1 / 14
1 仲の良い友人
しおりを挟む
パソコンとゲーム、キャプチャーソフトの準備をしてパソコンチェアに座る。もう少しで予定していた生配信の時間だ。
ゲーム実況、ゲーム配信を始めたのは大学に入ってからだった。元々ゲームが好きで、色んなゲームで遊んでいた。一人っ子だから基本はソロプレイが多かったけど、友達の家でパーティーゲームやアクションゲームもしたし、高校に入ってからはパソコンでオンラインゲームも遊び始めた。
オンラインゲームで知り合った内の一人、『浪川 颯』は同じギルドに入っていて、俺のチュートリアルに颯が手伝ってくれたことがきっかけで仲良くなった。
ウマが合った俺たちはゲーム内でよくつるむようになった。
よくあるRPGのゲームで、レベリングして楽しんだりイベントで盛り上がったり、ギルドメンバーでギルドハウスに集まり、ぐだぐだと時間の許す限りボイスチャットを楽しんでいた。でも、レベル上限解放クエストとか、固すぎる敵を倒したい時とかは、毎回颯と一緒に行った。複数人の時もあるし、2人きりの時もあった。
仲良くなってLINEでもよく会話してたら、なんとお互い近くに住んでいることが分かり、サシオフすることになった。お互い未成年だしちょっと不安もあったが、何よりも楽しみにしていた。
サシオフ当日、現れたのはモデルかと見紛うほどスタイルの良いイケメンだった。
「榎本 千紘さんですか?」
もはや聞き慣れたいつもの声がした。
「はい。榎本です。その、リトルアース・オンラインだと『千』です。」
「良かった! リアルでは初めまして、浪川 颯と言います。ゲーム内でも颯だから変わらないかな。同い年だし、颯って呼んで欲しいです。」
「あ、それなら俺のことも千紘って呼んで! そしたらどっかカフェにでも入ろっか。」
それからは颯と直接会って喋ったり、どちらかの家でゲームしたり、買い物したりするのが日常になった。受験生になると、一緒に勉強することもあった。颯も俺も、家から近い国立を第一希望にしていた。
「大学受かったら一人暮らしするつもりで、良かったら千紘とルームシェアしたいんだけど、どう? 2人なら2DKでも家賃半分でいけるし、大学近くの場所なら家賃相場そこまで高くないし、ゲームも家で一緒に出来るよ。」
「それ……楽しそう!」
俺は颯と過ごすことが楽しかったし、何より気楽だった。知り合ってまだ2年しか経ってないのに幼なじみのような兄弟のような感覚だった。
晴れて2人とも希望の大学に受かり、ルームシェアを始めた。大学は同じだが学部が違うため、朝はすれ違うこともあったけど、夜ご飯はいつも一緒に食べるようにしていた。
颯は几帳面で、俺が結構ダラしない方。俺がパンイチでゲームしたり、髪を乾かさないままテレビを見てたりすると、服を渡したりドライアーで乾かしたりしてくれる。ママじゃん。
ルームシェアを始めてから、新たに加わったルーティンがゲーム配信だ。親がいないって素晴らしい、「うるさい」って叱られないの、最高だ。大体週一回、動画投稿サイトで好きなゲームをプレイしながら配信している。顔は出さず、声だけだから親バレは勿論、友人たちにもバレてない。
颯とは一緒に配信することもあって、『リトルアース・オンライン』と同じ『千』と『颯』という名前で活動している。視聴者もそこそこ居て、最近はスパチャも貰えることもある。勿論嬉しいけど、なによりも、好きなゲームをしながら楽しく話すことが好きで続けてる。
今日は颯が遅くなるかもと言ってたから、一人で配信しようかな、とSNSのゲーム用アカウントで告知し、配信の準備をする。開始時間を予約しておく。マイクのテストもしとこう。「テステス。あー、あー。」軽く声を入れてみる。大丈夫そう。
まだ開始まで少し時間があるのでお茶でも持ってこようと部屋から出ると、帰宅した気配の無かった颯とぶつかった。
「あ! ごめん、いるの知らなくて勢い付けてリビングに出ちゃった!」
「ごめんね、オレは大丈夫だよ。千紘、鼻ぶつかってない? 赤くなってる。」
「平気。いつ帰ってたんだ? 用事で遅くなるんじゃ?」
颯が黙って俯き、弱々しく「うん……。」と逡巡したあと、何か迷っているような、不安そうな顔を俺に向けた。
「颯、こっち来て。」
俺は颯の手を引っ張り、部屋の中に戻った。
