上 下
6 / 39
第一章

たまには Le/S→B/S

しおりを挟む


 ──────キ、キ、キ、キスしてるぅ~!

「誰がするかボケェぇぇぇぇぇぇえええ!!!──────っゔっっ・・・痛ったぃ・・・」


 最悪の夢見心地だったせいで、ソファーから転げ落ちて頭を打った。そんな事になって居るのは勿論騎士団長の僕。

 ソファーで寝るからそんな事になるんだよ。

 僕は馬鹿なのか?いくら何でもダサ過ぎるでしょ。って、もう十一時だし!仕事しないといけないのに寝ちゃった。・・・また、ルドウィン様に怒られるのか。

 ルドウィン様によしよしされるなんて、都合のいい夢など見れる理由がなく。・・・どちらかと言えば悪夢を見てしまった。気分は落ち込んだままで、溜め息は止まることを知らない。


 机の上にはベンが書いたと思われる手紙と、ご丁寧にラップをかけられたサンドイッチが置いて在った。

 ここになかったら食べなかったかもしれない、そう考えてサンドイッチを手に取った。お行儀は良くないがサンドイッチ食べながらベンの手紙を読む。


 ───ライト様へ

 お部屋に運ぶか迷いましたが、この前殴られたので止めておきました。サンドイッチを用意して置いたので食べて下さい。もし夜に起きてしまっても、仕事の続きなんてしないで下さいね。部屋でしっかり寝て下さい。 ベインより

 追伸 ︰ 先程、ルドウィン様にお会いしました。ライト様の事、心配してましたよ。───


 ルドウィン様が僕を心配?!

 ヤバい、仕事がやりたい・・・!現実で褒められたい。そんな事ある訳無いと知って居るのに、衝動が抑えられない・・・!僕、今なら何でも出来る!!!

 僕は寝起きから仕事に明け暮れていた。



 ―――



 暫くしてノック音が部屋に鳴り響いた。僕の口から思わず間抜けな声が出てしまったのと同じ様にムッとしたベンが入って来た。


「ライト様!仕事やっちゃダメって書いて置きましたよね?!何やってるんですか・・・もう!こんな事だろうと思いましたけど、因みに何時からやっていたんです?!」

「・・・十二時過ぎから、だよ?」

「はぁ・・・!今、二時ですよ?二時間も、電気も付けないで、暗闇で、バカですか?バカなんですか?!」


 ベンがネチネチ言ってるけど、これで最後にするから、と言って黙らせる。さっきより少しムッとしたベンだったけれど、書類の片付けをしてくれた。

 ・・・嘘がバレ無くて良かった。


 十分後くらいに仕事が終わって早々にベッドに寝かされて居る。毎日の睡眠時間が四時間も無いなんて、頭イカれてますよ、なんて憎まれ愚痴を叩かれながら。


「ほら、早く寝て下さい。」

「寝てたから眠れない・・・」

「えぇ~・・・気合いでどうにか寝れません?」


 それが出来たら苦労しない、思った事をそのまま口に出した。それなのに、ベンは僕のほっぺをむにむにするだけだ。


「ベン、いつもダメって言ってるだろ?」

「うわぁ~、今のルドウィン様にやって見て下さいよ。俺でもズキューンって来ました・・・多分イチコロだと思います。」

「・・・ベンの、ばか・・・」

「はいはい、すみませんでした~。」


 僕の何が良いんだ。ズキューンって何なんだ。不思議で仕方が無い。僕がカレアみたいに可愛かったら、好きになって貰えたのだろうか・・・

 なんか嫌になって来た。


「ライト様~?何か振られたみたいな顔しないで下さいよ。まだ大丈夫ですよ!・・・まだ・・・・・」

「まだって言うなぁ!」


 怒りを露わにする様に毛布を握り締め、頬を膨らませ、枕をバンバン叩いている・・・つもりなのだろう。実際はぽふぽふ子供が駄々を捏ねている様にしか見えない。

 ・・・誰が見ても凄く可愛いと言える。

 やってる本人はそれに気付かないのだから、余計にタチが悪いのだ。


 ライト様が早く幸せになると良いな、そう考えると口元が緩んだ。それに対してもっと怒って居る姿は・・・誰もが大変そそられる事だろう。

 ライト様がこんなに可愛いのが知れたら虜になってしまう!俺・・・何があっても守りますからね!

 俺はライト様のベンですから!

 悪い虫は徹底的に対処致します!


「・・・ベン、その顔はなぁに?何考えてるんだ?・・・何か、むかむかする顔なんだけど!僕で遊ぶなよ・・・!」

「はいはーい・・・」


 可愛いライト様に俺はまた、生意気な返事をした。



 十分程だろうか。沈黙が続いたのにも関わらず両者とも全く寝る気配すらない。痺れを切らしたのだろうか、急に無茶振りをしてきた。


「ねぇ、面白い話して。」

「えぇ~!急に言われても・・・」 

「じゃあ鍛錬」
「駄目です!!!」

「じゃあ話してよ、暇で暇でしょうがない・・・」


 唸りながら考えけれど、特に思い付かなかった。


「ライト様、閑談しましょ?」

「どれだけ僕を休ませたいんだ・・・」

「ん~と・・・あ、殴った話、覚えてました?」


 ライト様は気まずそうに目を逸らしながら小さな声で・・・覚えてる、と言った。またズキューンとしたが、あの可愛かった出来事を思い出した。





 ライト様が団長になって直ぐの頃。

 疲れて居たのだろう。今日の様にソファーで寝てしまって居た。身体を痛めるので、ベッドに運ぼうと抱っこした。

 ・・・おんぶする訳にはいかないじゃないか。起こしてしまったら嫌だから。だから、両腕で背中と膝裏を持ち上げるように支えたんだ。

 パチッと目があって、ライト様は自分の状況を確認出来たのか、口をはくはくさせながら真っ赤になった。

 可愛くて笑ったら、子供じゃない!と言われて・・・

 強烈な、一撃を食らったのだった──────

 顎に痣が出来てしまい、本来なら裁判沙汰の事だ。俺は全然怒って居なかったのに、ライト様はボロボロ泣きながら謝ってきて・・・

『ベン、ごめんっごめんねっ!うぇぇ~・・・僕、僕、わざとじゃないの!ごめんなさ・・・ごめんなさい・・・』

 可愛かったなぁ~・・・。勿論現在進行形で可愛いんだけど。少し視線を向けるとそっぽを向かれる。


「悪い事考えてるでしょ!昔の話は掘り返さないでよね、もう・・・。」

「ライト様が可愛いのがいけないんですよ?」

「ベンのバカ!」


 それから暫く閑談を続けた。

 ライト様が有り得ないくらい鍛錬しようとするのを阻止しながら。



 何気ない日常が、一番良いのだと思える。

 一番良いと思えるのは、何故だろうか?

 それは──────


 
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

宰相閣下の執愛は、平民の俺だけに向いている

飛鷹
BL
旧題:平民のはずの俺が、規格外の獣人に絡め取られて番になるまでの話 アホな貴族の両親から生まれた『俺』。色々あって、俺の身分は平民だけど、まぁそんな人生も悪くない。 無事に成長して、仕事に就くこともできたのに。 ここ最近、夢に魘されている。もう一ヶ月もの間、毎晩毎晩………。 朝起きたときには忘れてしまっている夢に疲弊している平民『レイ』と、彼を手に入れたくてウズウズしている獣人のお話。 連載の形にしていますが、攻め視点もUPするためなので、多分全2〜3話で完結予定です。 ※6/20追記。 少しレイの過去と気持ちを追加したくて、『連載中』に戻しました。 今迄のお話で完結はしています。なので以降はレイの心情深堀の形となりますので、章を分けて表示します。 1話目はちょっと暗めですが………。 宜しかったらお付き合い下さいませ。 多分、10話前後で終わる予定。軽く読めるように、私としては1話ずつを短めにしております。 ストックが切れるまで、毎日更新予定です。

