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第25話 デスナイト
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「おい、嘘だろ……あれが黒魔術……」
「はい、これが私の本領です」
ノエルが得意げに言った。
「すごいです! あんなもの初めて見ました!」
イケメンのくせに出番がなかったアルフォンスはなぜか大喜びしている。一方のクロエは信じられないという表情で固まっているようだった。俺はクロエに向き直り話しかける。
「クロエ、怪我はないな?」
「え? あ、うん、大丈夫」
クロエは我に返った様子で答える。それから、まだどこか夢心地といった様子で続けた。
「ねぇ、あのバカ乳一体何者なの? あんな大きな怪物を一瞬で倒すなんて聞いたことないんだけど」
「あいつは……というか、黒魔導師はちょっと変わってるんだ。何かを代償にして、凄まじい威力を発揮する魔法が使えるとか……」
俺は適当にはぐらかす。俺も正直黒魔導師については知らないことだらけだ。ノエルに直接聞いてくれと思う。
ノエルはというと俺たちの会話などそっちのけで、持参したパンを貪っていた。聞くと、黒魔術の発動にはかなり体力を消耗するらしい。だから、こうして食事をとることで魔力を回復させるというのだ。だが、必死の形相でパンにかじりつく姿は、まるで餓えた獣のようにしか見えない。俺はそんな彼女から目を背けたくなった。
その後もダンジョンを進み、俺たちは何体もモンスターと遭遇したが、俺とクロエが分担して倒し、順調に進んでいた。そして、ついにボスモンスターである『ジャイアント・デスナイト』がいる最下層にたどり着く。俺は魔剣を構えた。いよいよデスナイトとの戦いだ。
「よし、いくぞ」
「リッくん、気をつけてね」
クロエにそう言われると不思議な気持ちになる。なんだかこそばゆいというか、照れくさくなる。俺は頭を掻いてごまかし、クロエを置いて先に歩き出した。
階段を降り切る直前、突然横から気配を感じた。俺は即座に反応して、横に跳ぶ。すると俺が立っていた場所に突如現れた鎧をまとった巨人──『ジャイアント・デスナイト』が、振り上げた大剣を振り下ろした。俺はデスナイトの動きをかわしながら思う。
(まさか待ち伏せとは──やはりこいつ、学習しているのか?)
以前、クリストフたちと共にデスナイトと戦った時よりも、敵の動きが速く複雑になっている気がする。あの時は俺のポーションが尽きて撤退を余儀なくされたのだが、今のクリストフたちには優秀な回復術師がいるし、きっとデスナイトなんて敵じゃないだろうな。
と考えながら、俺はパーティーメンバーに指示を出した。
「ノエルとアルフォンスはデスナイトの動きを止めてくれ! 俺とクロエでひたすら殴るから」
「はい、了解しました」
「わかりました」
2人は素直に答えた。
「リジェネレーションがある俺が敵のマークを引くから、クロエはできるだけデスナイトの背後に位置取るようにしてくれ」
「う、うん……」
クロエは自信なさげに返事をした。
「それじゃいくぞ! 3・2・1……GO!!」
掛け声とともに走り出す。まず、クロエがデスナイトの背後から攻撃を始めた。そして、ノエルが魔法を唱える。俺もそれに合わせて魔剣を振るった。クロエの一撃はデスナイトを切り裂くには至らなかったが、急所を狙った短剣の一撃は、その巨体に確実にダメージを与えている。
「『アビス・アンカー』!」
一方で、ノエルが放った黒い触手のようなものがデスナイトの手足にまとわりつき、動きを封じていく。
「そこだぁぁぁっ!!」
俺はデスナイトの頭部に向かって魔剣を横なぎに振るう。
ガギィィッ!! 激しい金属音が響き渡る。そして── ブシャァッッ!! デスナイトの頭半分ほどまでを切り裂き、血しぶきが上がる。だがデスナイトはまだ倒せない。奴にはサイクロプス同様、再生能力が備わっているためすぐに元通りになってしまう。しかしそれでも着実にダメージを与えていた。このまま戦い続ければ勝てるかもしれない。このボスはここで仕留めておかなければ、いずれもっと強くなるに違いないのだから。
「グオォォォッ!!!」
デスナイトが怒り狂って吠える。
「ノエル、さっきのサイクロプスみたいにこいつを食えるか?」
ノエルは黙って首を振る。やはり、さっきの捕食はあまり格上の相手には通用しない黒魔術だったらしい。ノエルはデスナイトを押さえつけるだけでもかなり必死のようだった。アルフォンスも魔法を使って支援してくれるが、薬草師に過ぎない彼の魔法ではいかんせん火力不足だ。デスナイトの身体は固いうえに再生するため、こちらの攻撃がほとんど効かないのでは、倒すのは無理に近い。実際、これほど攻撃を加えているのに、デスナイトの頭上に浮かんでいるHPバーはほとんど減っていなかった。
(くそっ、考えろ……なにか方法があるはずだ!)
