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第1章

きっかけというか、理由というか 8【※】

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 その後、一体何分こうしていたのか。それは俺にはわからない。

 ただ延々と上半身を愛撫されて、息が荒くなる。上着どころかシャツまではぎ取られて、今の俺は上半身を蒔田さんの眼下に晒していた。

「あ、あぁっ!」

 首筋をカプリと噛まれて、言葉にならない感覚が襲ってくる。

 弄られ続けた上半身は、色々な意味で熱を持っていて。なんかもう、自分の身体がおかしくなったんじゃないかって思ってしまう。

 そんなことを考えていると、蒔田さんの指がまた俺の乳首に触れた。すっかり硬くなって主張をする突起。その所為で、余計に快感を感じてしまう。ぎゅっとつままれて、爪でカリカリってされて。ぐりっと捏ねられて。もう、おかしくなる。

「ぁ、だめ、そこ、ばっかり……!」

 荒い呼吸を必死に整えて、拒絶の言葉を口にする。

 でも、何度拒絶しても、何度抗議をしても。蒔田さんはやめてくれない。ただ、俺の反応を楽しむかのように俺を見下ろして、淡々と愛撫してくる。

「ふぅん、ここ、ダメなんだ」

 さっきとは全然違う。何処となく甘さを含んだ声。

 それに胸がきゅんとする間もなく、蒔田さんが二本の指を俺の口の中に差し込んでくる。だらしなくよだれを垂らす口は、もう閉じる気力なんてなくて。開きっぱなしだった。

「んんっ!?」

 そのごつごつとした指が、俺の口腔内をかき回す。舌をつままれたり、頬の内側をつつかれたり。ぐるりと口腔内をかき回されて、なんかどんどん熱が溜まっていく。

 乳首を弄られて、くすぶっていた熱。それにさらに熱を蓄積されて、いっそ苦しみさえ覚えてしまう。

「嘘つきだな。気持ちいいんだろ?」

 問いかけに必死に首を横に振る。でも、彼には見抜かれている。それは、その視線だけでわかってしまう。

(苦しい、苦しい、苦しい……!)

 身体の中にある熱が、解放を待っている。嫌というほどにわかる。だって、その証拠に。

 俺の陰茎、めちゃくちゃ勃ってるもん。

「涙目で睨まれても怖くはないけれどな。……こちとら、本職だし」

 俺の必死の抵抗も、蒔田さんにはちっとも通じない。それどころか、まるで嘲笑うかのような声音で言葉を投げつけられる。

「けど、そういうのそそる。……かーわいい」

 耳元でそう囁かれて、俺の身体がびくんと反応した。思いきり跳ねた身体を、蒔田さんにソファーに縫い付けられる。

 今度はその手がするりと俺の肌を伝って、下腹部に伸びた。そのままそこを撫でられて身体が震える。

「気持ちよかったな。……ここ、こんなんになってるし」
「うぅ……」

 恥ずかしくて、たまらなかった。まさか、男に愛撫されてこうなるなんて……。

 なんか苦しくて、情けなくて。ぎゅっと目を瞑る。が、蒔田さんの手が俺のベルトに伸びるから。咄嗟に、彼の手首をつかんだ。

「や、めて……!」

 懇願するように、必死にそう言葉を発した。だって、まだ、覚悟が決まっていないんだから。

「無理、まだ、覚悟……」
「大丈夫だって」

 なにが大丈夫なのかわからない。こちとら、女で言えば処女なんだ。大丈夫なわけがない。

 恐怖からわなわなと唇を震わせていれば、蒔田さんが俺の唇に触れるだけのキスを落とした。その触れ方は、意外なほどに優しい。

「今すぐに突っ込むわけじゃない。……いろいろ、準備をする必要があるんでな」

 にんまりと笑って、そう言われる。

 そっか、今すぐに突っ込むわけじゃ……って、だったら触らなくてもいいだろ!

「だったら、触らなくても……」

 本音だった。なのに、蒔田さんは俺の言葉を笑い飛ばす。

 その後、俺の下半身に視線を向けた。

「この状態だったら辛いだろ? ……抜いてやろうって思っただけだよ」
「っつ!」

 そんなこと言われても!

 そう抗議するよりも前に、俺のベルトが手早く抜き取られた。そのままジーンズと下着をずり下ろされてしまう。

 ……これで俺、一糸まとわぬ姿って奴だ。

(蒔田さん、一つも脱いでないのに……!)

 俺だけ、こんな恥ずかしい格好をさせられているんだって思ったら、羞恥心で苦しくなる。

 しかも、蒔田さんの視線がソコに注がれているから。……余計にいたたまれない。

 そもそも俺、自分の身体に自信があるわけじゃないし……。

(男らしさ、一つもないし……)

 胸も薄いし、筋肉だってつきにくい体質だし。顔立ちだって、童顔。

 この要素で自分の身体に自信を持てる方法があるのならば、知りたい。切実に。

「ま、こういう身体つきもアリっちゃアリだな」

 しかも、この人、一人で納得してるし……。

 なんか、すっごく馬鹿にされた気分だ。

「貧相で、悪かったですね……!」

 若干八つ当たりとばかりにそう吐き捨てる。蒔田さんはけらけらと笑うだけだ。

「別に貧相って言っているわけじゃないんだけどなぁ。……でも、いいよ。そういう態度がいつまでもつか見ものだな」
「――え?」

 蒔田さんの言葉に驚いていれば、彼の手が俺の陰茎の竿に触れる。

「んっ」

 いきなりの行動に驚いて、喉からくぐもった声が漏れる。

「弄ってやるから、我慢するなよ」

 そう言って、蒔田さんは竿の部分をしごいていく。

 先走りを塗りたくるように動かす手のひらが、なんか熱くて、大きくて。

 ……俺の手のひらとは全然違う所為なのか、無性に興奮する。
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