからなと温かい目で見ていただけると助かります)
11月9日~毎日21時更新。ストックが溜まったら毎日2話更新していきたいと思います。
※…このマークは少しでもエッチなシーンがあるときにつけます。
自衛お願いします。
勇者の股間触ったらエライことになった
ベータヴィレッジ 現実沈殿村落
BL
勇者さんが町にやってきた。
町の人は道の両脇で壁を作って、通り過ぎる勇者さんに手を振っていた。
オレは何となく勇者さんの股間を触ってみたんだけど、なんかヤバイことになっちゃったみたい。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる