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第7話 暗殺ぅぅぅっ!?
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「はぇぇ……」
私は感嘆の声を漏らした。
ギルドはモンスター退治ならモンスター退治、潜入諜報暗殺などの隠密業務なら隠密業務など、1つの分野に特化したギルドがほとんどだ。普通の人間は広範囲の分野どれも高水準の仕事を求められても不可能だからだ。……でもこの【宵の明星】はそれをやるのだという。
「依頼方法は簡単。街中に設置されている決められたポストに依頼内容と出せる報酬額を書いた紙を入れるだけ。1日1回、クロちゃんがそれを集めてあたしのところに持ってきてくれるの」
「報酬の受け取りはどうするの?」
「こっちが指定した場所に隠しておいてもらって、後で取りに行くのよ」
「でも報酬額も向こうに任せると、めちゃくちゃ安くしてくる人もいるんじゃない?」
私がそう尋ねると、ヘレナは人差し指を立てながらニッコリと笑った。
「もちろん、そういう人もいるわ。でもあたしたちも全員の依頼を受けられるわけじゃないから、依頼内容に対して報酬額が釣り合っていると思う依頼しか受けないようにしているの。……そしたら、自然とそれなりの額は提示してもらえるようになったわ」
「なるほどね……」
仮にもオリハルコンランクの冒険者グループに依頼するのだ。報酬額も相当なものを提示されないと割に合わないだろう。あえて受ける依頼を絞ることによって、顧客の間で競争させ報酬を釣り上げる。……なかなかやることがしたたかだ。
「依頼を受けるのは店を閉めている間だけ。長時間かかる依頼は、メンバーでシフトを組むことで店との両立を実現しているわ。──今も2人のメンバーが遠征中なの」
「へぇ……。あ、もしかして私を雇ったのって……?」
「そう、ぶっちゃけ人手が足りないけれど、オリハルコンランクとかその同等程度の実力を持つ人なんてそうそういないし、ちょうどあなたが仕事クビになって泣いてたからスカウトしてあげたってわけ」
「そうだったのね……」
最初から料理の腕とか家事スキルを買われて雇われたわけではなく、純粋に依頼をこなすのに使えそうだから雇われたということか。なんか、謎が解けて少しだけスッキリした気がする。正直まだ胡散臭いところはあるけれど他に働くあてもないし、ヴェスパールの面々に付き合ってあげてもいいだろう。
「あ、そうそう。これ返さないとね?」
ヘレナは私の前に鞄を置いた。私が無くしたと思っていた研究資料とかが入っている鞄だ。
「やっぱりお前が盗んでたのね」
「……預かってただけよ?」
「ふーん、どうだか」
私が怪訝な視線を送ると、ヘレナはわざとらしく肩を竦めてみせる。
「でも、これで荷物は返してあげたんだし、あとはあなたの意思に委ねるわ。ここで働くか、辞めるか」
「はぁ……」
最初から選択肢はない。私はため息をつくと顔を上げた。
「まあ、王宮魔導師としてパワハラ受けてるよりは100倍楽しそうだしね。やるよ。給料もいいし」
「提示した給料の他にも、達成した依頼に応じてボーナスも出るわ。頑張ってね」
ヘレナはそう言って私の手に金貨を握らせてきた。
「ふぁっ!? 金貨!? どうして!?」
「あなた、うちのリサを助けてくれたじゃない? だからお礼よ。初依頼達成ボーナスだと思ってくれればいいわ」
「太っ腹ぁ!」
「それ、褒め言葉だとしても次あたしに言ったら殺すわよ?」
ニコニコしていたヘレナが、表情を変えないまま突然殺気をまとったので背筋が凍った。なるほど、ここの店の奴らはよく分からないところに地雷があるらしい。気をつけないと。えーっ、でもヘレナさん、確かにおっぱいは大きいですけど他はスレンダーでナイスバディーだと思いますけどね……という言葉は頭の中だけに留めて口には出さなかった。
「で、これからが本題なのだけど……」
ヘレナはそう言って身を乗り出してくる。釣られて彼女に顔を近づけると、コルネリアとリサちゃんも額を寄せてきて、4人で顔を突きあわせるような形になった。
「うちは基本的に依頼の時は2人1組で動くことにしているの。……中には危険な依頼も多いしね」
「それはまあ……そうなんだろうけど。で、私は誰と組めばいいの?」
初心者だから、やっぱり経験が豊富そうなヘレナと組ませてもらうのだろうか。その方が私としては安心ではあるのだけれど。正直、コルネリアと組んでも喧嘩ばかりしてまともに仕事ができる気がしないし、リサちゃんは頼りなさすぎる。
「そうね……アニータちゃんはまだ初心者だし、一番腕の立つ人と組んでもらった方がいいわね?」
「わかったわ。よろしく、ヘレナ」
私がホッとして右手を差し出すと、ヘレナは首を振った。
「……あなたと組むのはリサよ?」
「ふぁっ!?」
え、いや、だって……!
私はリサちゃんの顔をまじまじと見つめてしまった。
「今、『一番腕の立つ人と』って……」
「うん、だからリサと組んでもらうわ」
「えっ」
リサちゃんがこの中で一番腕が立つ? 何かの間違いではないだろうか? だって、どう見てもただのポンコツメイドなのに!
「……リサでは不安ですか?」
「うん、すごく不安!」
私が即答すると、リサちゃんは泣き出しそうになったので、慌てて訂正する。
「うそうそ! めちゃくちゃ頼りになりそう!」
「ほんとですか!?」
一転して目をキラキラさせるリサちゃん。……うーん、まだこの子がこのギルドの中で最強なんて信じられないんですけど。
「ということだからリサ、アニータちゃんの面倒見てくれる?」
「おい、アニータちゃん言うなって言ってるだろ」
「はい! アニータちゃんのご迷惑にならないように、精一杯頑張ります!」
「おめーも言うなよふざけんな」
まあ、リサちゃんが嬉しそうだしいいか。もしリサちゃんが見た目どおりのポンコツだったとしても、私がしっかりすればいいだけの話だし。クソ生意気なコルネリアと組むことを考えたら全然良い。
「それで、あなたたちの初任務だけど……うん、これがいいわね」
ヘレナは手で弄んでいた紙の束の中から1枚を取り出して私の前に置いた。
「……何?」
「暗殺任務よ」
「暗殺ぅぅぅっ!?」
私は感嘆の声を漏らした。
ギルドはモンスター退治ならモンスター退治、潜入諜報暗殺などの隠密業務なら隠密業務など、1つの分野に特化したギルドがほとんどだ。普通の人間は広範囲の分野どれも高水準の仕事を求められても不可能だからだ。……でもこの【宵の明星】はそれをやるのだという。
「依頼方法は簡単。街中に設置されている決められたポストに依頼内容と出せる報酬額を書いた紙を入れるだけ。1日1回、クロちゃんがそれを集めてあたしのところに持ってきてくれるの」
「報酬の受け取りはどうするの?」
「こっちが指定した場所に隠しておいてもらって、後で取りに行くのよ」
「でも報酬額も向こうに任せると、めちゃくちゃ安くしてくる人もいるんじゃない?」
私がそう尋ねると、ヘレナは人差し指を立てながらニッコリと笑った。
「もちろん、そういう人もいるわ。でもあたしたちも全員の依頼を受けられるわけじゃないから、依頼内容に対して報酬額が釣り合っていると思う依頼しか受けないようにしているの。……そしたら、自然とそれなりの額は提示してもらえるようになったわ」
「なるほどね……」
仮にもオリハルコンランクの冒険者グループに依頼するのだ。報酬額も相当なものを提示されないと割に合わないだろう。あえて受ける依頼を絞ることによって、顧客の間で競争させ報酬を釣り上げる。……なかなかやることがしたたかだ。
「依頼を受けるのは店を閉めている間だけ。長時間かかる依頼は、メンバーでシフトを組むことで店との両立を実現しているわ。──今も2人のメンバーが遠征中なの」
「へぇ……。あ、もしかして私を雇ったのって……?」
「そう、ぶっちゃけ人手が足りないけれど、オリハルコンランクとかその同等程度の実力を持つ人なんてそうそういないし、ちょうどあなたが仕事クビになって泣いてたからスカウトしてあげたってわけ」
「そうだったのね……」
最初から料理の腕とか家事スキルを買われて雇われたわけではなく、純粋に依頼をこなすのに使えそうだから雇われたということか。なんか、謎が解けて少しだけスッキリした気がする。正直まだ胡散臭いところはあるけれど他に働くあてもないし、ヴェスパールの面々に付き合ってあげてもいいだろう。
「あ、そうそう。これ返さないとね?」
ヘレナは私の前に鞄を置いた。私が無くしたと思っていた研究資料とかが入っている鞄だ。
「やっぱりお前が盗んでたのね」
「……預かってただけよ?」
「ふーん、どうだか」
私が怪訝な視線を送ると、ヘレナはわざとらしく肩を竦めてみせる。
「でも、これで荷物は返してあげたんだし、あとはあなたの意思に委ねるわ。ここで働くか、辞めるか」
「はぁ……」
最初から選択肢はない。私はため息をつくと顔を上げた。
「まあ、王宮魔導師としてパワハラ受けてるよりは100倍楽しそうだしね。やるよ。給料もいいし」
「提示した給料の他にも、達成した依頼に応じてボーナスも出るわ。頑張ってね」
ヘレナはそう言って私の手に金貨を握らせてきた。
「ふぁっ!? 金貨!? どうして!?」
「あなた、うちのリサを助けてくれたじゃない? だからお礼よ。初依頼達成ボーナスだと思ってくれればいいわ」
「太っ腹ぁ!」
「それ、褒め言葉だとしても次あたしに言ったら殺すわよ?」
ニコニコしていたヘレナが、表情を変えないまま突然殺気をまとったので背筋が凍った。なるほど、ここの店の奴らはよく分からないところに地雷があるらしい。気をつけないと。えーっ、でもヘレナさん、確かにおっぱいは大きいですけど他はスレンダーでナイスバディーだと思いますけどね……という言葉は頭の中だけに留めて口には出さなかった。
「で、これからが本題なのだけど……」
ヘレナはそう言って身を乗り出してくる。釣られて彼女に顔を近づけると、コルネリアとリサちゃんも額を寄せてきて、4人で顔を突きあわせるような形になった。
「うちは基本的に依頼の時は2人1組で動くことにしているの。……中には危険な依頼も多いしね」
「それはまあ……そうなんだろうけど。で、私は誰と組めばいいの?」
初心者だから、やっぱり経験が豊富そうなヘレナと組ませてもらうのだろうか。その方が私としては安心ではあるのだけれど。正直、コルネリアと組んでも喧嘩ばかりしてまともに仕事ができる気がしないし、リサちゃんは頼りなさすぎる。
「そうね……アニータちゃんはまだ初心者だし、一番腕の立つ人と組んでもらった方がいいわね?」
「わかったわ。よろしく、ヘレナ」
私がホッとして右手を差し出すと、ヘレナは首を振った。
「……あなたと組むのはリサよ?」
「ふぁっ!?」
え、いや、だって……!
私はリサちゃんの顔をまじまじと見つめてしまった。
「今、『一番腕の立つ人と』って……」
「うん、だからリサと組んでもらうわ」
「えっ」
リサちゃんがこの中で一番腕が立つ? 何かの間違いではないだろうか? だって、どう見てもただのポンコツメイドなのに!
「……リサでは不安ですか?」
「うん、すごく不安!」
私が即答すると、リサちゃんは泣き出しそうになったので、慌てて訂正する。
「うそうそ! めちゃくちゃ頼りになりそう!」
「ほんとですか!?」
一転して目をキラキラさせるリサちゃん。……うーん、まだこの子がこのギルドの中で最強なんて信じられないんですけど。
「ということだからリサ、アニータちゃんの面倒見てくれる?」
「おい、アニータちゃん言うなって言ってるだろ」
「はい! アニータちゃんのご迷惑にならないように、精一杯頑張ります!」
「おめーも言うなよふざけんな」
まあ、リサちゃんが嬉しそうだしいいか。もしリサちゃんが見た目どおりのポンコツだったとしても、私がしっかりすればいいだけの話だし。クソ生意気なコルネリアと組むことを考えたら全然良い。
「それで、あなたたちの初任務だけど……うん、これがいいわね」
ヘレナは手で弄んでいた紙の束の中から1枚を取り出して私の前に置いた。
「……何?」
「暗殺任務よ」
「暗殺ぅぅぅっ!?」
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