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1章〜異世界の地に立つ者達〜
6話「始まるダンジョン3」
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「⋯⋯へ、変異種」
ゼーレがポツリと呟いた。
「へ、変異種?変異種ってそんなにヤバいのか!?」
あって間もないが一変したゼーレの様子にレイジが焦る。
もしかしたら、意思疎通ができない個体なのかもしれない。
もしかしたら、今この場で急に暴れるのかもしれない。
もしかしたら、制御の聞かない個体なのかもしれない。
レイジの頭の中に最悪の事態が展開される。
「というか、そもそも変異種ってどいつだ!?」
どれも見た目は薄気味悪く最悪だ。
だが、ローブの個体は他の2体に比べて別格に凄みを感じる。
そして、焦るレイジに向かってゼーレは真剣な顔つきになって口を開いた。
「変異種って言うのはね通常の魔物と同じ姿で生まれるけど何かしら違う特徴を持つの。しかも、大体同じなのにスキルもステータスも全く違う。当然進化系統も変わってくるの。それにそれに、召喚紙で出て来た魔物は意思疎通が基本だけど召喚紙で出て来た変異種は最初からある程度の会話もできちゃうんだよ!」
ゼーレが珍しく長い文を淀みなく早口で語った。
その勢いにレイジは圧倒され、
「お、おう」
微妙な返事をするしかできなかった。
「つまり何が言いたいというとね⋯⋯」
「う、うむ」
「変異種って超激レアなの!!」
洞窟内で語尾がエコーを出すくらいに大きな声でゼーレは言った。
先程までの焦った表情、次に見せた真剣な表情、そして今はレイジが兄妹関係を認めた時以上の笑顔。
ここまでくると先程までの緊張は解け、こんなに表情が変わるのか、と考え深く思うけどしかできなくなったレイジだった。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️
「ご、ごめんなさい!」
落ち着いたゼーレの第一声である。
かなり興奮したのが恥ずかしかったのか真っ赤になった顔を下に向けたまま上げようとしない。
「いいよ別に。それだけ凄いのが出て来たなら俺も嬉しいからさ」
「うー。は、恥ずかしい⋯⋯」
ゼーレはそう言いながら顔を上げた。
顔の色はだいぶ治まっている。
「で、変異種ってどいつなんだ?」
「ローブの子だね」
「やっぱりか。で、こいつは会話できるのか?」
純粋な疑問だ。
チラッとしか見えなかったが確かにローブの下は骸骨だった。
骸骨が喋れるのか?そもそも声帯がないんだが⋯⋯。
「できると思うよ。ね?」
ゼーレはローブに向かって言葉を投げた。
「⋯⋯」
「やっぱ声帯無いんじゃムリ...」
「すこし⋯⋯なら⋯⋯でき、る⋯⋯」
「できんの!?」
掠れ掠れで、スムーズではないがきちんと会話ができる。
それも若干女声っぽく。
「ほらぁね?」
ゼーレがドヤ顔でレイジを見る。
「マジかよ。なんで?ローブの下って骸骨じゃなかったっけ?」
「わたし⋯⋯にも⋯⋯よく、わかん⋯⋯ない」
「他の子は会話できる?」
ローブの摩訶不思議な声帯を確認したゼーレは他の魔物にも声をかけた。
「⋯⋯(フルフル)」
黒タイツは首を横に振っている。
会話はできないが意思疎通はできるようだ。
そしてーー
「フェーフェッフェッフェ、さぁーっきから見してもろうたが、お主たち、面白いのぉ」
突如シワがれたお爺さんのような声で緑肌が話してきた。
え?何こいつ、何でこんなフレンドリーなの?
いや別に、フレンドリーなのを悪いと言ってるんじゃなく、見た目との差が激しすぎるんだよ。というか、見た目がキモい。
「???」
ゼーレに至っては「何だこいつ」みたいな顔してるし。
「な、なあゼーレ、こいつ何か知ってる?」
「ごめんお兄ちゃん、ゼーレも分かんない」
「フェッフェッフェ、寂しいこというのぉ。ワシぁ『餓鬼』という種族じゃよ」
「ッ!?」
『餓鬼』という名を聞いてゼーレが反応する。
「『餓鬼』と言えば六道輪廻のか?」
「フェッフェッフェ、博識じゃのぉ。その餓鬼で合ってるぞぉ」
「餓鬼⋯⋯ゼーレの記憶では凄い部類に入ってるよ」
「じゃろうなぁ」
「⋯⋯キモイけど」
「キモイんだ」
「うん、笑い方とか姿とか、格好とか、能力とか」
「⋯⋯そうか」
「フェー!さっきからキモイキモイと失礼じゃぞ!」
餓鬼は顔を真っ赤にしながら訴えて来た。
正直に言おう、キモイ。
「能力もキモイっていうけど何できんの?」
「ワシか?ワシぁどんなものでも食べることができる」
「⋯⋯そんだけ?」
「それだけじゃ」
「ショボ!!」
「ショ、ショボいじゃと!?そんなこたぁないぞ!何だって食べれるんじゃぞ!魔法も、斬撃も、全てじゃ!」
あれ?そう言われると結構強い?
