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第18話 なにか方法があるはずだ!
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「「えぇっ!?」」
「本当に、本当に申し訳ありません! わたしの力不足のせいで……」
ルナはまたもや涙を流した。俺とクロエはオロオロしながらなんとか慰めようとする。ルナの涙はしばらく止まることはなかった。
「聖フランシス教団の疑いが晴れたことで、『月下の集い』の存在意義がなくなってしまったと……」
「でも! 現に私はあそこで酷い目に遭ったのよ!?」
ルナが経緯を話し始めると、早速クロエが納得いかないとばかりに
口を挟んだ。しかし、ルナは悲しそうに首を振る。
「七聖剣第一席のオルグ様のご意向で、わたしにはもうどうすることもできません。むしろあの場で手討ちにされなかっただけでも温情だと……」
「そんな……! 七聖剣は弱いものの味方だと思っていたのに!」
ルナの話を聞いてショックを受けている様子のクロエ。確かに彼女の気持ちは痛い程よく分かった。俺も同じ気持ちだったからだ。あそこで良くないことが行われているのは明らかだ。なのに、なにもできない──しようとしない王宮はおかしいと思った。だから俺はルナに協力したんだ。なのに……。
「考えられるのは、七聖剣の中にも既に聖フランシス教団と関係を持っている者が複数いるという可能性ですね。……オルグ様は恐らくそんなことはないと思いますが」
「なんてこと……やっぱりあいつらはろくな事しないわね!」
クロエは憤りながら吐き捨てるように言う。だがその言葉に同意せざるを得なかった。俺もまさかそれほどとは思わなかった。教団が王国騎士団上層部と繋がっている以上、王宮は例え教団がクロだったとしても迂闊に手を出すことはできないのだ。
「本当にごめんなさい……このようなことになってしまって……全部わたしがいけないんです」
ルナは深く頭を下げて謝る。
「ルナさんのせいじゃないですよ。顔を上げてください」
「ですが……」
ルナはそれでも申し訳無さそうにしていたが、俺の言葉を聞くとゆっくり顔を上げた。しかし、その表情は依然として暗い。俺達に迷惑をかけてしまったと思っているようだ。しかしそんなことはどうでもいいと俺は思った。
確かに、教団や王宮のやり方は腹立たしいけれど、その不満を目の前のこの小さな女の子にぶつけても仕方の無いことだ。彼女はただ利用されただけなのだから。俺は彼女の頭を優しく撫でる。
「ルナさんは今までずっと頑張ってきました。だから今だけは、俺達の前では我慢せずに泣いていいんですよ」
「っ……! う、うわぁぁぁぁぁんっ!」
そう言うと、ルナはまた堰を切ったように泣き始めた。こんなに幼い子がこんなになるまで必死に耐えてきたんだ。俺達がそれを見て見ぬ振りはできない。それに、ルナには笑顔の方が似合うと思う。俺はそう思って微笑みかける。
「よしよし……」
クロエも今は小言は言わずに、泣きじゃくる彼女をそっと抱きしめた。しばらくルナのすすり泣く声だけが部屋の中で響いていた。
ようやく彼女が落ち着いたのは、日が沈みかけた時だった。夕方の日が射し込む部屋で、俺達はソファで並んで座りながら静かに出されたお茶を飲む。
「あの、もしよろしければ、ルナさんが聖フランシス教団と敵対するようになった原因をうかがってもいいですか?」
俺は気になっていたことを切り出した。ルナは一瞬迷った様子を見せたが、意を決したようで語り始めた。
「……実はわたし、小さい頃に母親を病気で亡くしてるんです」
「え……? あ、それは……ご愁傷さまです」
「いえ、お気になさらずに……。わたしのお母さんは難病にかかっていて……その治療のために呼ばれていたのが、聖フランシス教団の回復術師でした。確かに母は回復魔術によって病気は快方に向かいました。でも、それからしばらくすると、母の容態が急に悪化して……亡くなったのです」
なるほど。なんとも胸糞の悪い話だ。自分の母親の治療に関わっていた宗教団体を、ルナは心の底では信用できなくなっていたのだろう。
「その時の回復魔法は今ほど精度の高いものではありませんでしたし、聖フランシス教団の名前もほとんど知られてはいなかったので、誰も疑問を持つことなく教団を信じていました。もちろんわたしも」
