98 / 183
98
しおりを挟む
会場に残った30人の実力者たち。
どの冒険者も雰囲気がある。この会場にもうザコはいないようだ。
番号が呼ばれ、2人の冒険者がダンジョンへと足を進める。
その背中は、さっきよりも重苦しい雰囲気だ。
「いつも使ってる武器……ですもんね。みんな防御力アップのアイテムを装備しているとはいえ、怖いですね……」
花子は不安そうな表情だ。
スクリーンにはダンジョン内の闘技場での戦いが映し出される。
闘技場の周りには、先ほどのように回復魔法使いの姿が。
そして、今回は運営のスタッフたちがいつでも止められるよう、スタンバイしている。
どのスタッフも凄腕の冒険者なのだろう。
「それでは、始めてくれ」
虎石が戦闘開始の合図を出す。
今までの戦いとは違い、桁違いの緊張感。
2人とも剣使いのようで、剣を構え、向かい合い睨み合っている。
「……すごい緊張感だ」
緊張に耐えられなくなったのか、1人の剣士が動く。
素早く相手に駆け寄り剣を振り下ろす。
『キンッ!』
しかし、簡単には決まらない。
当たり所が悪ければ、命に関わるケガをしかねない実戦だ。
「うおおお!」
もう片方の剣士が反撃する。
素早く振り回した剣が相手の腕を刺す。
「ぐわぁぁぁ!」
刺された冒険者は、剣を落とし倒れ込む。
「そこまでだ!ッ」
すぐに回復魔法使いが駆け寄り、ケガの治療をする。
防御力アップアイテムのおかげもあり、傷は浅くすぐに治癒したようだ。
◇
「うう……」
倒れ込む冒険者を見て、気分の悪そうなまどか。
「まどかちゃん……大丈夫?」
心配そうにまどかの肩に手を置く花子。
「だ、大丈夫です……」
とは言え、高校生のまどかにはショッキングな映像だったようだ。
「それでは、次の対戦を始める」
次に呼ばれた番号はまどかだった。
「ま、まどかちゃん……」
「大丈夫です、花子姉さん。見ててください。私も相手も傷つけずに帰ってきますわ」
そう言って、まどかは闘技場へ向かった。
「まどかちゃんの言ってた『私も相手も』って?」
◇
まどかの戦いが始まった。
対戦相手の男は弓使いのようで、大きな弓を持っていた。
「弓使いか……あんまり見ないタイプの冒険者だね。まどかちゃん、大丈夫かな?」
心配そうにスクリーンを眺めるアキラたち。
弓使いは試合が始まるとすぐにまどかから距離を取る。
弓矢は接近戦は苦手だ。いかに離れた安全圏から矢を放てるかが勝負のポイントだ。
男は素早く矢を装填し、まどかに向けて放つ。
『ピュンピュンッ!』
まどかを目がけ、高速で飛んでくる矢。胸にでも刺さったら、致命傷になりかねない攻撃だ。
しかし、まどかの目にはしっかりと矢が見えていた。
自分の体に近づく矢を剣で叩き落とす。
「くっ……俺の矢が見えてるのかッ!?」
男はさらに装填速度を上げるが、まどかは矢を斬りながら弓使いに走り寄る。
「ま、まどかちゃん! それは無防備すぎるぞッ!!」
アキラはたまらず、スクリーンに向け大声を上げる。
「くっくっく……勝負を焦ったか! まだ子供だな!」
自分に向かい、一直線に走ってくるまどか。
弓使いからすれば格好の的だ。
『ピュンピュンッ』
連続で放たれる矢の1本がまどかの体に突き刺さる。
「あぁ……」
青ざめるアキラと花子。最悪の事態を想像した2人……
しかし、矢の刺さったまどかの体は煙のように消え去った。
「な、なにぃ!?!?」
信じられないものを見た弓使いは気が動転する。
その時、弓使いは自分の首に冷たいモノが当たる感触に気づいた。
「ぁ……」
声にならない声を上げる男。首に触れているのは、まどかの剣だ。
まどかは分身に矢を受けさせ、その隙に相手の背後に回り込んだのだ。
「降参ですわね?」
「……はい」
こうして、まどかの対戦は終わった。
まどかは『私も相手も傷つけない』という言葉を有言実行した。
どの冒険者も雰囲気がある。この会場にもうザコはいないようだ。
番号が呼ばれ、2人の冒険者がダンジョンへと足を進める。
その背中は、さっきよりも重苦しい雰囲気だ。
「いつも使ってる武器……ですもんね。みんな防御力アップのアイテムを装備しているとはいえ、怖いですね……」
