上 下
176 / 183

175

しおりを挟む
『ぐはぁっ』
 浅い一撃だが、神は青い血の流れる腹部を抑える。

『はぁはぁ……このワシが流血など……何百年ぶりかのぅ……!』

「よしっ!」
 新世界の神にも自分の剣は通用すると確信したアキラ。

 静かな怒りを燃やす神。
『仕方ないのぅ……無駄なエネルギーは使いたくなかったが……本気を出そう!』
 神の体から煙のようにエネルギーが吹き出す。

「な、なんだ……!?」
 神の体は青から赤へと姿を変えた。魔族の本気状態だ。

「く……今やるしかないんだっ!」
 アキラは渾身の力を込めて剣で突く。
『カンッ!』
 しかし、何か硬いモノが剣先に当たり止まる。

「そ、そんな……」
 アキラは愕然とした。硬いモノの正体は神の指だった。
 神は人差し指を1本立てて、魔力を指先に集中させアキラの剣を受け止める。

『諦めろ。大したもんだ。ワシを本気にさせたんじゃからのう』
 神はアキラを衝撃波で吹き飛ばす。
 今までとは桁違いの威力、アキラの体はズタズタに斬り裂かれ鮮血が舞う。

「ぐわぁぁあ! な、なんて力だ……」
 続けざまに神は黒い炎の弾丸をアキラに放つ。

「くそっ!」
 血だらけのアキラは盾を持ち必死に防ぐ。その時……

『バキッ!』
「そ、そんな……」
 アキラの持つ『英雄の盾』が砕け散る。

 神は手を緩めない。あらゆる種類の魔法を連続で放つ。
 アキラは必死に逃げ回るが避けきれない。
「ぐああああ!!」
 とうとうアキラは倒れ込む。

 神はボロボロのアキラを見下ろす。
『ふふ……終わりのようだな。楽しませてもらったぞ』
 神はアキラに手のひらを向ける。盾を失った今のアキラに神の攻撃を防ぐ術はない。

「……おい。お前を倒したら……ダンジョンアイテムは使えなくなるのか?」
 今にも死にそうなアキラは神に尋ねる。

『ふふ、そんなことを心配しているのか?
 ワシがこの世界を離れたらダンジョンはもちろん、ダンジョンが生み出したアイテムも当然消滅するな。
 それがどうしたんじゃ?』

 アキラは首元に手をやる。
「そうか……残念だな。せっかくみんなで良いアイテムを集めたんだけどな……!」
 アキラは『ドラゴンの首飾り』を握りしめる。

『な、なんだ!?』
 アキラの体が青黒く光り出す。

『こ、これは……竜人化!? 貴様、そんなアイテムを……!』
 神は即座に目の前のアキラに魔法を放つ。
『ドーーンッ!』
 爆風が2人を飲み込む。

『はぁはぁ……人間め、危ないところだった……』
『ドッ!』
『ぐおぉぉぉおおお!!』
 その時、神の腹に強烈な一撃が入る。
 何が起こったか理解できない神はもがき苦しむ。

 爆煙の中からアキラが現れる。青黒く光り、全身が鱗のように硬くなっている。

『ドラゴンの首飾り』による竜人化だ。
 短時間だけ全身の力を爆発的に高めることができるアキラの最終奥義だ。
 ただの力を込めたパンチで神を苦しめるほどの力。

『き、貴様ぁ……』
「来い! さっさと終わりにするぞ!」
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

残滓と呼ばれたウィザード、絶望の底で大覚醒! 僕を虐げてくれたみんなのおかげだよ(ニヤリ)

SHO
ファンタジー
15歳になり、女神からの神託の儀で魔法使い(ウィザード)のジョブを授かった少年ショーンは、幼馴染で剣闘士(ソードファイター)のジョブを授かったデライラと共に、冒険者になるべく街に出た。 しかし、着々と実績を上げていくデライラとは正反対に、ショーンはまともに魔法を発動する事すら出来ない。 相棒のデライラからは愛想を尽かされ、他の冒険者たちからも孤立していくショーンのたった一つの心の拠り所は、森で助けた黒ウサギのノワールだった。 そんなある日、ショーンに悲劇が襲い掛かる。しかしその悲劇が、彼の人生を一変させた。 無双あり、ザマァあり、復讐あり、もふもふありの大冒険、いざ開幕!

いらないスキル買い取ります!スキル「買取」で異世界最強!

町島航太
ファンタジー
 ひょんな事から異世界に召喚された木村哲郎は、救世主として期待されたが、手に入れたスキルはまさかの「買取」。  ハズレと看做され、城を追い出された哲郎だったが、スキル「買取」は他人のスキルを買い取れるという優れ物であった。

痩せる為に不人気のゴブリン狩りを始めたら人生が変わりすぎた件~痩せたらお金もハーレムも色々手に入りました~

ぐうのすけ
ファンタジー
主人公(太田太志)は高校デビューと同時に体重130キロに到達した。 食事制限とハザマ(ダンジョン)ダイエットを勧めれるが、太志は食事制限を後回しにし、ハザマダイエットを開始する。 最初は甘えていた大志だったが、人とのかかわりによって徐々に考えや行動を変えていく。 それによりスキルや人間関係が変化していき、ヒロインとの関係も変わっていくのだった。 ※最初は成長メインで描かれますが、徐々にヒロインの展開が多めになっていく……予定です。 カクヨムで先行投稿中!

強制的にダンジョンに閉じ込められ配信を始めた俺、吸血鬼に進化するがエロい衝動を抑えきれない

ぐうのすけ
ファンタジー
朝起きると美人予言者が俺を訪ねて来る。 「どうも、予言者です。あなたがダンジョンで配信をしないと日本人の半分近くが死にます。さあ、行きましょう」 そして俺は黒服マッチョに両脇を抱えられて黒塗りの車に乗せられ、日本に1つしかないダンジョンに移動する。 『ダンジョン配信の義務さえ果たせばハーレムをお約束します』 『ダンジョン配信の義務さえ果たせば一生お金の心配はいりません』 「いや、それより自由をください!!」 俺は進化して力を手に入れるが、その力にはトラップがあった。 「吸血鬼、だと!バンパイア=エロだと相場は決まっている!」

最難関ダンジョンで裏切られ切り捨てられたが、スキル【神眼】によってすべてを視ることが出来るようになった冒険者はざまぁする

シオヤマ琴@『最強最速』発売中
ファンタジー
【第15回ファンタジー小説大賞奨励賞受賞作】 僕のスキル【神眼】は隠しアイテムや隠し通路、隠しトラップを見破る力がある。 そんな元奴隷の僕をレオナルドたちは冒険者仲間に迎え入れてくれた。 でもダンジョン内でピンチになった時、彼らは僕を追放した。 死に追いやられた僕は世界樹の精に出会い、【神眼】のスキルを極限まで高めてもらう。 そして三年の修行を経て、僕は世界最強へと至るのだった。

女神に同情されて異世界へと飛ばされたアラフォーおっさん、特S級モンスター相手に無双した結果、実力がバレて世界に見つかってしまう

サイダーボウイ
ファンタジー
「ちょっと冬馬君。このプレゼン資料ぜんぜんダメ。一から作り直してくれない?」 万年ヒラ社員の冬馬弦人(39歳)は、今日も上司にこき使われていた。 地方の中堅大学を卒業後、都内の中小家電メーカーに就職。 これまで文句も言わず、コツコツと地道に勤め上げてきた。 彼女なしの独身に平凡な年収。 これといって自慢できるものはなにひとつないが、当の本人はあまり気にしていない。 2匹の猫と穏やかに暮らし、仕事終わりに缶ビールが1本飲めれば、それだけで幸せだったのだが・・・。 「おめでとう♪ たった今、あなたには異世界へ旅立つ権利が生まれたわ」 誕生日を迎えた夜。 突如、目の前に現れた女神によって、弦人の人生は大きく変わることになる。 「40歳まで童貞だったなんて・・・これまで惨めで辛かったでしょ? でももう大丈夫! これからは異世界で楽しく遊んで暮らせるんだから♪」 女神に同情される形で異世界へと旅立つことになった弦人。 しかし、降り立って彼はすぐに気づく。 女神のとんでもないしくじりによって、ハードモードから異世界生活をスタートさせなければならないという現実に。 これは、これまで日の目を見なかったアラフォーおっさんが、異世界で無双しながら成り上がり、その実力がバレて世界に見つかってしまうという人生逆転の物語である。

異世界で快適な生活するのに自重なんかしてられないだろ?

お子様
ファンタジー
机の引き出しから過去未来ではなく異世界へ。 飛ばされた世界で日本のような快適な生活を過ごすにはどうしたらいい? 自重して目立たないようにする? 無理無理。快適な生活を送るにはお金が必要なんだよ! お金を稼ぎ目立っても、問題無く暮らす方法は? 主人公の考えた手段は、ドン引きされるような内容だった。 (実践出来るかどうかは別だけど)

異世界に転移した僕、外れスキルだと思っていた【互換】と【HP100】の組み合わせで最強になる

名無し
ファンタジー
突如、異世界へと召喚された来栖海翔。自分以外にも転移してきた者たちが数百人おり、神父と召喚士から並ぶように指示されてスキルを付与されるが、それはいずれもパッとしなさそうな【互換】と【HP100】という二つのスキルだった。召喚士から外れ認定され、当たりスキル持ちの右列ではなく、外れスキル持ちの左列のほうに並ばされる来栖。だが、それらは組み合わせることによって最強のスキルとなるものであり、来栖は何もない状態から見る見る成り上がっていくことになる。

処理中です...