「それで教団のことを憎むようになってしまったんですね……」
「ええ、教団の回復術師を紹介したのは、シャントゥール伯爵家でした。彼らは今、教団と深い繋がりがあると言われています」
そう言ってルナは自分の肩を抱く。よほどの恐怖を感じたに違いない。その震えは今も続いていた。
「そんなことがあったんですね……」
「教団は自分たちの責任ではないと言いますが、そんなはずはありません! だって彼らが来なければ母が死ぬことはなかったんです! 父も、その回復術師のためにかなりの財産を投じたというのに……! 結局父のお金は聖フランシス教団への寄付として消えたそうです。わたしはそれも許せなくて……」
ルナは怒りに身体を振るわせる。そんな彼女を見て、俺は何も言うことができなかった。俺も、もしルナと同じような立場ならきっと耐えられないだろう。
大切な家族を傷つけられるというのは、自分が傷つけられることよりも辛いものだ。
「でも、明確な証拠がないので、誰も教団に手を出せません。なんとかしっぽを掴んでやろうと、『月下の集い』を結成したのですが、それももう終わりのようです。わたしたちは負けたんです……」
ルナの目には悔し涙が浮かんでいた。教団に屈したこと、そして俺達を騙していたことについて自責の念に駆られているのかもしれない。
「大丈夫ですよ。まだ負けていません」
「うん、このまま諦めるなんてできない! なにか方法があるはずだよ」
「リックさん……クロエさん……ありがとうございます」
そう言うと、彼女は目尻に溜まった雫を振り払うと精一杯笑って見せた。しかしその顔はすぐに曇ってしまう。
「でも、これ以上わたしの我を通してお二人を巻き込むわけにもいきませんし……」
これ以上教団と対立し続けることは、七聖剣を敵に回すことになりかねない。ルナはそう危惧しているのだろう。
俺は必死に考えをめぐらせた。なんとか、目の前で困っているこの少女を救いたかった。これも、ポーション生成師のサガなのかもしれないな。
「ルナ嬢は俺たちを『月下の集い』のリーダーにすると言ってましたね?」
「……はい。しかしもう『月下の集い』は──」
「俺とクロエで新しいギルドを作って、聖フランシス教団と対すればいいんです」
「本当に、本当に申し訳ありません! わたしの力不足のせいで……」
ルナはまたもや涙を流した。俺とクロエはオロオロしながらなんとか慰めようとする。ルナの涙はしばらく止まることはなかった。
「聖フランシス教団の疑いが晴れたことで、『月下の集い』の存在意義がなくなってしまったと……」
「でも! 現に私はあそこで酷い目に遭ったのよ!?」
ルナが経緯を話し始めると、早速クロエが納得いかないとばかりに
口を挟んだ。しかし、ルナは悲しそうに首を振る。
「七聖剣第一席のオルグ様のご意向で、わたしにはもうどうすることもできません。むしろあの場で手討ちにされなかっただけでも温情だと……」
「そんな……! 七聖剣は弱いものの味方だと思っていたのに!」
ルナの話を聞いてショックを受けている様子のクロエ。確かに彼女の気持ちは痛い程よく分かった。俺も同じ気持ちだったからだ。あそこで良くないことが行われているのは明らかだ。なのに、なにもできない──しようとしない王宮はおかしいと思った。だから俺はルナに協力したんだ。なのに……。
「考えられるのは、七聖剣の中にも既に聖フランシス教団と関係を持っている者が複数いるという可能性ですね。……オルグ様は恐らくそんなことはないと思いますが」
「なんてこと……やっぱりあいつらはろくな事しないわね!」
クロエは憤りながら吐き捨てるように言う。だがその言葉に同意せざるを得なかった。俺もまさかそれほどとは思わなかった。教団が王国騎士団上層部と繋がっている以上、王宮は例え教団がクロだったとしても迂闊に手を出すことはできないのだ。
「本当にごめんなさい……このようなことになってしまって……全部わたしがいけないんです」
ルナは深く頭を下げて謝る。
「ルナさんのせいじゃないですよ。顔を上げてください」
「ですが……」
ルナはそれでも申し訳無さそうにしていたが、俺の言葉を聞くとゆっくり顔を上げた。しかし、その表情は依然として暗い。俺達に迷惑をかけてしまったと思っているようだ。しかしそんなことはどうでもいいと俺は思った。