花子は不安そうな表情だ。
スクリーンにはダンジョン内の闘技場での戦いが映し出される。
闘技場の周りには、先ほどのように回復魔法使いの姿が。
そして、今回は運営のスタッフたちがいつでも止められるよう、スタンバイしている。
どのスタッフも凄腕の冒険者なのだろう。
「それでは、始めてくれ」
虎石が戦闘開始の合図を出す。
今までの戦いとは違い、桁違いの緊張感。
2人とも剣使いのようで、剣を構え、向かい合い睨み合っている。
「……すごい緊張感だ」
緊張に耐えられなくなったのか、1人の剣士が動く。
素早く相手に駆け寄り剣を振り下ろす。
『キンッ!』
しかし、簡単には決まらない。
当たり所が悪ければ、命に関わるケガをしかねない実戦だ。
「うおおお!」
もう片方の剣士が反撃する。
素早く振り回した剣が相手の腕を刺す。
「ぐわぁぁぁ!」
刺された冒険者は、剣を落とし倒れ込む。
「そこまでだ!ッ」
すぐに回復魔法使いが駆け寄り、ケガの治療をする。
防御力アップアイテムのおかげもあり、傷は浅くすぐに治癒したようだ。
◇
「うう……」
倒れ込む冒険者を見て、気分の悪そうなまどか。
「まどかちゃん……大丈夫?」
心配そうにまどかの肩に手を置く花子。
「だ、大丈夫です……」
とは言え、高校生のまどかにはショッキングな映像だったようだ。
「それでは、次の対戦を始める」
次に呼ばれた番号はまどかだった。
「ま、まどかちゃん……」
「大丈夫です、花子姉さん。見ててください。私も相手も傷つけずに帰ってきますわ」
そう言って、まどかは闘技場へ向かった。
「まどかちゃんの言ってた『私も相手も』って?」
◇
まどかの戦いが始まった。
対戦相手の男は弓使いのようで、大きな弓を持っていた。
「弓使いか……あんまり見ないタイプの冒険者だね。まどかちゃん、大丈夫かな?」
心配そうにスクリーンを眺めるアキラたち。
弓使いは試合が始まるとすぐにまどかから距離を取る。
弓矢は接近戦は苦手だ。いかに離れた安全圏から矢を放てるかが勝負のポイントだ。
男は素早く矢を装填し、まどかに向けて放つ。
『ピュンピュンッ!』
まどかを目がけ、高速で飛んでくる矢。胸にでも刺さったら、致命傷になりかねない攻撃だ。
しかし、まどかの目にはしっかりと矢が見えていた。
自分の体に近づく矢を剣で叩き落とす。
「くっ……俺の矢が見えてるのかッ!?」
男はさらに装填速度を上げるが、まどかは矢を斬りながら弓使いに走り寄る。
「ま、まどかちゃん! それは無防備すぎるぞッ!!」
アキラはたまらず、スクリーンに向け大声を上げる。
「くっくっく……勝負を焦ったか! まだ子供だな!」
自分に向かい、一直線に走ってくるまどか。
弓使いからすれば格好の的だ。
『ピュンピュンッ』
連続で放たれる矢の1本がまどかの体に突き刺さる。
「あぁ……」
青ざめるアキラと花子。最悪の事態を想像した2人……
しかし、矢の刺さったまどかの体は煙のように消え去った。
「な、なにぃ!?!?」
信じられないものを見た弓使いは気が動転する。
その時、弓使いは自分の首に冷たいモノが当たる感触に気づいた。
「ぁ……」
声にならない声を上げる男。首に触れているのは、まどかの剣だ。
まどかは分身に矢を受けさせ、その隙に相手の背後に回り込んだのだ。
「降参ですわね?」
「……はい」
こうして、まどかの対戦は終わった。
まどかは『私も相手も傷つけない』という言葉を有言実行した。
33
お気に入りに追加
763
あなたにおすすめの小説

【書籍化】パーティー追放から始まる収納無双!~姪っ子パーティといく最強ハーレム成り上がり~
くーねるでぶる(戒め)
ファンタジー
【24年11月5日発売】
その攻撃、収納する――――ッ!
【収納】のギフトを賜り、冒険者として活躍していたアベルは、ある日、一方的にパーティから追放されてしまう。
理由は、マジックバッグを手に入れたから。
マジックバッグの性能は、全てにおいてアベルの【収納】のギフトを上回っていたのだ。
これは、3度にも及ぶパーティ追放で、すっかり自信を見失った男の再生譚である。
異世界で穴掘ってます!
