上 下
71 / 100
♡変態ニンジャとエリアボス討伐♡

ギルド設立! 〜変態が多すぎる!〜

しおりを挟む
 ◇  ◆  ◇


『ヴェンゲル』の街は、ボスの部屋からミルクちゃんに乗って数十分の場所にあった。『グラツヘイム』のような城塞都市ではなく、海の近い港町だった。街の雰囲気も、石造りではあるものの白を基調としたものであり、全体的に明るい感じがする。――要するに、いい街だ。

 街に入った私たちは、それぞれおもいおもいに探索して、数十分後時計塔がある広場――噴水広場ならぬ時計広場に集合した。

 パーティメンバーを見回すと、リーダーのクラウスさんが口を開く。

「どうやら俺たちが一番乗りのようだな。プレイヤーの姿は見えなかった」

「やはり、ミルクさんとアオイちゃんのおかげで移動時間が大幅に短縮できたからでしょうね」

「あとユキノちゃんの索敵スキルと【変化(へんげ)】スキル、ココアちゃんの自爆のおかげで攻略自体も短時間で済ませられたね」

【変化】でまたしても装備が破壊されてしまったため、ユメちゃん装備を身につけているユキノちゃんと、リーナちゃんも頷いた。まあこのパーティはそういう尖った人達ばかりだからね……にしてもガチガチのトッププレイヤー達より先にボスを倒してしまったのはなんか申し訳ない気もする。


「で、皆なにか見つけたか?」

 クラウスさんの問いかけに、まずホムラちゃんが手を挙げた。

「オレは港の方を見ていったが、船に乗れそうだったぞ。NPCも多かったから、漁とかそんな感じのクエストもありそうだったし、島とかにも渡れそうだった」

「そりゃあいいな! 島かぁ……」

「青い海……白い砂浜……眩しい水着……あぁっ、ココアさんはなんて大胆な格好を!?」


 ――パシッ!!


 私とミルクちゃんとユキノちゃんは、勝手に妄想しはじめたキラくんの頭を三方向から同時に叩いた。いや、妄想するのは勝手だけど口に出すのはやめようよ……。もし砂浜があって泳げたとしてもコイツだけは連れていくのやめよっと……。


「――で、他には?」

 気を取り直して……といった様子のクラウスさん。アオイちゃんが小さく手を挙げる。

「アオイは、装備屋と魔法屋を見つけました。『グラツヘイム』には売っていないようなものもありました」

「なるほど、後で見に行こう。――他には?」

「神殿がありました。恐らくジョブチェンジとかできるかと」

「こんなの売ってたよ! ほら、拷問器具!」

「いやなんに使うのそれ!?」

 ユキノちゃんとリーナちゃんは先を争うように報告したけど、リーナちゃんに関してはあまり触れない方がいいかもしれない。
 私も一応手を挙げた。


「あとここ、天気がいいせいか暑くないですか?」

「確かに、少し暑いな」

 まあ鎧を着ているクラウスさんが暑いのは当然として……。
 立っていると勝手に首筋とか胸元とかおへその下あたりとか、結構じわじわと汗が湧いてくる。リアルではそこまで暑がりじゃなかったんだけどな……おっぱいのせいかな?
 私はワンピースの裾をバサバサして風を送り、キラくんを赤面させて楽しんだ挙句ミルクちゃんに叩かれるなどした。

「……あ、あの。……エクストラクエストがありました。一旦受注拒否してきましたけど」

「なるほど、ソラたちに先を越されないうちに受注しに行かないとな!」

 キラくんの報告が終わると、満を持したかのように、クラウスさんが得意げな顔になった。余程嬉しい報告があるらしい。場の誰もがそう思うほど嬉しそうな顔だった。――だからさっきまでひたすら報告を急かしてたんだね。


「……聞いて驚くなよ? 俺は――『ギルド協会』を見つけた!」

「――ギルド協会?」

「要するに、ってことだろ?」

 私が首を傾げると、ホムラちゃんが横から補足してくれた。クラウスさんはうんうんと頷く。ギルドとパーティってどう違うんだろう? まあでもわざわざギルドっていうシステムが作られているということは、それなりに意味があるのだろう。ギルド対抗イベントがあったりね。

「その通りだ! 助っ人のホムラとユキノは別として、それ以外の奴らは俺のギルドに入ってくれるよな……?」

 クラウスさんは一転して不安そうな顔で私たちに尋ねる。……そんな、そんな顔で尋ねられたらノーとは言えないじゃない。まあ、他に入りたいギルドもないし、私としては構わないんだけどさ。

「私、クラウスさんのギルドに入りたいです!」

「じゃあ僕も」

「わたしも」

「アオイもです!」

 うーんなんか……なんかみんな私に便乗してきた感が半端ないけれど、とりあえずキラくん、アオイちゃん、リーナちゃんもクラウスさんのギルドに入ることで決定したようだ。

「……お嬢ちゃん……みんな、ありがとう!」

 優しいクラウスさんは既に涙目だ。


「んじゃあオレはソロに戻りますかねー。でもこのパーティ、結構楽しかったぜ。またいつでも呼んでくれよな! じゃーな! あばよ!」

「私も……一旦ソラさんのところに戻ります。――リーナさん! くれぐれもココアさんに手を出さないようにしてください!」

 ホムラちゃんとユキノちゃんはクラウスさんに気を遣ったのか、手を振りながらその場から立ち去ってしまった。すると、リーナちゃんが私を見てニヤリと笑う。

「わたしも人間だし、ちょっとくらい過ちを犯すこともあるよね!」

「やめといた方がいいよ? 私の嫁はかなり凶暴だから」

 私が言うと、ミルクちゃんがすすすと音もなく私とリーナちゃんの間に割って入ってきた。おー、流石の危機察知能力! さすが嫁!


