9 / 13
第一章:白銀の目覚め
第9話 言いがかり
しおりを挟む
◇ ◆ ◇
どうしてこうなってしまったのか、神というやつがいるのだとしたら小一時間問い詰めたい。
端的にいうと、俺は今ものすごく辟易している。
正直、リオンよりもめんどくさいやつが現れるとは──しかもそいつと組むことになるとは思っていなかった。
「聞いてますか? あなたに言っているんですよ? 外崎遥斗くん」
今、俺の目の前で腰に手を当てながらプンスカと怒っているのは兼平 鞠亜。またの名を『イインチョ』という。由来は、こいつがクラスの学級委員長だからだ。
背格好は至って平凡。ゆるふわな茶髪のセミロングに清楚系のオーラを着込んでいる、いわゆる『優等生キャラ』というやつだ。
さて、なぜ俺が鞠亜に絡まれているかというと、時を少し遡らねばならない。
里見リオンと劇的な出会いをした翌日、俺たちのクラスでは昨日の壁内実習を踏まえた『トルペ分け』が行われていた。『トルペ』というのは魔法士が蝕と戦闘を行うにあたって、役割ごとに弱点を補いあいながら効率的に任務を遂行できるように構成する集団のこと。──平たく言えばチームだ。
で、その場で問題になったのが、昨日教官の目を盗んで単独行動をした俺とリオンの扱い。そんな問題児と同じトルペになりたい者などいるはずがなく、俺たちは図らずも溢れ者になってしまった。
俺としては、多少扱いづらさがあるとはいえ腕は確かなリオンと組むこと自体に問題はなかったのだが、トルペの最小人数は三人と決められており、誰かこの問題児たちと組んでやってくれと教官が目をつけたのが学級委員長の鞠亜だったというわけだ。
仲良しの生徒と既にトルペを結成していた鞠亜は最初こそ嫌がる素振りを見せたものの、教官の「お前にしかできない」という言葉で謎のスイッチが入り、やる気満々といった様子で俺とリオンと組むことを承諾してくれた。
──とまあそこまではいいのだ。
問題はその後。鞠亜に昨日のことを根掘り葉掘り尋ねられたリオンは、俺の妨害をものともせずにかなり独自解釈を加えながら昨日の出来事をあることないこと洗いざらい話してしまった。──もちろんその後の俺の部屋での出来事も余すことなく……だ。
で、リオンの独自解釈満載の話を信じ込んでしまった鞠亜が「何やってるんですか外崎くんは!」と怒っているわけである。
「聞いてるぞ」
「わ、私はある程度男の子の気持ちも理解しようとしてるつもりですし、外崎くんがそういう年頃なのも理解してるつもりですが! いくらなんでも! いくらなんでも無抵抗な女の子を部屋に連れ込んで、は、裸にするなんて! ハレンチです! 変態!」
鞠亜はこともあろうに自分で口にした言葉によって真っ赤に赤面しながらまくし立てている。これは収まりがつきそうにない。
「だからどうしてそうなる!? 違うって言ってるだろ?」
「里見さんが嘘ついてるっていうんですか!?」
「そうだよ!」
「里見さん、そうなんですか?」
リオンはしれっと首を振る。
「私、嘘ついてないよ?」
「ほら、里見さんもこう言ってるじゃないですか!」
「もし嘘だったとして、本人にきいても嘘だって答えるか!?」
まったく、とんだ言いがかりだ。口からでまかせを言うリオンもそうだが、それを信じてしまう鞠亜も鞠亜だ。正直、ボケキャラ二人を相手できる自信はないぞ?
「とりあえず外崎くん、あなたは要注意人物としてマークしておきますので!」
「あぁ、勝手にしろよ……でも何度も言うが俺はこいつが言っているようなことはしてないからな!」
リオンを指さしながら主張すると、完全に蚊帳の外を気取っていたリオンがポロッと呟いた。
「それなら、実力で示してみればいいじゃない?」
「……ん?」
「昔から、『強い者が正義』って言うじゃない」
「いやちょっと待て、勝手に仕切らないでくれるか?」
やっとリオンの思惑が理解できた。こいつは口うるさそうな鞠亜の標的を自分に絞らせないために俺を囮として使っているわけだ。さすがスナイパー、やることがえげつない!