「⋯⋯ただし、動けんがのぉ」
「使えねぇ!」
「し、仕方ないじゃろう!お腹が邪魔なんじゃ!」
「痩せろよ!」
この後、言い合いが続き餓鬼との親密度が若干上がった。
ゼーレがポツリと呟いた。
「へ、変異種?変異種ってそんなにヤバいのか!?」
あって間もないが一変したゼーレの様子にレイジが焦る。
もしかしたら、意思疎通ができない個体なのかもしれない。
もしかしたら、今この場で急に暴れるのかもしれない。
もしかしたら、制御の聞かない個体なのかもしれない。
レイジの頭の中に最悪の事態が展開される。
「というか、そもそも変異種ってどいつだ!?」
どれも見た目は薄気味悪く最悪だ。
だが、ローブの個体は他の2体に比べて別格に凄みを感じる。
そして、焦るレイジに向かってゼーレは真剣な顔つきになって口を開いた。
「変異種って言うのはね通常の魔物と同じ姿で生まれるけど何かしら違う特徴を持つの。しかも、大体同じなのにスキルもステータスも全く違う。当然進化系統も変わってくるの。それにそれに、召喚紙で出て来た魔物は意思疎通が基本だけど召喚紙で出て来た変異種は最初からある程度の会話もできちゃうんだよ!」
ゼーレが珍しく長い文を淀みなく早口で語った。
その勢いにレイジは圧倒され、
「お、おう」
微妙な返事をするしかできなかった。
「つまり何が言いたいというとね⋯⋯」
「う、うむ」
「変異種って超激レアなの!!」
洞窟内で語尾がエコーを出すくらいに大きな声でゼーレは言った。
先程までの焦った表情、次に見せた真剣な表情、そして今はレイジが兄妹関係を認めた時以上の笑顔。
ここまでくると先程までの緊張は解け、こんなに表情が変わるのか、と考え深く思うけどしかできなくなったレイジだった。
◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️◆◾️
「ご、ごめんなさい!」
落ち着いたゼーレの第一声である。
かなり興奮したのが恥ずかしかったのか真っ赤になった顔を下に向けたまま上げようとしない。
「いいよ別に。それだけ凄いのが出て来たなら俺も嬉しいからさ」
「うー。は、恥ずかしい⋯⋯」
ゼーレはそう言いながら顔を上げた。
顔の色はだいぶ治まっている。
「で、変異種ってどいつなんだ?」
「ローブの子だね」
「やっぱりか。で、こいつは会話できるのか?」
純粋な疑問だ。
チラッとしか見えなかったが確かにローブの下は骸骨だった。
骸骨が喋れるのか?そもそも声帯がないんだが⋯⋯。
「できると思うよ。ね?」
ゼーレはローブに向かって言葉を投げた。
「⋯⋯」
「やっぱ声帯無いんじゃムリ...」
「すこし⋯⋯なら⋯⋯でき、る⋯⋯」
「できんの!?」
掠れ掠れで、スムーズではないがきちんと会話ができる。
それも若干女声っぽく。
「ほらぁね?」
ゼーレがドヤ顔でレイジを見る。
「マジかよ。なんで?ローブの下って骸骨じゃなかったっけ?」
「わたし⋯⋯にも⋯⋯よく、わかん⋯⋯ない」
「他の子は会話できる?」
ローブの摩訶不思議な声帯を確認したゼーレは他の魔物にも声をかけた。
「⋯⋯(フルフル)」
黒タイツは首を横に振っている。
会話はできないが意思疎通はできるようだ。
そしてーー
「フェーフェッフェッフェ、さぁーっきから見してもろうたが、お主たち、面白いのぉ」
突如シワがれたお爺さんのような声で緑肌が話してきた。
え?何こいつ、何でこんなフレンドリーなの?
いや別に、フレンドリーなのを悪いと言ってるんじゃなく、見た目との差が激しすぎるんだよ。というか、見た目がキモい。
「???」
ゼーレに至っては「何だこいつ」みたいな顔してるし。
「な、なあゼーレ、こいつ何か知ってる?」
「ごめんお兄ちゃん、ゼーレも分かんない」
「フェッフェッフェ、寂しいこというのぉ。ワシぁ『餓鬼』という種族じゃよ」
「ッ!?」
『餓鬼』という名を聞いてゼーレが反応する。
「『餓鬼』と言えば六道輪廻のか?」
「フェッフェッフェ、博識じゃのぉ。その餓鬼で合ってるぞぉ」
「餓鬼⋯⋯ゼーレの記憶では凄い部類に入ってるよ」
「じゃろうなぁ」
「⋯⋯キモイけど」
「キモイんだ」
「うん、笑い方とか姿とか、格好とか、能力とか」
「⋯⋯そうか」
「フェー!さっきからキモイキモイと失礼じゃぞ!」
餓鬼は顔を真っ赤にしながら訴えて来た。
正直に言おう、キモイ。
「能力もキモイっていうけど何できんの?」
「ワシか?ワシぁどんなものでも食べることができる」
「⋯⋯そんだけ?」
「それだけじゃ」
「ショボ!!」
「ショ、ショボいじゃと!?そんなこたぁないぞ!何だって食べれるんじゃぞ!魔法も、斬撃も、全てじゃ!」
あれ?そう言われると結構強い?
「⋯⋯ただし、動けんがのぉ」
「使えねぇ!」
「し、仕方ないじゃろう!お腹が邪魔なんじゃ!」
「痩せろよ!」
この後、言い合いが続き餓鬼との親密度が若干上がった。
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