「じゃあ、ギルド設立するぞー! ついてこい!」

 意気揚々と歩き出すクラウスさんについて、私たちは街の中心部の大きな建物に連れていかれた。中には木で作られた大きなカウンターと、何やら紙がたくさん貼り付けられている掲示板、そして木のテーブルと椅子が所狭しと置かれていた。

 クラウスさんはカウンターに近寄って向こう側の茶髪のお姉さんNPCと何やら話し始める。――やがて、私の目の前にこんなメッセージが出現した。


 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━

 ギルドに加入しました!

 ~ギルド情報~
 ギルド名【エスポワール】
 ギルドLv.1
 ギルドマスター︰クラウス
 サブマスター︰ココア
 メンバー︰リーナ
 メンバー︰キラ
 メンバー︰アオイ

 ━━━━━━━━━━━━━━━━━━━
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

校長室のソファの染みを知っていますか?

フルーツパフェ
大衆娯楽
校長室ならば必ず置かれている黒いソファ。 しかしそれが何のために置かれているのか、考えたことはあるだろうか。 座面にこびりついた幾つもの染みが、その真実を物語る

朝起きたら女体化してました

たいが
恋愛
主人公の早乙女駿、朝起きると体が... ⚠誤字脱字等、めちゃくちゃあります

女の子なんてなりたくない?

我破破
恋愛
これは、「男」を取り戻す為の戦いだ――― 突如として「金の玉」を奪われ、女体化させられた桜田憧太は、「金の玉」を取り戻す為の戦いに巻き込まれてしまう。 魔法少女となった桜田憧太は大好きなあの娘に思いを告げる為、「男」を取り戻そうと奮闘するが……? ついにコミカライズ版も出ました。待望の新作を見届けよ‼ https://www.alphapolis.co.jp/manga/216382439/225307113

小学生最後の夏休みに近所に住む2つ上のお姉さんとお風呂に入った話

矢木羽研
青春
「……もしよかったら先輩もご一緒に、どうですか?」 「あら、いいのかしら」 夕食を作りに来てくれた近所のお姉さんを冗談のつもりでお風呂に誘ったら……? 微笑ましくも甘酸っぱい、ひと夏の思い出。 ※性的なシーンはありませんが裸体描写があるのでR15にしています。 ※小説家になろうでも同内容で投稿しています。 ※2022年8月の「第5回ほっこり・じんわり大賞」にエントリーしていました。

鐘ヶ岡学園女子バレー部の秘密

フロイライン
青春
名門復活を目指し厳しい練習を続ける鐘ヶ岡学園の女子バレー部 キャプテンを務める新田まどかは、身体能力を飛躍的に伸ばすため、ある行動に出るが…

蘇生魔法を授かった僕は戦闘不能の前衛(♀)を何度も復活させる

フルーツパフェ
大衆娯楽
 転移した異世界で唯一、蘇生魔法を授かった僕。  一緒にパーティーを組めば絶対に死ぬ(死んだままになる)ことがない。  そんな口コミがいつの間にか広まって、同じく異世界転移した同業者(多くは女子)から引っ張りだこに!  寛容な僕は彼女達の申し出に快諾するが条件が一つだけ。 ――実は僕、他の戦闘スキルは皆無なんです  そういうわけでパーティーメンバーが前衛に立って死ぬ気で僕を守ることになる。  大丈夫、一度死んでも蘇生魔法で復活させてあげるから。  相互利益はあるはずなのに、どこか鬼畜な匂いがするファンタジー、ここに開幕。      

GAME CHANGER 日本帝国1945からの逆襲

俊也
歴史・時代
時は1945年3月、敗色濃厚の日本軍。 今まさに沖縄に侵攻せんとする圧倒的戦力のアメリカ陸海軍を前に、日本の指導者達は若者達による航空機の自爆攻撃…特攻 で事態を打開しようとしていた。 「バカかお前ら、本当に戦争に勝つ気があるのか!?」 その男はただの学徒兵にも関わらず、平然とそう言い放ち特攻出撃を拒否した。 当初は困惑し怒り狂う日本海軍上層部であったが…!? 姉妹作「新訳 零戦戦記」共々宜しくお願い致します。 共に 第8回歴史時代小説参加しました!

Festival in Crime -犯罪の祭典-

柿の種
SF
そのVRMMOは【犯罪者】ばかり――? 新作VRMMO「Festival in Crime」。 浮遊監獄都市を舞台に、【犯罪者】となったプレイヤー達がダンジョンに潜ったり、時にプレイヤー同士で争ったりしつつ、ゲームを楽しんでプレイしていく。 そんなお話。

処理中です...