「不満があるなら実力で示しなさいよハルト。──少なくとも私は今までそうしてきたわ」
「Sランク魔法士様の価値観に一般人の俺を当てはめないでもらえるか!?」
「──その呼び方やめてって言ってるでしょ?」
ムスッと膨れたリオンはそのまま口を閉ざしてしまった。が、嫌な予感がして鞠亜の方を窺うと、このノリと勢いだけで生きてそうな学級委員長様は目を爛々と輝かせていた。
「いいですね! 模擬戦しましょうか!」
「何故そこでこんなふざけた提案に乗る!?」
「えっ、だって私Sランクの里見さんには逆立ちしても勝てませんから、外崎くんに勝ってせめてトルペの中の立場を確立させようと──」
「──本音が漏れてるぞ学級委員長……」
鞠亜はハッとして口元を押えたがもう後の祭りだ。こいつがその真っ黒な腹の中で何を考えているのかわかった気がする。
「はい、決まりー! ちょうど『盾』の強度を確かめておきたかったところだし、マリアも私と組みたいならどこまでやれるか見せてよ」
リオンこいつ……どさくさに紛れて俺の事を『盾』って表現したな……! まあ事実なんですけどね。マナの出力が足りない俺にできることといったらせいぜい時間稼ぎと陽動くらいだ。鞠亜の実力がどれほどかは分からないが、少なくとも俺よりはランク上だろう。
つまり俺は鞠亜には勝てない! 以上!
こうして半ば強制的に俺と兼平鞠亜の模擬戦が行われることになった。
よくもまあ俺の周りにはこうも訳の分からないやつが集まるものだと辟易したものだが、これはまだ序の口だったということに、この時はまだ気づくはずもなかった。
◇ ◆ ◇
学級委員長の鞠亜と『問題児』の俺が模擬戦を行うということは、瞬く間にクラス中──そればかりか学院中に知れ渡り、放課後の体育館に集合した時には野次馬の数が半端ないことになっていた。皆、2階のギャラリー席で、アリーナに立つ俺と鞠亜を注視している。
「おい見ろよ、こりゃあ見ものだぜ? あの問題児、この間の実習の時に単独行動したバカだろ? 今度は学級委員長に喧嘩売ってるのか?」
「なんでもあのSランク魔法士の里見を部屋に連れ込んで色々したから学級委員長がお灸を据えるらしい……」
「マジか、とんでもないやつだな。でも流石に学級委員長には勝てないだろうな」
「どうかな? あの里見と行動してたってことは、それなりに腕が立つんじゃないの?」
──みたいなことをどうせ野次馬たちは話しているんだろうな!
俺がここで負ければそんな誤解は解けないままだ。
「ルールは『アリアリ』でいいですね?」
2メートルほどの間を空けて俺と対峙している鞠亜が声をかけてくる。ちなみに『アリアリ』とは、デバイスの攻撃の他に殴る蹴るの体術からあらゆる攻撃まで『なんでもアリ』ということだ。
マナの出力が弱い俺にとっては願ってもない条件だが、鞠亜がわざわざこのルールを指定してくるということは何か考えがあっての事かもしれない。
はたまたハンデのつもりだろうか。だとしたらナメられたものだ。
「──いいぞ」
「私が勝ったら、外崎くんは里見さんが言ったことを全て認めて私と里見さんに謝罪すること、外崎くんが勝ったら私はあなたの主張を信用して謝罪します。──これでいいですね?」
「あぁ、十分だ」
俺はデバイス『雷電』を構える。ちなみに出力は最低限まで絞ってある。いくら俺でも人間相手に最高火力を出す必要はない。それよりも重要なのは手数だ。──向こうも恐らくそれを考えているだろう。
鞠亜は頭の上に乗せていたゴーグルのようなものを目元に装着すると、アサルトライフル型のデバイスを構える。
「あー、えっと。今回の審判は私がやるから。お互い先に膝をついたほうが負けってことで」
高みの見物を決め込んでいるリオンは審判に名乗り出た。もし俺が勝ったら一番抗議したいのはこいつだ。こいつがいなければこんなややこしいことにはならなかったはずなのに。