必死に打開策を探るも何も思い浮かばない……そうこうしているうちにデスナイトは再び動き始めた。ノエルの拘束魔法を引きちぎろうとするデスナイトの動きを、魔剣で足を斬りつけることでなんとか鈍らせる。だが、これではジリ貧だ。するとその時──
「リッくん危なーいっ!!」
クロエの叫び声を聞いて俺はハッとした。目の前でデスナイトの大剣が俺に迫っている。回復力が上がっている!?
「ぐあっ!?」
俺は咄嵯に後ろに跳んで回避しようとしたが、わずかに間に合わなかったようだ。肩口に鋭い痛みが走る。
「リックさん、大丈夫ですか?」
ノエルが心配そうに声をかけてくる。どうやらデスナイトが拘束から逃れようと暴れた結果、俺への攻撃も再開してしまったようだ。俺はデスナイトから離れながら言う。
「ああ、まだ動ける」
実際問題、痛いは痛いのだが、アドレナリンが出まくっているせいなのかそれほど気にならなかった。それに、HPはリジェネレーションで回復できる。
だが── ヒュンッ!! ドスッ!!
……と、何か風を切るような音とともに脇腹に熱い感触があったかと思うと視界が揺れた。俺はその場に膝をつく。そして遅れて激痛がやってきた。俺は自分の腹部を見ると、そこには大ぶりの剣が刺さっていた。
「はい、これが私の本領です」
ノエルが得意げに言った。
「すごいです! あんなもの初めて見ました!」
イケメンのくせに出番がなかったアルフォンスはなぜか大喜びしている。一方のクロエは信じられないという表情で固まっているようだった。俺はクロエに向き直り話しかける。
「クロエ、怪我はないな?」
「え? あ、うん、大丈夫」
クロエは我に返った様子で答える。それから、まだどこか夢心地といった様子で続けた。
「ねぇ、あのバカ乳一体何者なの? あんな大きな怪物を一瞬で倒すなんて聞いたことないんだけど」
「あいつは……というか、黒魔導師はちょっと変わってるんだ。何かを代償にして、凄まじい威力を発揮する魔法が使えるとか……」
俺は適当にはぐらかす。俺も正直黒魔導師については知らないことだらけだ。ノエルに直接聞いてくれと思う。
ノエルはというと俺たちの会話などそっちのけで、持参したパンを貪っていた。聞くと、黒魔術の発動にはかなり体力を消耗するらしい。だから、こうして食事をとることで魔力を回復させるというのだ。だが、必死の形相でパンにかじりつく姿は、まるで餓えた獣のようにしか見えない。俺はそんな彼女から目を背けたくなった。
その後もダンジョンを進み、俺たちは何体もモンスターと遭遇したが、俺とクロエが分担して倒し、順調に進んでいた。そして、ついにボスモンスターである『ジャイアント・デスナイト』がいる最下層にたどり着く。俺は魔剣を構えた。いよいよデスナイトとの戦いだ。
「よし、いくぞ」
「リッくん、気をつけてね」
クロエにそう言われると不思議な気持ちになる。なんだかこそばゆいというか、照れくさくなる。俺は頭を掻いてごまかし、クロエを置いて先に歩き出した。
階段を降り切る直前、突然横から気配を感じた。俺は即座に反応して、横に跳ぶ。すると俺が立っていた場所に突如現れた鎧をまとった巨人──『ジャイアント・デスナイト』が、振り上げた大剣を振り下ろした。俺はデスナイトの動きをかわしながら思う。
(まさか待ち伏せとは──やはりこいつ、学習しているのか?)
