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第一章

襲撃

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 今日はコアの点検があるから警備の仕事。百年に一度しかない奴。だから、正直にいうとめっちゃ緊張する。

 因みに極秘情報なのでまだ限られた人しか知らない。皆には朝食の後に説明をする。理由は勿論、コアを壊す人なんて来ないようにするため。


 五時になって、鍛錬をして、朝食を食べた。


「今日は、コアの点検日だ。今後、一切気を抜く事など許されない。みな、心してかかるように!」

「「「「はい!」」」」


 コアの点検日、そう言っただけで空気が変わった。ピリッと皆の顔が強ばる。返事もいつも以上に素敵だった。

 配置場所を指定して、マニュアルを確認して、警備を開始する。

 それぞれの警備準備が整ったか確認を終え、陛下達が居る部屋へと向かった。



 ―――



「・・・騎士団配置完了致しました。」

「ご苦労。」


 それだけ言って部屋を出る。

 めっっっっっちゃ緊張した。だって、国王陛下様と王妃様と王太子殿下と王太子殿下の婚約者様に第二王子と第一王女殿下とルドウィン様と大臣と大神官様と・・・etc。が居るんだもん。圧が、圧が凄すぎると思う。

 でもこの報告を一時間に一度しなければならない。僕も点検は初めてだから、不安が尽きない。でも、僕なら、

「・・・俺ならやれる。」

 決して気を抜かない。大丈夫だ、僕は騎士団長。名だけじゃないし、実力だって在る筈だ。まだ、まだ頑張れる。



 ──────でも起こった、三度目の報告の時に・・・


「・・・全て異常はありませんでした。引き続き警備を続けま・・・──────?!ゔっ・・・!」


 頭にキイィンとした嫌な音がガンと打ち付けられる。

 痛い!痛い痛い痛い!頭がかち割れ死にそう。死んじゃうくらい、本当に痛い。痛感耐性も有るのにどうして?可笑しい。

 陛下達の前なのにガクンと膝を付いてしまう。・・・絶え間無い痛みに耐えて居たら口から血が出ていた。

 嘘、でしょ・・・?

 僕は今日、魔力探知を城壁の外にやっている。そんな、そんな馬鹿な。可笑しいよ、なんで今、範囲内に膨大な魔力が来るのかな。

 今日はコアの点検日なのに。嫌だ痛いと言ってもこれは事実だ。コアの点検日にこの魔力達。もう、認めざる得ない。

 ぐっ・・・処理し切れない・・・頭が・・・!

 でも言わなくちゃ・・・


「どうした!」

「あ、魔力探、知しま、した。王城の正門・・・!東側にて以上あ゙、りで、す!数およそ二千人、反乱っ軍と推定します!がはっ!・・・げほっごほっ、っう、ゔ、うぷっ──────」

「何をしておるっ探知を切れ!」

「ぐっ・・・ふっ、す、みません・・・」


 そこに座って居た人達は次々に立ち上がり、信じられないと言う者も、逃げるべきだと言う者も、多数の意見が飛び交う。

 そんな中、ビービーと嫌な音が鳴る。


「っ防犯探知に反応有り!反乱軍は二手に分かれ、裏門にも移動すると予想!」


 余計にざわめきは大きくなり止まらない。陛下達も本当なのか信じられない様子だ。

 今確実に動けるのは僕だけだ。声を張り言え。


「・・・多少戦える方、々は、避難誘導をお願いします・・・!その他の方は、コア室へ、お願いしますっ。俺は、反乱軍の方へ行きます!失礼しました!『 瞬間移動 teleportation』」


 胃の中身がせり上がって来たが、どうにか気合いで押し込んだ。陛下に注意を受け魔力探知を切ったけれど吐き気は止まらない。

 おまけに口内は血の味でいっぱい、口元は血まみれである。マントの内側が赤い事に感謝して血を拭う。

 心の中で謝りながら瞬間移動を唱え正門に行った。


 レイピアを抜いて思いっきり地面に突き刺す。


「すぅっ──
『正門裏門にて反乱軍を確認!騎士団、魔術団は直ちにマニュアル通りに行動せよ!その他の者は指示に従い避難!もう一度繰り返す!正門裏門にて反乱軍を確認!騎士団、魔術団は直ちにマニュアル通りに行動せよ!その他の者は指示に従い避難!』
 ──っは、・・・」

「む、やはりライトの方が速かったか。すまないね、あれれ、ライト顔色悪くない?大丈夫か?」

「貴っ様、遅い!」


 遅れて来たのは魔術団長のハルトイル・ヴェネフィック。腰まで届く青髪のストレートヘアーを揺らして来た。

 元来魔術団とは仲の良くない騎士団だったが、僕のような魔法を使う剣士が多くなった事で仲が改善した。なので多少の面識は在るが、もうちょっと早く来てくれても良いじゃん。


「クッソ!なんでもうバレてんだよ!」

「関係ない、進め!」


 敵は見た感じ千人程。だったら一気に減らして終わりにするべきだ。喰らいたまえ・・・眠りの最高位の魔法を・・・!


「ふぅ・・・っ『 深海の眠り deep sea sleep』!」


 カッと青い光に包まれ敵の半数以上が眠った。すぐさま拘束魔法でハルトイルが縛ってくれたので、こちら側は大分楽になった筈だ。

 一気に魔力消費をしたので立ちくらみがして、立って居られない・・・

 なのに、敵は攻撃を、容赦なく放つ。まるで僕達を殺してしまうかの如く放つ。


「ガッハッハッ!『 炎の雨 rain of fire』『 風の刃 wind blade』」

「ぅ・・・!熱い!!!」「うわぁ!燃える!」

「痛っ!」「う、腕が・・・」

「『 回復の水 recovery water』!」


 敵の将軍みたいな奴が魔法を撃ちまくってくる。騎士団や魔術団は火傷を負う者や血を流す者が沢山、負傷者が止まらない。

 ・・・僕達を殺す気が在る。

 相手の攻撃の殺傷能力が高過ぎる。こうなってしまった場合・・・、僕はやらないといけないのに、手が、震える。僕にしか出来ない事だから、やらないと、いけないって、駄目だって、ちゃんと分かってるのに!

 やれ、やるんだ!僕が・・・僕しか!


「ライト!相手の殺傷能力が・・・」

「っ分かってる!!!ふっ、すうっ──
『騎士団長、レリスライト・ユルティムの名において、反乱軍への、多少の傷を認める!以上!』
 ──・・・もう後戻りは出来ないな。」


 言っちゃった。言っちゃったよ。

 思いっきり地面にレイピアを刺して、僕のレイピアで出来る伝達機能で、王城に居る皆に言っちゃったよ。


 身体が震える、怖い。

 人を傷つけるのも、傷つけられるのも。

 全部怖い。


 でも、やれ。僕ならやれる。

 辛くて、怖いんだったら──────

 いっそ笑ってしまえ。



 口角を上げて、

 レイピアを握り締めろ。

 そして、



「アハハ、アハ・・・」



 皆が思ってる、鬼の、血も涙もない、



「アハハハハハハ・・・アハハハッ!」



 騎士団長になれ──────



「フハハハハハハッ!あ~!久しぶりだから腕がなるなぁ!ほらほら雑魚共!さっさと俺にかかって来いよ!ゴミムシ以下がよぉ!貴様らなど束になっても雑魚以外の何者でもない!俺一人で充分、いや?十二分だなぁ!クフフッ、アーッハッハッハ!」


 
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