まあ、リオンがいなかったら恐らく今頃俺の命は無かったのだが。──その事実が余計に腹が立つ。
「あ、そういえば外崎くんのランクを聞いてませんでしたね? 私はDです」
「──Fだ」
俺の答えを聞いた鞠亜は「ふっ」とバカにしたような笑い方をした。こいつ、やはりランク至上主義者か? 完全に勝利を確信したような態度になったぞ。
リオンじゃないが、ランクだけで実力を判断するような奴はあまり好かない。
(これは負けられなくなったな……)
どうしてこうなってしまったのか、神というやつがいるのだとしたら小一時間問い詰めたい。
端的にいうと、俺は今ものすごく辟易している。
正直、リオンよりもめんどくさいやつが現れるとは──しかもそいつと組むことになるとは思っていなかった。
「聞いてますか? あなたに言っているんですよ? 外崎遥斗くん」
今、俺の目の前で腰に手を当てながらプンスカと怒っているのは兼平 鞠亜。またの名を『イインチョ』という。由来は、こいつがクラスの学級委員長だからだ。
背格好は至って平凡。ゆるふわな茶髪のセミロングに清楚系のオーラを着込んでいる、いわゆる『優等生キャラ』というやつだ。
さて、なぜ俺が鞠亜に絡まれているかというと、時を少し遡らねばならない。
里見リオンと劇的な出会いをした翌日、俺たちのクラスでは昨日の壁内実習を踏まえた『トルペ分け』が行われていた。『トルペ』というのは魔法士が蝕と戦闘を行うにあたって、役割ごとに弱点を補いあいながら効率的に任務を遂行できるように構成する集団のこと。──平たく言えばチームだ。
で、その場で問題になったのが、昨日教官の目を盗んで単独行動をした俺とリオンの扱い。そんな問題児と同じトルペになりたい者などいるはずがなく、俺たちは図らずも溢れ者になってしまった。
俺としては、多少扱いづらさがあるとはいえ腕は確かなリオンと組むこと自体に問題はなかったのだが、トルペの最小人数は三人と決められており、誰かこの問題児たちと組んでやってくれと教官が目をつけたのが学級委員長の鞠亜だったというわけだ。
仲良しの生徒と既にトルペを結成していた鞠亜は最初こそ嫌がる素振りを見せたものの、教官の「お前にしかできない」という言葉で謎のスイッチが入り、やる気満々といった様子で俺とリオンと組むことを承諾してくれた。
──とまあそこまではいいのだ。
問題はその後。鞠亜に昨日のことを根掘り葉掘り尋ねられたリオンは、俺の妨害をものともせずにかなり独自解釈を加えながら昨日の出来事をあることないこと洗いざらい話してしまった。──もちろんその後の俺の部屋での出来事も余すことなく……だ。
で、リオンの独自解釈満載の話を信じ込んでしまった鞠亜が「何やってるんですか外崎くんは!」と怒っているわけである。
「聞いてるぞ」
「わ、私はある程度男の子の気持ちも理解しようとしてるつもりですし、外崎くんがそういう年頃なのも理解してるつもりですが! いくらなんでも! いくらなんでも無抵抗な女の子を部屋に連れ込んで、は、裸にするなんて! ハレンチです! 変態!」
鞠亜はこともあろうに自分で口にした言葉によって真っ赤に赤面しながらまくし立てている。これは収まりがつきそうにない。
「だからどうしてそうなる!? 違うって言ってるだろ?」
「里見さんが嘘ついてるっていうんですか!?」
「そうだよ!」
「里見さん、そうなんですか?」
リオンはしれっと首を振る。
「私、嘘ついてないよ?」
「ほら、里見さんもこう言ってるじゃないですか!」
「もし嘘だったとして、本人にきいても嘘だって答えるか!?」
まったく、とんだ言いがかりだ。口からでまかせを言うリオンもそうだが、それを信じてしまう鞠亜も鞠亜だ。正直、ボケキャラ二人を相手できる自信はないぞ?
