解呪の魔法しか使えないからとSランクパーティーから追放された俺は、呪いをかけられていた美少女ドラゴンを拾って最強へと至る

早見羽流

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第1章 守護龍の謎

第15話 王宮魔導師と対決します

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「そんなふざけた理由で人を殺すんじゃねぇよ!」
「ふん、邪龍の手先であるドラゴンライダーに言われたくはないな!」

 その時、宿から「なにごとですかぁ?」と目を擦りながらフラウが出てきた。

「フラウ、下がってろ! こいつらは俺が倒す!」
「あいつが邪龍だ! 殺して女神様への手土産にしてやれ!」

 リーダー格の男がフラウを指さして叫ぶ。

「違います! 私は邪龍なんかじゃありません! 守護龍ですって何度言えば分かってくれるんですか!」

 フラウは目に涙を浮かべて訴えた。
 俺も頷く。

「ああ、彼女を邪龍に仕立て上げたのは他でもない女神ソフィアだぞ!」
「貴様! 女神様の敵である邪龍にくみするだけでは飽き足らず、女神様をも愚弄ぐろうするか! 罰当たりなヤツめ、地獄で後悔するといい!」

 そう言い放つと、男は腰に携えた剣を抜き放ち、俺に向かって斬りかかってきた。

「──っ! 龍鎧ドラゴンスケイル

 俺は咄嵯に龍鎧をまとうと、刀を抜いて応戦した。激しい金属音が鳴り響き、火花が散る。相手はなかなかの腕前だった。ドラゴンの力でパワーとスピードが向上した俺と互角にうちあってくる。
 相手が力任せに振り下ろしてきた一撃を受け止め、押し返すと、相手の体勢が崩れたところで腹に蹴りを入れて吹き飛ばした。そして素早く背後に回り込むと、首筋に手刀を叩き込んだ。

「ぐっ……ば、馬鹿な……」

 そう口にして気絶した男を見下すと、俺は呟いた。

「さすがにこの程度の下っ端では話にならないな……」
「ロイ、お怪我はありませんか?」

 心配そうに駆け寄ってきたフラウを見て、思わずドキッとした。彼女の顔には血がついており、服もところどころ破れていた。フラウもフラウで、他の信徒たちとやり合ったらしい。彼女が立っていた周囲には5人ほどの信徒が倒れていた。

「そっちこそ大丈夫か?」
「えっ?」
「だって……血が……」
「ああ、これのことですね」

 フラウは頬についた血を拭うと、「私は平気ですから気にしないでくださいね!」と言って微笑んだ。俺は、その笑顔を見た瞬間、胸の奥が締め付けられるような感覚に襲われた。
 俺は、フラフラと立ち上がろうとしている信徒の一人に声をかけた。

「……もういい、こんなこと止めようぜ」
「なんだと?」
「お前たちは間違っている。本当に人間に恵をもたらす存在である女神ソフィアを信じているなら、どうして村人をあんな風に殺したんだ!? 彼らが一体何をしたというんだ!!」
「黙れ!! これ以上喋ると、貴様もあの世行きだぞ!」

 そう言って武器を構え直そうとした信徒たちを、フラウが睨みつけた。すると、彼らは一瞬怯んで動きを止めてしまった。

「な、なんだこいつは……! まさか、これが邪龍の力なのか? なんて恐ろしいんだ!」
「いや違う。彼女はフラウだ。邪龍なんかじゃない!」
「ふざ、けるなぁー!!!」

 激昂して襲いかかってきた信徒を俺は軽々とあしらうと、足を払って地面に押さえつけた。

「くくく……そのうち貴様も分かるさ、邪龍にとり入ることがどういうことなのか……女神様も近いうちに力を取り戻す。そうしたら貴様らなど──ぐはっ」

 ぐだぐだとうるさかったので、俺は男の鳩尾みぞおちに拳を叩き込んで気絶させた。

「ダメだ。聞く耳を持たない」
「彼らにとって、女神こそが正義であり全てなんですよ。そしてそれに逆らうものや相容れないものは全てを悪なんです。……私やマリオンが王族に従属してた頃の女神は、信徒にそんなことを吹き込むようなことはしなかったはずなのですが……」
「──考えるのは後だ! とりあえず怪我をした村人たちの手当をするぞ!」
「はい!」

 俺たちが急いで宿の中に戻ると、そこでは無事な村人たちが次々と運び込まれてくる怪我人に懸命に治癒魔法を施していた。
 怪我人は皆重傷のようで、酷い有様だった。

「あっ、ロイ様! フラウ様! 良かった、無事だったんですね!」
「すまない、俺がついていながら……。怪我人はどれくらいいる?」
「今は20人程です。でも、これからもっと増えると思います」
「分かった。治療を手伝うよ」

 俺がそう言うと、フラウは悲しそうな表情を浮かべて首を振った。

「私のせいで罪のない人々がこんな……やっぱり私は災いをもたらす存在だったのでしょうか?」
「フラウ……」

 俺は何も言えなかった。彼女にはなんの責任もないはずだ。あるとすれば彼女を邪龍に堕とし、残虐な信徒を差し向けた女神ソフィアが悪い。

 だが、村に俺たちが訪れなければこの人たちは犠牲になることはなかったと考えると、俺とフラウのせいではないと言い切ることもできない。
 俺は彼女を一旦外に連れ出して慰めようとした。けれど、どう声をかけていいのか良いのか分からず途方に暮れていると、突然背後から声をかけられた。


「あら、また会いましたね?」

 振り向くと、黒いローブをまとった人影──首席宮廷魔導師のフリーダの姿があった。

「王宮魔導師がなぜこんなところにいるんだよ?」
「女神信徒の一部が武装して村人を襲っているという情報を得たので、様子を見に来ただけですよ」

 そう言って、フリーダは微笑んだ。

「そうか……」
「ロイさん、あなたはここで何をしているのです?」
「見ての通りだ。怪我人の手当ての手伝いをしている」
「怪我人を? ……それは、どうしてですか?」
「目の前に怪我人がいたら助けるのなんて当たり前だろ?」
「なるほど。……しかし、あなたに全ての人が救えますか?」
「……何が言いたい?」
「ここで怪我人の手当てをするよりも、もっとやるべきことがあるんじゃないですか? ドラゴンライダー?」

 フリーダは微笑んでいるが、その目は笑っていなかった。

「どういう意味だよ?」
「あなたの役目はこの国を平和に導くことでしょう。なのに、あなたは人間を守護する女神の信徒と戦おうとしている。違いますか?」
「俺は女神は間違っているという自分の意思に従って行動しているだけだ。あんたには関係ない」
「いいえ、関係ありますよ。だって、私も女神の加護を受ける王国民ですからね」

 そう言って、フリーダはニヤリと口角を上げた。

「……お前も、あいつらの仲間なのか?」
「あなたの味方だと言った覚えもありませんが?」
「なら、敵だな」

 俺はフラウを後ろに下がらせると、龍鎧を展開して腰に差していた剣を抜いた。

「……残念ですが、私も色々と忙しいのであなたの相手をしている暇はないんですけど」
「逃がさないぞ!」

 俺は素早く間合いを詰めると、フリーダに斬りかかった。すると、彼女の身体は俺の剣が届く前にフッと霞のように消えてしまった。
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