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終 とある古ぼけた墓に刻まれた文書より

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『拝啓 勇者様』
 あなたは今どこにいるのでしょうか。
 
 この世界にいらっしゃるのですか? 
 それともここではないどこかの世界にいらっしゃるのですか? 
 はたまた、この世界でもなくどこかの世界でもない場所にいるのでしょうか。

 勇者であったあなたが、本当はこの戦争を望んでいないことは配下ともども心得ておりました。
 それを知ってもなお人民に気圧され、屈し、あなた様とシリア様を敵対関係に仕立て上げたことどうかお許しください。

 あなたが何日経っても王都に帰ってこなかったことを不思議に思った我々は見てしまったのです。
 幸せそうに、傷ひとつなく不恰好な棺の中で眠るシリア様のことを。
 
 あぁ、勇者様がやったのだな、と一目でわかりました。
 あなたでなければシリア様はあのような優しい表情をしなかったでしょう。

 どうか親愛なるお二人を分つこととなったこの世界をお恨みください。
 静止できなかった我々をお呪いください。

 ……それでも、それでもあなた様にまだご慈悲が残っているのであれば。
 どうか、今度は人類が同じ過ちを繰り返さないように見守りください。

 配下一同、これを持ってお悔やみの手紙とさせていただきます。




《了》
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