ゲーム実況、ゲーム配信を始めたのは大学に入ってからだった。元々ゲームが好きで、色んなゲームで遊んでいた。一人っ子だから基本はソロプレイが多かったけど、友達の家でパーティーゲームやアクションゲームもしたし、高校に入ってからはパソコンでオンラインゲームも遊び始めた。
オンラインゲームで知り合った内の一人、『浪川 颯』は同じギルドに入っていて、俺のチュートリアルに颯が手伝ってくれたことがきっかけで仲良くなった。
ウマが合った俺たちはゲーム内でよくつるむようになった。
よくあるRPGのゲームで、レベリングして楽しんだりイベントで盛り上がったり、ギルドメンバーでギルドハウスに集まり、ぐだぐだと時間の許す限りボイスチャットを楽しんでいた。でも、レベル上限解放クエストとか、固すぎる敵を倒したい時とかは、毎回颯と一緒に行った。複数人の時もあるし、2人きりの時もあった。
仲良くなってLINEでもよく会話してたら、なんとお互い近くに住んでいることが分かり、サシオフすることになった。お互い未成年だしちょっと不安もあったが、何よりも楽しみにしていた。
サシオフ当日、現れたのはモデルかと見紛うほどスタイルの良いイケメンだった。
「榎本 千紘さんですか?」
もはや聞き慣れたいつもの声がした。
「はい。榎本です。その、リトルアース・オンラインだと『千』です。」
「良かった! リアルでは初めまして、浪川 颯と言います。ゲーム内でも颯だから変わらないかな。同い年だし、颯って呼んで欲しいです。」
「あ、それなら俺のことも千紘って呼んで! そしたらどっかカフェにでも入ろっか。」
それからは颯と直接会って喋ったり、どちらかの家でゲームしたり、買い物したりするのが日常になった。受験生になると、一緒に勉強することもあった。颯も俺も、家から近い国立を第一希望にしていた。
「大学受かったら一人暮らしするつもりで、良かったら千紘とルームシェアしたいんだけど、どう? 2人なら2DKでも家賃半分でいけるし、大学近くの場所なら家賃相場そこまで高くないし、ゲームも家で一緒に出来るよ。」
「それ……楽しそう!」
俺は颯と過ごすことが楽しかったし、何より気楽だった。知り合ってまだ2年しか経ってないのに幼なじみのような兄弟のような感覚だった。
晴れて2人とも希望の大学に受かり、ルームシェアを始めた。大学は同じだが学部が違うため、朝はすれ違うこともあったけど、夜ご飯はいつも一緒に食べるようにしていた。
颯は几帳面で、俺が結構ダラしない方。俺がパンイチでゲームしたり、髪を乾かさないままテレビを見てたりすると、服を渡したりドライアーで乾かしたりしてくれる。ママじゃん。
ルームシェアを始めてから、新たに加わったルーティンがゲーム配信だ。親がいないって素晴らしい、「うるさい」って叱られないの、最高だ。大体週一回、動画投稿サイトで好きなゲームをプレイしながら配信している。顔は出さず、声だけだから親バレは勿論、友人たちにもバレてない。
颯とは一緒に配信することもあって、『リトルアース・オンライン』と同じ『千』と『颯』という名前で活動している。視聴者もそこそこ居て、最近はスパチャも貰えることもある。勿論嬉しいけど、なによりも、好きなゲームをしながら楽しく話すことが好きで続けてる。
今日は颯が遅くなるかもと言ってたから、一人で配信しようかな、とSNSのゲーム用アカウントで告知し、配信の準備をする。開始時間を予約しておく。マイクのテストもしとこう。「テステス。あー、あー。」軽く声を入れてみる。大丈夫そう。
まだ開始まで少し時間があるのでお茶でも持ってこようと部屋から出ると、帰宅した気配の無かった颯とぶつかった。
「あ! ごめん、いるの知らなくて勢い付けてリビングに出ちゃった!」
「ごめんね、オレは大丈夫だよ。千紘、鼻ぶつかってない? 赤くなってる。」
「平気。いつ帰ってたんだ? 用事で遅くなるんじゃ?」
颯が黙って俯き、弱々しく「うん……。」と逡巡したあと、何か迷っているような、不安そうな顔を俺に向けた。
「颯、こっち来て。」
俺は颯の手を引っ張り、部屋の中に戻った。
11
お気に入りに追加
148
あなたにおすすめの小説
好きな人が「ふつーに可愛い子がタイプ」と言っていたので、女装して迫ったら思いのほか愛されてしまった
碓氷唯
BL
白月陽葵(しろつきひなた)は、オタクとからかわれ中学高校といじめられていたが、高校の頃に具合が悪かった自分を介抱してくれた壱城悠星(いちしろゆうせい)に片想いしていた。
