上 下
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上司の財務大臣と、部下である私の秘密の関係。

第4話【※】

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 こんな風に男の人を誘うのが、恥ずかしくないわけじゃない。むしろ、恥ずかしくてたまらない。穴があったら入りたい。

 そうは思うけれど、この関係が壊れるよりはずっとマシ。……そう、思っている。

「……そうか」

 私の誘いを聞いたメイノルドさまは、私の蜜口に熱杭の先端を押し付けてくる。

 零れる私の蜜と、彼の先走り。

 メイノルドさまはそれらを混ぜるように水音を立てる。少しの間、馴染ませるように私の蜜口に先端をこすりつけて――ぐっと腰を押し進めた。

「あっ」

 一気に奥まで挿入されて、身体に確かな快楽が走る。

 自然と身体を跳ねさせれば、メイノルドさまは私の肩脚を抱きかかえる。そうすれば、彼のモノがもっと奥へと挿ってくる。

「ぁあっ! だ、だめ、だめっ……!」

 手でシーツを掻く。身体は自然と逃げようとして、腰を引こうとする。けれど、メイノルドさまから逃れられない。

 さらに、彼の情欲を孕んだ視線で見つめられると、逃げようっていう気持ちは消え失せる。

「ダメじゃないだろう。……シルケは、こうされるのが大好きだからな」

 彼がそう零して、私の奥の奥をとんとんと規則正しく突いてくる。

 それだけで、もうおかしくなりそうだった。身体が快楽を享受する。頭がメイノルドさまと繋がっていることを理解して、心の中に幸福感が染み渡っていく。

 これが、愛のない行為だということは、頭の中から放り出した。

「ぁあっ、あんっ!」

 メイノルドさまが、私の感じるところを容赦なく刺激する。

 頭の中がめちゃくちゃになって、惚けていく。

 いっそ、身体がとろけて彼と一つになれたら――と思うとほぼ同時に、彼の熱杭が私のナカから出て行くのを理解した。

「ぁっ、い、やっ!」

 自然と頭をぶんぶんと振って、出て行かないで欲しいと訴えた。

 でも、そんなの長くは続かない。もう一度奥までぐっと押し込まれて、私の身体が跳ねる。

「シルケ。……もっと声を上げろ」

 彼の動きが徐々に激しくなる。ゆっくりとした抽挿はどんどん激しくなって、しまいにはばちゅばちゅって音まで聞こえてくる。

 水音、肉同士がぶつかるような音。……頭が惚ける。とろける。もう、なにも考えたくない。

「あんっ、あ、あぁあっ! めいのるど、さまっ!」

 私の顔に、水滴が降ってくる。彼の汗だと、瞬時に理解した。

 だからなのか、唇の近くに降ってきた水滴を、自然と舌で舐めとる。

 当然だけど、汗の味。……お世辞にも美味しくはない。なのに、もっと欲しいって思う。

「っはぁ、シルケ、今日も、よくっ……」

 彼が私の名前を口にする。

 多分だけど、それだけで私の蜜壺がぎゅうって締まったと思う。その証拠に、メイノルドさまの眉間のしわが深くなる。

「やあんっ! メイノルド、さまっ……!」

 身体を容赦なく揺さぶられる。だけど、彼は遠慮している。それを悟って、私は彼の頬に手を伸ばす。

「もっと、もっと、はげし、くっ……!」

 なにも考えられないほどに、激しく愛してほしい。

 そんな意味を込めて、彼の頬に触れる。指を滑らせれば、彼が大きく目を見開いたのがわかった。

「……本当に、まるで悪魔みたいな女だな」

 彼が私に向かってそうおっしゃる。かと思えば、私の蜜壺からずるりと彼の熱杭が引き抜かれた。

「じゃあ、上に乗れ。……自分で、やれるだろ?」

 胡坐をかいた彼の上に、私の身体が載せられる。彼に支えられて、自らのナカに彼のモノをいざなう。

 ゆっくりと腰を落として、彼のモノを全て吞み込んだ。

「支えてやる。……シルケは、俺の首に腕を回していろ」

 優しくそう言われて、私はこくんと首を縦に振る。ぎゅっと彼の頭を抱きかかえるみたいに腕を首に腕を回す。

 メイノルドさまの手が、私の腰を掴む。

「んっ」

 自ら動くのは、少ないけれどハジメテじゃない。ただ、こうやって見つめ合ってると、愛し合う恋人みたいだって、錯覚してしまう。

 抱きしめ合っているみたいだ。……実際は、私が彼に抱き着いているみたいなものなのだけれど。

 ゆっくりと腰を動かす。けど、上手く動けない。彼のモノが私のいいところをこするたびに、動きが止まってしまう。

「ご、めんな、さいっ……!」

 顔を歪めて、私は必死に謝罪の言葉を口にする。

 そうすれば、メイノルドさまは私の腰を掴んで、下から突き上げてきて。

「――ぁああっ!」

 激しい快楽が、私の身体を駆け抜けて、一瞬で絶頂にまで導かれた。

「くっ、シルケ……ほら、もっと達していいぞ」

 彼がそう呟いて、私の腰を持ち直して、下から突き上げてくる。奥の奥まで貫かれて、私の身体は絶頂から戻ってこれない。

 さらに、浅ましくも私の身体は彼のモノを締め付け、精を強請っている。……わかる。だって、自分の身体だから。

(だめ、私は、この人のお子を――!)

 孕んでは、ならないのだ。

 彼だってそれはよく理解されている。だからか、出すのはいつだって外。ナカに注がれたことはない。

「ぁあっ、めい、のるどさまっ!」
「――シルケっ!」

 しばらくして、メイノルドさまがぐっと息を呑んで、私の名前を呼んで。

 私の身体の中から、ご自身のモノを引き抜く。そして、白濁を吐き出した。

「……シルケ、大丈夫か?」

 彼の身体にもたれかかって、呼吸を整える私。その私の背中を撫でながら、メイノルドさまはそう声をかけてくださる。

「んっ」

 正直、もう指一本動かしたくないほどに、疲れている。

 この後湯あみをして、身を清めないとならないのに……。

「大丈夫じゃなさそうだな」

 彼が私の身体を寝台に横たわらせる。その後、ご自身の放った白濁を真新しタオルで拭いていた。

 もちろん、私の身体についた分も。

「湯を溜めてくる。……少し、待っていろ」
「……は、ぃ」

 寝室の隣にある浴室にメイノルドさまが向かわれる。その姿を視線だけで追いつつ、瞼を落とす。

(私は、彼にとって一体どういう存在なの……?)

 身体を重ねるだけの相手……なの、だろうな。

 わかってる。わかってる。彼は私のことを「好き」とも「愛している」とも言ってくださらない。

 ……いつだって、私の身体を大切にするように抱いてくださるけれど、大切なものがない。

 しばらくして、メイノルドさまが戻ってこられた。彼は私の側に腰を下ろされる。

「十分もすれば、湯は溜まるだろう。……少し、眠るか?」

 彼が私の背中を撫でて、そう問いかけてこられる。私は、ゆるゆると首を横に振った。

「メイノルドさまと、くっついていたい……」

 面倒な女だって、わかっているのだ。だけど、このときだけは。……彼は、私のわがままを叶えてくれる。

「あぁ、わかった」

 彼が私の隣に横たわる。そのままぎゅって抱きしめられて、彼の腕の中に閉じ込められる。

「メイノルドさま……」
「……あぁ」
「わ、たしは……」

 ――好き、です。

 そう言おうとして、その言葉を呑み込む。

「なん、でもない、です」
「……そうか」

 その言葉を伝えると、関係が終わる。

 私は、何処までも臆病だ。それなのに、愛されることを望んでいる。

 ――愚かなほどに、矛盾した感情を抱えていた。
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