確かに、教団や王宮のやり方は腹立たしいけれど、その不満を目の前のこの小さな女の子にぶつけても仕方の無いことだ。彼女はただ利用されただけなのだから。俺は彼女の頭を優しく撫でる。
「ルナさんは今までずっと頑張ってきました。だから今だけは、俺達の前では我慢せずに泣いていいんですよ」
「っ……! う、うわぁぁぁぁぁんっ!」
そう言うと、ルナはまた堰を切ったように泣き始めた。こんなに幼い子がこんなになるまで必死に耐えてきたんだ。俺達がそれを見て見ぬ振りはできない。それに、ルナには笑顔の方が似合うと思う。俺はそう思って微笑みかける。
「よしよし……」
クロエも今は小言は言わずに、泣きじゃくる彼女をそっと抱きしめた。しばらくルナのすすり泣く声だけが部屋の中で響いていた。
ようやく彼女が落ち着いたのは、日が沈みかけた時だった。夕方の日が射し込む部屋で、俺達はソファで並んで座りながら静かに出されたお茶を飲む。
「あの、もしよろしければ、ルナさんが聖フランシス教団と敵対するようになった原因をうかがってもいいですか?」
俺は気になっていたことを切り出した。ルナは一瞬迷った様子を見せたが、意を決したようで語り始めた。
「……実はわたし、小さい頃に母親を病気で亡くしてるんです」
「え……? あ、それは……ご愁傷さまです」
「いえ、お気になさらずに……。わたしのお母さんは難病にかかっていて……その治療のために呼ばれていたのが、聖フランシス教団の回復術師でした。確かに母は回復魔術によって病気は快方に向かいました。でも、それからしばらくすると、母の容態が急に悪化して……亡くなったのです」
なるほど。なんとも胸糞の悪い話だ。自分の母親の治療に関わっていた宗教団体を、ルナは心の底では信用できなくなっていたのだろう。
「その時の回復魔法は今ほど精度の高いものではありませんでしたし、聖フランシス教団の名前もほとんど知られてはいなかったので、誰も疑問を持つことなく教団を信じていました。もちろんわたしも」
「それで教団のことを憎むようになってしまったんですね……」
「ええ、教団の回復術師を紹介したのは、シャントゥール伯爵家でした。彼らは今、教団と深い繋がりがあると言われています」
そう言ってルナは自分の肩を抱く。よほどの恐怖を感じたに違いない。その震えは今も続いていた。
「そんなことがあったんですね……」
「教団は自分たちの責任ではないと言いますが、そんなはずはありません! だって彼らが来なければ母が死ぬことはなかったんです! 父も、その回復術師のためにかなりの財産を投じたというのに……! 結局父のお金は聖フランシス教団への寄付として消えたそうです。わたしはそれも許せなくて……」
ルナは怒りに身体を振るわせる。そんな彼女を見て、俺は何も言うことができなかった。俺も、もしルナと同じような立場ならきっと耐えられないだろう。
大切な家族を傷つけられるというのは、自分が傷つけられることよりも辛いものだ。
「でも、明確な証拠がないので、誰も教団に手を出せません。なんとかしっぽを掴んでやろうと、『月下の集い』を結成したのですが、それももう終わりのようです。わたしたちは負けたんです……」
ルナの目には悔し涙が浮かんでいた。教団に屈したこと、そして俺達を騙していたことについて自責の念に駆られているのかもしれない。
「大丈夫ですよ。まだ負けていません」
「うん、このまま諦めるなんてできない! なにか方法があるはずだよ」
「リックさん……クロエさん……ありがとうございます」
そう言うと、彼女は目尻に溜まった雫を振り払うと精一杯笑って見せた。しかしその顔はすぐに曇ってしまう。
「でも、これ以上わたしの我を通してお二人を巻き込むわけにもいきませんし……」
これ以上教団と対立し続けることは、七聖剣を敵に回すことになりかねない。ルナはそう危惧しているのだろう。
俺は必死に考えをめぐらせた。なんとか、目の前で困っているこの少女を救いたかった。これも、ポーション生成師のサガなのかもしれないな。
「ルナ嬢は俺たちを『月下の集い』のリーダーにすると言ってましたね?」
「……はい。しかしもう『月下の集い』は──」
「俺とクロエで新しいギルドを作って、聖フランシス教団と対すればいいんです」
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