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 そうと決まれば……! と殿下と別れ自宅へと帰り、クロードを待つ。
 
 今日から暫く、祖父母にシーナの顔を見せるために両親は領地に行くと言っていた。父に「くれぐれも、くれぐれも羽目を外しすぎないように。」と念を押された。母は「やり過ぎなければ良いのよ。」と言っていたが、僕たちは今まで不良行為も夜間外出もしたことないのに不思議だ。クロードは「1ヶ月くらいゆっくりしてきたら?」とご機嫌だった。今朝出発する際も「いいか、くれぐれも、くれぐれも……!」と口酸っぱく唱えながら出かけていった。
 
 今は家令と数名のハウスキーパーがいるだけだ。家令に食事はクロードと2人で摂るので、部屋に用意してくれと伝えた。食事が終わったら食器を廊下に出しておくから、皆ゆっくり過ごしてくれとも。
 
 部屋で紅茶を飲みながら読書をしていると扉がノックされた。

「お兄様! 入っても宜しいですか?」
「クロード、どうした。」
 
 息を切らしたクロードが足早に近付いてくる。
 
「何かありましたか?」
「ん? いや、特に何も。今日からお父様たちがいないから食堂じゃなくて僕の部屋で夕食を食べないかと思って。そろそろ持ってくる時間だが。」
「その……今日はお兄様が教室にいらっしゃらなかったので……お加減が悪いのではないかと心配したのです。」
「心配させてすまない、ありがとう。体は元気だから大丈夫だよ。少し悩みがあったんだけど、解決の糸口が見えてきて……。食事が終わったらお風呂に入りながら話そう。」
「お風呂……!」
「どうした? 嫌なら止めるが……。」

 口をもごもごして反応が悪い……。やっぱりもう一緒にお風呂は卒業だろうか。

「いえ! その……お兄様が良いのであればずっとこれから80年は一緒にお風呂に入りたいです!」
「ふふふ。80年だと生きてる間はずっとだねぇ。嬉しいなぁ。」
 
 拒否されなかったことが嬉しくて、ふわふわと気持ちが浮上した。そうか、クロードもずっとお風呂に入りたいと思ってくれるほど僕のことが好きなんだ。良かった。
 安心したらお腹が空いたな……と思っていたところに、丁度ハウスキーパーが食事を持ってきた。2人で学校であったことなどを話す。
 
 暫く休憩し、部屋に備え付けてあるお風呂の準備をする。いつもは湯を張ってくれる侍従がいるが、今日はもう休めと伝えてある。
 
「じゃあ行こうか。」
「はい!」
 
 服を脱ぎ、浴室へと入る。クロードはニコラス殿下の側近となる為、剣や体術を中心に鍛えている。文官目標の自分とは体付きが違う。じっと見つめていると、「お兄様、恥ずかしいです……。」と言われ、慌てて目をそらす。弟の体に見蕩れるなんて……と脳内で自分に叱責する。
 
 シャワーを出し、頭から洗っていく。その間クロードは湯船に浸かって場所が空くのを待っていた。目を瞑って頭を洗う兄の体をクロードはじっと舐めるように見つめ、思案していた。
 
 頭を洗い終わり、体を洗おうと石鹸を手に取る。と、いつの間にかクロードが背後に立っていた。
 
「お兄様、僕が体を洗いますよ!」
 確かに小さい頃は洗いっこしていたが、学校に通いだしてからは無かった。せっかくの申し出だし……。
「じゃあお願いしようかな。」
 
 石鹸を手に取り、泡立たせる。そのまま、レイフォードの首を手で撫でた。
 
「ん! え!?」
「お兄様、どうしました?」
「え、と、タオルで洗わないの?」
「手で直接洗う方が体に優しくて、過剰に洗いすぎないので、風邪予防にも良いそうです。ニコラスもクラウス殿下と入浴する際はそうしてると言ってました。」
 
 あの王子様お二方の入浴方法だと……! 一緒にお風呂に入っているとは聞いたが、入浴方法までは知らなかった。確かに共に入浴するのは体の健康状態を見るためにも……と仰っていたから、これもその一環なのだろう。仕えるべき未来の上司であり、頼りになる先輩に倣うべきだ……。
 
「分かった! じゃあ後で僕もクロードの体洗ってあげるね!」
「本当? 多分僕は今世界で一番幸運かもしれない。」
 
 大袈裟だなぁと思いつつ、クロードに身を委ねる。少しくすぐったいが、首から背中、脇と洗われていく。マッサージをするように優しく泡立てながらゆっくりと体の隅々まで。後ろからクロードが抱きつくように胸を洗い始めた。

「あ……。」
 
 手が乳首を掠め、思わず声を上げてしまう。
 
「お兄様? 洗い方強かった?」
「ううん、大丈夫だよ。くすぐったかっただけだから」
「良かった。じゃあ他も全部洗っていくからね。力抜いてて。」
 
 全部とは? 小さい頃は背中とかお腹くらいしか洗いっこしてなかったけど……。…まさか……。
 
「ま、待ってクロード、ちょっと待って。」
「大丈夫だよお兄様、僕に任せて。」
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