「とりあえず外崎くん、あなたは要注意人物としてマークしておきますので!」
「あぁ、勝手にしろよ……でも何度も言うが俺はこいつが言っているようなことはしてないからな!」
リオンを指さしながら主張すると、完全に蚊帳の外を気取っていたリオンがポロッと呟いた。
「それなら、実力で示してみればいいじゃない?」
「……ん?」
「昔から、『強い者が正義』って言うじゃない」
「いやちょっと待て、勝手に仕切らないでくれるか?」
やっとリオンの思惑が理解できた。こいつは口うるさそうな鞠亜の標的を自分に絞らせないために俺を囮として使っているわけだ。さすがスナイパー、やることがえげつない!
「不満があるなら実力で示しなさいよハルト。──少なくとも私は今までそうしてきたわ」
「Sランク魔法士様の価値観に一般人の俺を当てはめないでもらえるか!?」
「──その呼び方やめてって言ってるでしょ?」
ムスッと膨れたリオンはそのまま口を閉ざしてしまった。が、嫌な予感がして鞠亜の方を窺うと、このノリと勢いだけで生きてそうな学級委員長様は目を爛々と輝かせていた。
「いいですね! 模擬戦しましょうか!」
「何故そこでこんなふざけた提案に乗る!?」
「えっ、だって私Sランクの里見さんには逆立ちしても勝てませんから、外崎くんに勝ってせめてトルペの中の立場を確立させようと──」
「──本音が漏れてるぞ学級委員長……」
鞠亜はハッとして口元を押えたがもう後の祭りだ。こいつがその真っ黒な腹の中で何を考えているのかわかった気がする。
「はい、決まりー! ちょうど『盾』の強度を確かめておきたかったところだし、マリアも私と組みたいならどこまでやれるか見せてよ」
リオンこいつ……どさくさに紛れて俺の事を『盾』って表現したな……! まあ事実なんですけどね。マナの出力が足りない俺にできることといったらせいぜい時間稼ぎと陽動くらいだ。鞠亜の実力がどれほどかは分からないが、少なくとも俺よりはランク上だろう。
つまり俺は鞠亜には勝てない! 以上!
こうして半ば強制的に俺と兼平鞠亜の模擬戦が行われることになった。
よくもまあ俺の周りにはこうも訳の分からないやつが集まるものだと辟易したものだが、これはまだ序の口だったということに、この時はまだ気づくはずもなかった。
◇ ◆ ◇
学級委員長の鞠亜と『問題児』の俺が模擬戦を行うということは、瞬く間にクラス中──そればかりか学院中に知れ渡り、放課後の体育館に集合した時には野次馬の数が半端ないことになっていた。皆、2階のギャラリー席で、アリーナに立つ俺と鞠亜を注視している。
「おい見ろよ、こりゃあ見ものだぜ? あの問題児、この間の実習の時に単独行動したバカだろ? 今度は学級委員長に喧嘩売ってるのか?」
「なんでもあのSランク魔法士の里見を部屋に連れ込んで色々したから学級委員長がお灸を据えるらしい……」
「マジか、とんでもないやつだな。でも流石に学級委員長には勝てないだろうな」
「どうかな? あの里見と行動してたってことは、それなりに腕が立つんじゃないの?」
──みたいなことをどうせ野次馬たちは話しているんだろうな!