以前、クリストフたちと共にデスナイトと戦った時よりも、敵の動きが速く複雑になっている気がする。あの時は俺のポーションが尽きて撤退を余儀なくされたのだが、今のクリストフたちには優秀な回復術師がいるし、きっとデスナイトなんて敵じゃないだろうな。
と考えながら、俺はパーティーメンバーに指示を出した。
「ノエルとアルフォンスはデスナイトの動きを止めてくれ! 俺とクロエでひたすら殴るから」
「はい、了解しました」
「わかりました」
2人は素直に答えた。
「リジェネレーションがある俺が敵のマークを引くから、クロエはできるだけデスナイトの背後に位置取るようにしてくれ」
「う、うん……」
クロエは自信なさげに返事をした。
「それじゃいくぞ! 3・2・1……GO!!」
掛け声とともに走り出す。まず、クロエがデスナイトの背後から攻撃を始めた。そして、ノエルが魔法を唱える。俺もそれに合わせて魔剣を振るった。クロエの一撃はデスナイトを切り裂くには至らなかったが、急所を狙った短剣の一撃は、その巨体に確実にダメージを与えている。
「『アビス・アンカー』!」
一方で、ノエルが放った黒い触手のようなものがデスナイトの手足にまとわりつき、動きを封じていく。
「そこだぁぁぁっ!!」
俺はデスナイトの頭部に向かって魔剣を横なぎに振るう。
ガギィィッ!! 激しい金属音が響き渡る。そして── ブシャァッッ!! デスナイトの頭半分ほどまでを切り裂き、血しぶきが上がる。だがデスナイトはまだ倒せない。奴にはサイクロプス同様、再生能力が備わっているためすぐに元通りになってしまう。しかしそれでも着実にダメージを与えていた。このまま戦い続ければ勝てるかもしれない。このボスはここで仕留めておかなければ、いずれもっと強くなるに違いないのだから。
「グオォォォッ!!!」
デスナイトが怒り狂って吠える。
「ノエル、さっきのサイクロプスみたいにこいつを食えるか?」
ノエルは黙って首を振る。やはり、さっきの捕食はあまり格上の相手には通用しない黒魔術だったらしい。ノエルはデスナイトを押さえつけるだけでもかなり必死のようだった。アルフォンスも魔法を使って支援してくれるが、薬草師に過ぎない彼の魔法ではいかんせん火力不足だ。デスナイトの身体は固いうえに再生するため、こちらの攻撃がほとんど効かないのでは、倒すのは無理に近い。実際、これほど攻撃を加えているのに、デスナイトの頭上に浮かんでいるHPバーはほとんど減っていなかった。
(くそっ、考えろ……なにか方法があるはずだ!)
必死に打開策を探るも何も思い浮かばない……そうこうしているうちにデスナイトは再び動き始めた。ノエルの拘束魔法を引きちぎろうとするデスナイトの動きを、魔剣で足を斬りつけることでなんとか鈍らせる。だが、これではジリ貧だ。するとその時──
「リッくん危なーいっ!!」
クロエの叫び声を聞いて俺はハッとした。目の前でデスナイトの大剣が俺に迫っている。回復力が上がっている!?
「ぐあっ!?」
俺は咄嵯に後ろに跳んで回避しようとしたが、わずかに間に合わなかったようだ。肩口に鋭い痛みが走る。
「リックさん、大丈夫ですか?」
ノエルが心配そうに声をかけてくる。どうやらデスナイトが拘束から逃れようと暴れた結果、俺への攻撃も再開してしまったようだ。俺はデスナイトから離れながら言う。
「ああ、まだ動ける」
実際問題、痛いは痛いのだが、アドレナリンが出まくっているせいなのかそれほど気にならなかった。それに、HPはリジェネレーションで回復できる。
だが── ヒュンッ!! ドスッ!!
……と、何か風を切るような音とともに脇腹に熱い感触があったかと思うと視界が揺れた。俺はその場に膝をつく。そして遅れて激痛がやってきた。俺は自分の腹部を見ると、そこには大ぶりの剣が刺さっていた。
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