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第1章
ギルドでも有名な二人組 2
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「っていうか、話は変わるんだけれどさ」
「はい」
ふと、先輩の声に真剣さが帯びる。なので、俺は気を引き締めた。
なにか、仕事上で重要な話なのかも……と、思っていたのだけれど。
「あの二人組と、なにか進展あったの?」
……全く、仕事と関係のない話だった。だからこそ、俺は「はぁぁ」と大きくため息をつく。
あの二人組。名前を呼ばれなくても、もう誰なのかわかってしまう。……『あの二人組の剣士』のことだ。
「進展なんてないですよ。……そもそも、あの二人だって俺に対して本気なわけないですし」
手を組んで、その上に手を置いて。俺は思いをはせる。
先輩の言う『あの二人組』とは、ジェム・アシュフォードとクォーツ・ウィールライトという男たちのことだ。
彼らは二人組のパーティであり、共に剣士。実力はとんでもなくて、このギルドに所属している冒険者ではぶっちぎりのトップ。しかも、顔が良い。……あぁ、とにかく顔が良いんだ。
俺はきれい系のどちらかと言えば女性っぽい顔立ち。が、あの二人は精悍な男らしい顔立ちだったりする。つまり、俺とはタイプが違う。むしろ、真逆。
そんな奴らは、女性たちから熱い視線で見つめられ、男たちからは憧れと妬みの混ざった視線を向けられ、子供たちからは英雄扱い。老人の中には奴らを拝むものもいるという。
これだけ言えばわかるだろうが、あの二人は人望がすごい。とにかく、人気があるのだ。
しかし、そんなジェムとクォーツに、俺は迷惑している。……理由は簡単。
「そもそもな話、あの二人鬱陶しいんですよ」
そう、あの二人はとにかく俺にとっては鬱陶しかった。俺が受付をしている時間帯を狙ってギルドにやってくるのは、まだいい。ただ、そのたびに食事に誘ってくるし、プレゼントと言って高価なものを押し付けてくるし。挙句の果てにセクハラ紛いのことしてくるし。……俺が女だったら、訴えたら勝てるんじゃないだろうか。そう、思うほどだ。
「……うーん、僕からすればあの二人は本気の本気だと思うんだけれど……」
「なんですか、それ」
本気だったとしても、迷惑この上ない。同性間での結婚は特に問題ないし、そういうのに偏見を持つ人間はこの国では少ない。でもさぁ……。
「っていうか、あの二人に言い寄られる所為で、俺の立場あんまりよくないんですからね?」
なんていうか、女性たちからの視線は何処となくおどろおどろしいし、なんかあらぬ噂立てられているし……。
「けど、フリント君、別に同性でも問題ないでしょ?」
……それを言われると、辛い。確かに俺は、男でも女でも愛せるタイプだったりする。ただし、それには絶対的な第一条件がある。
「でも、俺は……きれいな顔のに人間しか、愛せないんですよ」
恋人に譲れない条件。それは、相手がきれいな顔であるということ。確かにあの二人はきれいな顔だろう。ただし、男らしいという一文がつく。俺の好みは、儚げな美少年。……もう全然違う。
「あの二人が、とってもきれいな美しい顔だったら、俺だって付き合ってもいいかなぁとは思うんですけれどね」
「フリント君のそういうところ、僕は好きだよ」
俺の肩をとんとたたく先輩。……視線は、憐れみを帯びている。バカにされているな。
「というか、先輩にだって譲れない恋人の条件って、ありますよね?」
ちらりと先輩の顔を見つめて、そう問いかける。先輩は「うーん」と考え込んでいた。
「僕には特にないかな。……ただ、僕のことを見つめてくれる人がいいかなぁって」
「先輩、欲がないですねぇ」
「いやいや、これでも精いっぱいの欲だよ。……それに僕、束縛激しいんだ」
……ふぅん。そんなの、初めて聞いたよ。
あんまり興味なさげにしていたら、先輩が「興味ないでしょ?」と問いかけてくる。……バレたか。
「はい」
ふと、先輩の声に真剣さが帯びる。なので、俺は気を引き締めた。
なにか、仕事上で重要な話なのかも……と、思っていたのだけれど。
「あの二人組と、なにか進展あったの?」
……全く、仕事と関係のない話だった。だからこそ、俺は「はぁぁ」と大きくため息をつく。
あの二人組。名前を呼ばれなくても、もう誰なのかわかってしまう。……『あの二人組の剣士』のことだ。
「進展なんてないですよ。……そもそも、あの二人だって俺に対して本気なわけないですし」
手を組んで、その上に手を置いて。俺は思いをはせる。
先輩の言う『あの二人組』とは、ジェム・アシュフォードとクォーツ・ウィールライトという男たちのことだ。
彼らは二人組のパーティであり、共に剣士。実力はとんでもなくて、このギルドに所属している冒険者ではぶっちぎりのトップ。しかも、顔が良い。……あぁ、とにかく顔が良いんだ。
俺はきれい系のどちらかと言えば女性っぽい顔立ち。が、あの二人は精悍な男らしい顔立ちだったりする。つまり、俺とはタイプが違う。むしろ、真逆。
そんな奴らは、女性たちから熱い視線で見つめられ、男たちからは憧れと妬みの混ざった視線を向けられ、子供たちからは英雄扱い。老人の中には奴らを拝むものもいるという。
これだけ言えばわかるだろうが、あの二人は人望がすごい。とにかく、人気があるのだ。
しかし、そんなジェムとクォーツに、俺は迷惑している。……理由は簡単。
「そもそもな話、あの二人鬱陶しいんですよ」
そう、あの二人はとにかく俺にとっては鬱陶しかった。俺が受付をしている時間帯を狙ってギルドにやってくるのは、まだいい。ただ、そのたびに食事に誘ってくるし、プレゼントと言って高価なものを押し付けてくるし。挙句の果てにセクハラ紛いのことしてくるし。……俺が女だったら、訴えたら勝てるんじゃないだろうか。そう、思うほどだ。
「……うーん、僕からすればあの二人は本気の本気だと思うんだけれど……」
「なんですか、それ」
本気だったとしても、迷惑この上ない。同性間での結婚は特に問題ないし、そういうのに偏見を持つ人間はこの国では少ない。でもさぁ……。
「っていうか、あの二人に言い寄られる所為で、俺の立場あんまりよくないんですからね?」
なんていうか、女性たちからの視線は何処となくおどろおどろしいし、なんかあらぬ噂立てられているし……。
「けど、フリント君、別に同性でも問題ないでしょ?」
……それを言われると、辛い。確かに俺は、男でも女でも愛せるタイプだったりする。ただし、それには絶対的な第一条件がある。
「でも、俺は……きれいな顔のに人間しか、愛せないんですよ」
恋人に譲れない条件。それは、相手がきれいな顔であるということ。確かにあの二人はきれいな顔だろう。ただし、男らしいという一文がつく。俺の好みは、儚げな美少年。……もう全然違う。
「あの二人が、とってもきれいな美しい顔だったら、俺だって付き合ってもいいかなぁとは思うんですけれどね」
「フリント君のそういうところ、僕は好きだよ」
俺の肩をとんとたたく先輩。……視線は、憐れみを帯びている。バカにされているな。
「というか、先輩にだって譲れない恋人の条件って、ありますよね?」
ちらりと先輩の顔を見つめて、そう問いかける。先輩は「うーん」と考え込んでいた。
「僕には特にないかな。……ただ、僕のことを見つめてくれる人がいいかなぁって」
「先輩、欲がないですねぇ」
「いやいや、これでも精いっぱいの欲だよ。……それに僕、束縛激しいんだ」
……ふぅん。そんなの、初めて聞いたよ。
あんまり興味なさげにしていたら、先輩が「興味ないでしょ?」と問いかけてくる。……バレたか。
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