俺がここで負ければそんな誤解は解けないままだ。
「ルールは『アリアリ』でいいですね?」
2メートルほどの間を空けて俺と対峙している鞠亜が声をかけてくる。ちなみに『アリアリ』とは、デバイスの攻撃の他に殴る蹴るの体術からあらゆる攻撃まで『なんでもアリ』ということだ。
マナの出力が弱い俺にとっては願ってもない条件だが、鞠亜がわざわざこのルールを指定してくるということは何か考えがあっての事かもしれない。
はたまたハンデのつもりだろうか。だとしたらナメられたものだ。
「──いいぞ」
「私が勝ったら、外崎くんは里見さんが言ったことを全て認めて私と里見さんに謝罪すること、外崎くんが勝ったら私はあなたの主張を信用して謝罪します。──これでいいですね?」
「あぁ、十分だ」
俺はデバイス『雷電』を構える。ちなみに出力は最低限まで絞ってある。いくら俺でも人間相手に最高火力を出す必要はない。それよりも重要なのは手数だ。──向こうも恐らくそれを考えているだろう。
鞠亜は頭の上に乗せていたゴーグルのようなものを目元に装着すると、アサルトライフル型のデバイスを構える。
「あー、えっと。今回の審判は私がやるから。お互い先に膝をついたほうが負けってことで」
高みの見物を決め込んでいるリオンは審判に名乗り出た。もし俺が勝ったら一番抗議したいのはこいつだ。こいつがいなければこんなややこしいことにはならなかったはずなのに。
まあ、リオンがいなかったら恐らく今頃俺の命は無かったのだが。──その事実が余計に腹が立つ。
「あ、そういえば外崎くんのランクを聞いてませんでしたね? 私はDです」
「──Fだ」
俺の答えを聞いた鞠亜は「ふっ」とバカにしたような笑い方をした。こいつ、やはりランク至上主義者か? 完全に勝利を確信したような態度になったぞ。
リオンじゃないが、ランクだけで実力を判断するような奴はあまり好かない。
(これは負けられなくなったな……)
0
お気に入りに追加
7
あなたにおすすめの小説
5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?
gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。
そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて
「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」
もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね?
3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。
4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。
1章が書籍になりました。
ママと中学生の僕
キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。
〖完結〗その子は私の子ではありません。どうぞ、平民の愛人とお幸せに。
藍川みいな
恋愛
愛する人と結婚した…はずだった……
結婚式を終えて帰る途中、見知らぬ男達に襲われた。
ジュラン様を庇い、顔に傷痕が残ってしまった私を、彼は醜いと言い放った。それだけではなく、彼の子を身篭った愛人を連れて来て、彼女が産む子を私達の子として育てると言い出した。
愛していた彼の本性を知った私は、復讐する決意をする。決してあなたの思い通りになんてさせない。
*設定ゆるゆるの、架空の世界のお話です。
*全16話で完結になります。
*番外編、追加しました。
魔法のせいだからって許せるわけがない
ユウユウ
ファンタジー
私は魅了魔法にかけられ、婚約者を裏切って、婚約破棄を宣言してしまった。同じように魔法にかけられても婚約者を強く愛していた者は魔法に抵抗したらしい。
すべてが明るみになり、魅了がとけた私は婚約者に謝罪してやり直そうと懇願したが、彼女はけして私を許さなかった。
夫の色のドレスを着るのをやめた結果、夫が我慢をやめてしまいました
氷雨そら
恋愛
夫の色のドレスは私には似合わない。
ある夜会、夫と一緒にいたのは夫の愛人だという噂が流れている令嬢だった。彼女は夫の瞳の色のドレスを私とは違い完璧に着こなしていた。噂が事実なのだと確信した私は、もう夫の色のドレスは着ないことに決めた。
小説家になろう様にも掲載中です
王が気づいたのはあれから十年後
基本二度寝
恋愛
王太子は妃の肩を抱き、反対の手には息子の手を握る。
妃はまだ小さい娘を抱えて、夫に寄り添っていた。
仲睦まじいその王族家族の姿は、国民にも評判がよかった。
側室を取ることもなく、子に恵まれた王家。
王太子は妃を優しく見つめ、妃も王太子を愛しく見つめ返す。
王太子は今日、父から王の座を譲り受けた。
新たな国王の誕生だった。
挙式後すぐに離婚届を手渡された私は、この結婚は予め捨てられることが確定していた事実を知らされました
結城芙由奈@12/27電子書籍配信
恋愛
【結婚した日に、「君にこれを預けておく」と離婚届を手渡されました】
今日、私は子供の頃からずっと大好きだった人と結婚した。しかし、式の後に絶望的な事を彼に言われた。
「ごめん、本当は君とは結婚したくなかったんだ。これを預けておくから、その気になったら提出してくれ」
そう言って手渡されたのは何と離婚届けだった。
そしてどこまでも冷たい態度の夫の行動に傷つけられていく私。
けれどその裏には私の知らない、ある深い事情が隠されていた。
その真意を知った時、私は―。
※暫く鬱展開が続きます
※他サイトでも投稿中
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる