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 会場に残った30人の実力者たち。
 どの冒険者も雰囲気がある。この会場にもうザコはいないようだ。

 番号が呼ばれ、2人の冒険者がダンジョンへと足を進める。
 その背中は、さっきよりも重苦しい雰囲気だ。

「いつも使ってる武器……ですもんね。みんな防御力アップのアイテムを装備しているとはいえ、怖いですね……」
 花子は不安そうな表情だ。

 スクリーンにはダンジョン内の闘技場での戦いが映し出される。
 闘技場の周りには、先ほどのように回復魔法使いの姿が。
 そして、今回は運営のスタッフたちがいつでも止められるよう、スタンバイしている。
 どのスタッフも凄腕の冒険者なのだろう。

「それでは、始めてくれ」
 虎石が戦闘開始の合図を出す。

 今までの戦いとは違い、桁違いの緊張感。
 2人とも剣使いのようで、剣を構え、向かい合い睨み合っている。

「……すごい緊張感だ」

 緊張に耐えられなくなったのか、1人の剣士が動く。
 素早く相手に駆け寄り剣を振り下ろす。
『キンッ!』

 しかし、簡単には決まらない。
 当たり所が悪ければ、命に関わるケガをしかねない実戦だ。

「うおおお!」
 もう片方の剣士が反撃する。
 素早く振り回した剣が相手の腕を刺す。

「ぐわぁぁぁ!」
 刺された冒険者は、剣を落とし倒れ込む。

「そこまでだ!ッ」
 すぐに回復魔法使いが駆け寄り、ケガの治療をする。
 防御力アップアイテムのおかげもあり、傷は浅くすぐに治癒したようだ。

 ◇

「うう……」
 倒れ込む冒険者を見て、気分の悪そうなまどか。

「まどかちゃん……大丈夫?」
 心配そうにまどかの肩に手を置く花子。

「だ、大丈夫です……」
 とは言え、高校生のまどかにはショッキングな映像だったようだ。

「それでは、次の対戦を始める」
 次に呼ばれた番号はまどかだった。

「ま、まどかちゃん……」
「大丈夫です、花子姉さん。見ててください。私も相手も傷つけずに帰ってきますわ」
 そう言って、まどかは闘技場へ向かった。

「まどかちゃんの言ってた『私も相手も』って?」

 ◇

 まどかの戦いが始まった。
 対戦相手の男は弓使いのようで、大きな弓を持っていた。

「弓使いか……あんまり見ないタイプの冒険者だね。まどかちゃん、大丈夫かな?」
 心配そうにスクリーンを眺めるアキラたち。

 弓使いは試合が始まるとすぐにまどかから距離を取る。
 弓矢は接近戦は苦手だ。いかに離れた安全圏から矢を放てるかが勝負のポイントだ。
 男は素早く矢を装填し、まどかに向けて放つ。

『ピュンピュンッ!』
 まどかを目がけ、高速で飛んでくる矢。胸にでも刺さったら、致命傷になりかねない攻撃だ。

 しかし、まどかの目にはしっかりと矢が見えていた。
 自分の体に近づく矢を剣で叩き落とす。

「くっ……俺の矢が見えてるのかッ!?」
 男はさらに装填速度を上げるが、まどかは矢を斬りながら弓使いに走り寄る。

「ま、まどかちゃん! それは無防備すぎるぞッ!!」
 アキラはたまらず、スクリーンに向け大声を上げる。

「くっくっく……勝負を焦ったか! まだ子供だな!」
 自分に向かい、一直線に走ってくるまどか。
 弓使いからすれば格好の的だ。

『ピュンピュンッ』
 連続で放たれる矢の1本がまどかの体に突き刺さる。

「あぁ……」
 青ざめるアキラと花子。最悪の事態を想像した2人……

 しかし、矢の刺さったまどかの体は煙のように消え去った。
「な、なにぃ!?!?」
 信じられないものを見た弓使いは気が動転する。

 その時、弓使いは自分の首に冷たいモノが当たる感触に気づいた。

「ぁ……」
 声にならない声を上げる男。首に触れているのは、まどかの剣だ。
 まどかは分身に矢を受けさせ、その隙に相手の背後に回り込んだのだ。

「降参ですわね?」

「……はい」
 こうして、まどかの対戦は終わった。

 まどかは『私も相手も傷つけない』という言葉を有言実行した。
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