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二章〜世界文明の飛躍〜
21話「【人類】と『人間』とは何者だろうか?」
しおりを挟む人間とは何か?
古来より考えられた存在の証明。
人間とは何故出来上がり、何故繁栄してしまったのか。出来上がったことが悪いわけでも、繁栄してしまったことが悪いわけでもない。
ただ単に環境の変化に対応しただけだろうか? ただ単に四足歩行をやめ二足歩行になったからだろうか? ただ単にわずかながらの知恵を働かせてしまったからだろうか?
ただ単の偶発的な存在で終わりでいいのだろうか?
ではここに、必然的で使命があったとしたらどうだろうか?
地球という枠組みの中、全ての生物が枠組みの外にいる存在によって作られ、行動させられているとしたらどうだろうか?
自分がそう思って行動しているのが実は枠外からの指令であり、人類がそのことに気づかない。
そうであるばらば、そこには偶発的なものはなく必然的に出来上がる。何故なら、枠外の存在が決めて作るのだから。
もしそうであるならばこれほど滑稽なことはない。
喜びも怒りも悲しみも楽しみも憎しみも嬉しさも全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て全て——作り物なのだから。
どこまでもどこまでも破壊する人間は、どこまでもどこまでも創造する人間は一体何者なのだろうか?
人間もまた創られた物なのだろうか?
創られたならば誰が作ったのだろうか?
その真意を解明することは人間には出来ないだろうか?
そして、そんな人間達をいつまでもいつまでも見守っていた。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾
『いや~、しかし面白いね人間と言う物は!』
地球上のどこにも存在しない空間で声が聞こえる。それは子供のはしゃぐ声に似ており、無邪気そのものだ。
『流石に環境さが出てしまったかな? 数の多さで半年の差にしたけど⋯⋯やっぱり異世界で過ごしたダンマスの方が有利だね』
全体を俯瞰する様に、激しい戦いを繰り広げる盤上を見下ろす様に “声” は楽観的だった。
『う~ん、かと言って何か直接手を加えるのは面白くないからな。人類が気づいてくれれば助かるんだけど⋯⋯これだけの差があるんじゃあすぐには気付かないか』
“声” は知っている。
どこに何があるのか。その何がどれだけ重要なものであり、どれほどの威力を持っているのか。その姿はまるで何度もゲームを攻略した子供の様だ。
『良い線はいってるんだけど、あと少しなんだよ! その少しに気づけよ! ああ、もう! 人類ってのは本当に面倒だな!』
勝手に見ておいて勝手に騒ぎ立てる。
さながらスポーツ観戦の様にも見えなくないその様子だが、見られている方からすればどれだけ迷惑なことだろうか。
『このままだとまた魔王の一人勝ちかな。うーん、それは詰まらないな。でも、どう考えても魔王の進行の方が人類の発見より早そうだしなあ⋯⋯って、え?』
“声” が驚きを声に出したのはある事を感じ取ったからだ。それは、【ダンジョンマスター】の死。
“声” にはたとえ見ることができなかったとしても、死んでいるのか生きているのかだけは分かるようだ。
『まさか人類か!? それなら凄いね! こんな短期間でダンジョンを一つ落とすなんて! 一体どんな奴なんだろう⋯⋯って違うのかよ!』
“声” はリモコンでも持っていようなら投げつけていそうなほどにガッカリした。それは、消滅するダンジョンの出口を見ていたからだ。
まだかまだかと人類が出てくるのを期待して待っていたところ出てきたのは人類ではなくダンジョンマスターの涼宮零なのだから。
期待していた分落ち込みも激しいが、切り替えも激しかった。
『まさか人類より先にダンマスが他のダンマスを殺すとは⋯⋯これはこれで意外だよ。まさか、ダンマスの方が先に秘密に気づく⋯⋯ん?」
現れた零に感心しながらも何処か既視感を感じた“声”は記憶を遡った。
『この子は確か⋯⋯そうだ! 一番最初に見えなくなった子だ! まさかアレは⋯⋯偶然じゃなかった?』
偶然か必然か、何とも言えない情景を“声”は思い出していた。
偶然できた一瞬の隙を突かれ、偶然立っていた場所が死角となっており、偶然飛んできた何かにより、偶然当たりどころが悪く死んでしまったあの時。
偶然が偶然を呼び、偶然を連鎖させた結果、偶然が起きた。そんな馬鹿なと思うがそんなこともあるのだろうと思えてしまうのが偶然の怖いところだ。
『もしやあれは偶然じゃなかったのか? だとするならあの子は知っていた? そう言えば、あの時も⋯⋯』
“声”が思い出すのは零が響のダンジョンに乗り込んできた日——
『アドバイザーの魔物は私達に不利益をもたらす』
——思い出される一幕はただの個人的見解だと断じた光景。
『あの時は考えなかったけど、まさか⋯⋯』
“声”は改めて見える映像に目を凝らした。
種族が丸がわりしても零は人間だった時の特徴を多く引き継いでいた。
背中まで伸びた黒い髪、少々鋭い眼光、口から発せられるのは絶対零度のような冷たさを持つ声、そして極め付けは簡単には変化しない張り付いた無の表情。
『う~ん、こうやって改めて見るとこう⋯⋯既視感? デジャヴ? そんな感じがするなあ」
聞こえる声以外に情報が得られない“声”はきっと首をひねっているだろう。思い出せない指標を探しに、頼りにならない道を駆け戻りながら。
「う~ん、思い出せないな。でもやっぱり——』
散々粘ったが答えは出なかった。しかし、出ないからこそ面白みがある。
『——見たことあるなあ』
もしかしたら、偶然、意外にも。
どんな形だっていい、どんな形でも“声”にとっては退屈しのぎでしかないのだから。
『よし! なんか、ダンマス側も秘密を知ってるっぽいし特別に人類側を助けちゃおうかな』
幸か不幸か、“声”の退屈しのぎは拮抗にあった。
ダンジョンマスター側が強すぎても、人類側が強すぎても面白くない。
だからこそ、ダンジョンマスター側にとっては不幸であり、人類にとっては大きな挽回のチャンスとなった。
『君に三度目の生を授けよう! 君の願いは永遠に続く研究だったね。その願いをまた叶えようじゃないか!』
“声”によって作り出されたのは仮の器。何もない空っぽの器。しかし、そこに器を満たすものが注がれた。
『さあ行っておいで、君のしたいがままに楽しんできておいで!』
満たされた器は大きな輝きを放ち、命の芽吹きを感じさせる。それは新たなる生、それは新たなる魂。
『ふふっ、これでもっともっとゲームが面白くなるかな』
解き放たれた災禍は——『天才』。
“声”は無邪気な笑顔でその解き放たれた災禍の行く末を見守るのだった。
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