壱城は高校では一番の不良で白月にとっては一番近づきがたかったタイプだが、今まで関わってきた人間の中で一番優しく綺麗な心を持っていることがわかり、恋をしてからは壱城のことばかり考えてしまう。
白月はそんな壱城の好きなタイプを高校の卒業前に盗み聞きする。
壱城の好きなタイプは「ふつーに可愛い子」で、白月は「ふつーに可愛い子」になるために、自分の小柄で女顔な容姿を生かして、女装し壱城をナンパする。
男の白月には怒ってばかりだった壱城だが、女性としての白月には優しく対応してくれることに、喜びを感じ始める。
だが、女という『偽物』の自分を愛してくる壱城に、だんだん白月は辛くなっていき……。
ノンケ(?)攻め×女装健気受け。
三万文字程度で終わる短編です。
見ぃつけた。
茉莉花 香乃
BL
小学生の時、意地悪されて転校した。高校一年生の途中までは穏やかな生活だったのに、全寮制の学校に転入しなければならなくなった。そこで、出会ったのは…
他サイトにも公開しています
林檎を並べても、
ロウバイ
BL
―――彼は思い出さない。
二人で過ごした日々を忘れてしまった攻めと、そんな彼の行く先を見守る受けです。
ソウが目を覚ますと、そこは消毒の香りが充満した病室だった。自分の記憶を辿ろうとして、はたり。その手がかりとなる記憶がまったくないことに気付く。そんな時、林檎を片手にカーテンを引いてとある人物が入ってきた。
彼―――トキと名乗るその黒髪の男は、ソウが事故で記憶喪失になったことと、自身がソウの親友であると告げるが…。
紹介なんてされたくありません!
mahiro
BL
普通ならば「家族に紹介したい」と言われたら、嬉しいものなのだと思う。
けれど僕は男で目の前で平然と言ってのけたこの人物も男なわけで。
断りの言葉を言いかけた瞬間、来客を知らせるインターフォンが鳴り響き……?
最愛を亡くした男は今度こそその手を離さない
竜鳴躍
BL
愛した人がいた。自分の寿命を分け与えても、彼を庇って右目と右腕を失うことになっても。見返りはなくても。親友という立ち位置を失うことを恐れ、一線を越えることができなかった。そのうちに彼は若くして儚くなり、ただ虚しく過ごしているとき。彼の妹の子として、彼は生まれ変わった。今度こそ、彼を離さない。
<関連作>
https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/745514318
https://www.alphapolis.co.jp/novel/355043923/186571339
R18にはなりませんでした…!
短編に直しました。
初恋はおしまい
佐治尚実
BL
高校生の朝好にとって卒業までの二年間は奇跡に満ちていた。クラスで目立たず、一人の時間を大事にする日々。そんな朝好に、クラスの頂点に君臨する修司の視線が絡んでくるのが不思議でならなかった。人気者の彼の一方的で執拗な気配に朝好の気持ちは高ぶり、ついには卒業式の日に修司を呼び止める所までいく。それも修司に無神経な言葉をぶつけられてショックを受ける。彼への思いを知った朝好は成人式で修司との再会を望んだ。
高校時代の初恋をこじらせた二人が、成人式で再会する話です。珍しく攻めがツンツンしています。
※以前投稿した『初恋はおしまい』を大幅に加筆修正して再投稿しました。現在非公開の『初恋はおしまい』にお気に入りや♡をくださりありがとうございました!こちらを読んでいただけると幸いです。
今作は個人サイト、各投稿サイトにて掲載しています。
陰キャ系腐男子はキラキラ王子様とイケメン幼馴染に溺愛されています!
はやしかわともえ
BL
閲覧ありがとうございます。
まったり書いていきます。
2024.05.14
閲覧ありがとうございます。
午後4時に更新します。
よろしくお願いします。
栞、お気に入り嬉しいです。
いつもありがとうございます。
2024.05.29
閲覧ありがとうございます。
m(_ _)m
明日のおまけで完結します。
反応ありがとうございます。
とても嬉しいです。
明後日より新作が始まります。
良かったら覗いてみてください。
(^O^)
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる