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第1部 第2章 異世界での生活は戸惑いばかり
⑨
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レイモンドは天翔に向かって頭を下げた。対する天翔はいきなりの謝罪に驚き、固まってしまう。
「お前がこの世界に来たのは、俺が原因だ」
「――は?」
突然の種明かしに天翔は戸惑う。目を瞬かせ、レイモンドを見つめた。頭を上げた彼は、真剣な面持ちをしている。からかっている風には見えない。
「いや、正しくは俺だけではないんだが。まぁ、俺が原因の一つであることに間違いはない」
「い、いや、その」
なにがなんだかまったく理解できない。頭が追い付かない。
天翔がレイモンドを見つめていると、彼は目を閉じる。少し気持ちを落ち着かせているようだった。
「ナイトハルトからお前が来たと聞いたとき、俺くらいは謝罪をしなくちゃならないと思ったんだ」
「え、えぇっと」
「――悪かった。許してくれ」
もう一度レイモンドが頭を下げた。
(謝ってもらっても、詳しい理由を聞かないとなにもわかんないんだけど……)
ただひたすら謝ってもらっても、これでは天翔には許すかどうかの判断さえ出来ない。
まずこうなった理由を教えてほしい。
「その。一度頭を上げてください。それから、俺がここに来た理由とか、詳しく教えてくれませんか?」
出来る限り冷静な声で問いかける。レイモンドは頭を上げて、天翔をじっと見つめた。
「理由は……今は、言えない」
天翔の問いかけにレイモンドは答えをくれなかった。
「それを言うわけにはいかない。せめて、ナイトハルトの許可がないと」
「……じゃあ、俺がここに来たのはナイトハルトさんが原因なんですか?」
そうだったとすると、辻褄が合う。
ナイトハルトは天翔がこの世界に来ることを予知しているような態度だった。
ナイトハルトが天翔をここに呼んだのだろうか?
「半分正解で、半分は外れだ」
レイモンドが答えるとほぼ同時に、テオが戻ってくる。彼は紅茶の入ったカップをレイモンドの前に出す。
「お前がここに来たことは、ナイトハルトが原因だ。けど、この世界に来たことはナイトハルトだけが原因ではない」
「あの、ちょっと難しくて」
理解するのに時間がかかりそうだった。
首を横に振って素直な感想を口にすると、レイモンドは「だろうな」と言って笑う。
「アマトが今理解するべきことは、俺とナイトハルト、そしてテオはお前の味方だということだ」
「味方、ですか?」
「あぁ、そうだ。それから、これは伝えるべきか迷うが、今言っておく。お前がこの世界から元の世界に戻る手段は――現状ない」
真剣な面持ちと声で告げられた言葉も天翔はすぐには理解が出来なかった。
この世界から元の世界に戻る手段はない。薄々そうじゃないかと感じ取っていた。
(だけど、実際に突き付けられると……ちょっと)
目を伏せた。レイモンドは天翔の態度を見て、ティーカップを手に取る。
「かといって、今後その方法が出てこないとも限らない。今のこの国の技術では、無理だということだ」
レイモンドの言うことは残酷だった。
知らないほうが気は楽だったかもしれない。ただ、天翔の心の中には「知れてよかった」という気持ちが少なからずある。
(今、知ることが出来たから。俺は少しでも早くに覚悟を決めることが出来そうだ)
もちろん未練はある。やり残したこともあるし、家族のことだって心配だ。
(俺は、あのとき確かにこの世界から消えてしまいたいと願った。神さまは、それを叶えてくれたんじゃないのか?)
もしもそうだったら、この転移について天翔側に原因がないとも言い切れない。
神さまが天翔の願いを叶えたのなら、半分以上天翔が原因だろう。レイモンドやナイトハルトを責めることは出来ない。
「――レイモンドさん」
静かに名前を呼んだ。レイモンドが天翔の目を見る。
「教えてくれて、ありがとうございました。知れてよかった」
彼に向かって微笑んで、天翔は素直な気持ちを口にした。
「お前がこの世界に来たのは、俺が原因だ」
「――は?」
突然の種明かしに天翔は戸惑う。目を瞬かせ、レイモンドを見つめた。頭を上げた彼は、真剣な面持ちをしている。からかっている風には見えない。
「いや、正しくは俺だけではないんだが。まぁ、俺が原因の一つであることに間違いはない」
「い、いや、その」
なにがなんだかまったく理解できない。頭が追い付かない。
天翔がレイモンドを見つめていると、彼は目を閉じる。少し気持ちを落ち着かせているようだった。
「ナイトハルトからお前が来たと聞いたとき、俺くらいは謝罪をしなくちゃならないと思ったんだ」
「え、えぇっと」
「――悪かった。許してくれ」
もう一度レイモンドが頭を下げた。
(謝ってもらっても、詳しい理由を聞かないとなにもわかんないんだけど……)
ただひたすら謝ってもらっても、これでは天翔には許すかどうかの判断さえ出来ない。
まずこうなった理由を教えてほしい。
「その。一度頭を上げてください。それから、俺がここに来た理由とか、詳しく教えてくれませんか?」
出来る限り冷静な声で問いかける。レイモンドは頭を上げて、天翔をじっと見つめた。
「理由は……今は、言えない」
天翔の問いかけにレイモンドは答えをくれなかった。
「それを言うわけにはいかない。せめて、ナイトハルトの許可がないと」
「……じゃあ、俺がここに来たのはナイトハルトさんが原因なんですか?」
そうだったとすると、辻褄が合う。
ナイトハルトは天翔がこの世界に来ることを予知しているような態度だった。
ナイトハルトが天翔をここに呼んだのだろうか?
「半分正解で、半分は外れだ」
レイモンドが答えるとほぼ同時に、テオが戻ってくる。彼は紅茶の入ったカップをレイモンドの前に出す。
「お前がここに来たことは、ナイトハルトが原因だ。けど、この世界に来たことはナイトハルトだけが原因ではない」
「あの、ちょっと難しくて」
理解するのに時間がかかりそうだった。
首を横に振って素直な感想を口にすると、レイモンドは「だろうな」と言って笑う。
「アマトが今理解するべきことは、俺とナイトハルト、そしてテオはお前の味方だということだ」
「味方、ですか?」
「あぁ、そうだ。それから、これは伝えるべきか迷うが、今言っておく。お前がこの世界から元の世界に戻る手段は――現状ない」
真剣な面持ちと声で告げられた言葉も天翔はすぐには理解が出来なかった。
この世界から元の世界に戻る手段はない。薄々そうじゃないかと感じ取っていた。
(だけど、実際に突き付けられると……ちょっと)
目を伏せた。レイモンドは天翔の態度を見て、ティーカップを手に取る。
「かといって、今後その方法が出てこないとも限らない。今のこの国の技術では、無理だということだ」
レイモンドの言うことは残酷だった。
知らないほうが気は楽だったかもしれない。ただ、天翔の心の中には「知れてよかった」という気持ちが少なからずある。
(今、知ることが出来たから。俺は少しでも早くに覚悟を決めることが出来そうだ)
もちろん未練はある。やり残したこともあるし、家族のことだって心配だ。
(俺は、あのとき確かにこの世界から消えてしまいたいと願った。神さまは、それを叶えてくれたんじゃないのか?)
もしもそうだったら、この転移について天翔側に原因がないとも言い切れない。
神さまが天翔の願いを叶えたのなら、半分以上天翔が原因だろう。レイモンドやナイトハルトを責めることは出来ない。
「――レイモンドさん」
静かに名前を呼んだ。レイモンドが天翔の目を見る。
「教えてくれて、ありがとうございました。知れてよかった」
彼に向かって微笑んで、天翔は素直な気持ちを口にした。
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