可愛くない僕は愛されない…はず

おがこは
BL
Ωらしくない見た目がコンプレックスな自己肯定感低めなΩ。痴漢から助けた女子高生をきっかけにその子の兄(α)に絆され愛されていく話。 押しが強いスパダリα ‪✕‬‪‪ 逃げるツンツンデレΩ ハッピーエンドです! 病んでる受けが好みです。 闇描写大好きです(*´`) ※まだアルファポリスに慣れてないため、同じ話を何回か更新するかもしれません。頑張って慣れていきます!感想もお待ちしております! また、当方最近忙しく、投稿頻度が不安定です。気長に待って頂けると嬉しいです(*^^*)

双子の弟が可愛すぎる件について

るんぱっぱ
BL
無表情で冷たく人形だと言われていた兄が、前世の記憶を思い出して弟を溺愛する話。 弟が一番可愛いくて、世界一大切で、何でも与えてあげたい。兄・望(のぞみ)の第一優先は弟の祈(いのり)だった。 そんなクソテガ感情を持つブラコンの兄の前に、1人の男が現れて…。 本当だよ。本当に僕が一番大切な人は祈。 だけど……

美少年に転生したらヤンデレ婚約者が出来ました

SEKISUI
BL
 ブラック企業に勤めていたOLが寝てそのまま永眠したら美少年に転生していた  見た目は勝ち組  中身は社畜  斜めな思考の持ち主  なのでもう働くのは嫌なので怠惰に生きようと思う  そんな主人公はやばい公爵令息に目を付けられて翻弄される    

双子に攻められる平凡な僕の話

雫@更新再開
BL
平凡な受けが攻められる話です。イケメンと美人二人に(双子)

悪役令息に憑依したけど、別に処刑されても構いません

ちあ
BL
元受験生の俺は、「愛と光の魔法」というBLゲームの悪役令息シアン・シュドレーに憑依(?)してしまう。彼は、主人公殺人未遂で処刑される運命。 俺はそんな運命に立ち向かうでもなく、なるようになる精神で死を待つことを決める。 舞台は、魔法学園。 悪役としての務めを放棄し静かに余生を過ごしたい俺だが、謎の隣国の特待生イブリン・ヴァレントに気に入られる。 なんだかんだでゲームのシナリオに巻き込まれる俺は何度もイブリンに救われ…? ※旧タイトル『愛と死ね』

本物のシンデレラは王子様に嫌われる

幸姫
BL
自分の顔と性格が嫌いな春谷一埜は車に轢かれて死んでしまう。そして一埜が姉に勧められてついハマってしまったBLゲームの悪役アレス・ディスタニアに転生してしまう。アレスは自分の太っている体にコンプレックを抱き、好きな人に告白が出来ない事を拗らせ、ヒロインを虐めていた。 「・・・なら痩せればいいんじゃね?」と春谷はアレスの人生をより楽しくさせる【幸せ生活・性格計画】をたてる。 主人公がとてもツンツンツンデレしています。 ハッピーエンドです。 第11回BL小説大賞にエントリーしています。 _______ 本当に性格が悪いのはどっちなんでしょう。    _________

Ω令息は、αの旦那様の溺愛をまだ知らない

仁茂田もに
BL
旧題:ローゼンシュタイン伯爵夫人の王太子妃教育~不仲な夫と職場が同じになりました~ オメガの地位が著しく低い国、シュテルンリヒト王国。 その王国貴族として密やかに生活するオメガ、ユーリス・ヨルク・ローゼンシュタインはある日、新しく王太子の婚約者となった平民出身のオメガ、アデル・ヴァイツェンの教育係に任命される。 王家からの勅命を断ることも出来ず、王宮に出仕することなったユーリスだが、不仲と噂されるユーリスの夫兼番のギルベルトも騎士として仕えることになっており――。 不仲であるとは思わない。けれど、好かれているとも思えない。 顔を会わせるのは三か月に一度の発情期のときだけ。 そんな夫とともにユーリスはアデルを取り巻く陰謀に巻き込まれていく。 愛情表現が下手くそすぎる不器用な攻め(α)×健気で一途なだけれど自己評価が低い受け(Ω)のふたりが、未来の王太子妃の教育係に任命されたことをきっかけに距離を縮めていくお話です。 R-18シーンには*がつきます。 本編全77話。 完結しました。 11月24日より番外編を投稿いたします。 第10回BL小説大賞にて奨励賞をいただきました。 投票してくださった方々、本当にありがとうございました!

処理中です...