KeyBow
ファンタジー
修学旅行中のバスにいた筈が、異世界召喚にバスの全員が突如されてしまう。主人公の聡太が得たスキルは穴掘り。外れスキルとされ、屑の外れ者として抹殺されそうになるもしぶとく生き残り、救ってくれた少女と成り上がって行く。不遇といわれるギフトを駆使して日の目を見ようとする物語
アイテムボックス無双 ~何でも収納! 奥義・首狩りアイテムボックス!~
明治サブ🍆スニーカー大賞【金賞】受賞作家
ファンタジー
※大・大・大どんでん返し回まで投稿済です!!
『第1回 次世代ファンタジーカップ ~最強「進化系ざまぁ」決定戦!』投稿作品。
無限収納機能を持つ『マジックバッグ』が巷にあふれる街で、収納魔法【アイテムボックス】しか使えない主人公・クリスは冒険者たちから無能扱いされ続け、ついに100パーティー目から追放されてしまう。
破れかぶれになって単騎で魔物討伐に向かい、あわや死にかけたところに謎の美しき旅の魔女が現れ、クリスに告げる。
「【アイテムボックス】は最強の魔法なんだよ。儂が使い方を教えてやろう」
【アイテムボックス】で魔物の首を、家屋を、オークの集落を丸ごと収納!? 【アイテムボックス】で道を作り、川を作り、街を作る!? ただの収納魔法と侮るなかれ。知覚できるものなら疫病だろうが敵の軍勢だろうが何だって除去する超能力! 主人公・クリスの成り上がりと「進化系ざまぁ」展開、そして最後に待ち受ける極上のどんでん返しを、とくとご覧あれ! 随所に散りばめられた大小さまざまな伏線を、あなたは見抜けるか!?
スライムすら倒せない底辺冒険者の俺、レベルアップしてハーレムを築く(予定)〜ユニークスキル[レベルアップ]を手に入れた俺は最弱魔法で無双する
カツラノエース
ファンタジー
ろくでもない人生を送っていた俺、海乃 哲也は、
23歳にして交通事故で死に、異世界転生をする。
急に異世界に飛ばされた俺、もちろん金は無い。何とか超初級クエストで金を集め武器を買ったが、俺に戦いの才能は無かったらしく、スライムすら倒せずに返り討ちにあってしまう。
完全に戦うということを諦めた俺は危険の無い薬草集めで、何とか金を稼ぎ、ひもじい思いをしながらも生き繋いでいた。
そんな日々を過ごしていると、突然ユニークスキル[レベルアップ]とやらを獲得する。
最初はこの胡散臭過ぎるユニークスキルを疑ったが、薬草集めでレベルが2に上がった俺は、好奇心に負け、ダメ元で再びスライムと戦う。
すると、前までは歯が立たなかったスライムをすんなり倒せてしまう。
どうやら本当にレベルアップしている模様。
「ちょっと待てよ?これなら最強になれるんじゃね?」
最弱魔法しか使う事の出来ない底辺冒険者である俺が、レベルアップで高みを目指す物語。
他サイトにも掲載しています。
異世界でぺったんこさん!〜無限収納5段階活用で無双する〜
KeyBow
ファンタジー
間もなく50歳になる銀行マンのおっさんは、高校生達の異世界召喚に巻き込まれた。
何故か若返り、他の召喚者と同じ高校生位の年齢になっていた。
召喚したのは、魔王を討ち滅ぼす為だと伝えられる。自分で2つのスキルを選ぶ事が出来ると言われ、おっさんが選んだのは無限収納と飛翔!
しかし召喚した者達はスキルを制御する為の装飾品と偽り、隷属の首輪を装着しようとしていた・・・
いち早くその嘘に気が付いたおっさんが1人の少女を連れて逃亡を図る。
その後おっさんは無限収納の5段階活用で無双する!・・・はずだ。
上空に飛び、そこから大きな岩を落として押しつぶす。やがて救った少女は口癖のように言う。
またぺったんこですか?・・・

俺は善人にはなれない
気衒い
ファンタジー
とある過去を持つ青年が異世界へ。しかし、神様が転生させてくれた訳でも誰かが王城に召喚した訳でもない。気が付いたら、森の中にいたという状況だった。その後、青年は優秀なステータスと珍しい固有スキルを武器に異世界を渡り歩いていく。そして、道中で沢山の者と出会い、様々な経験をした青年の周りにはいつしか多くの仲間達が集っていた。これはそんな青年が異世界で誰も成し得なかった偉業を達成する物語。

ダンジョンで有名モデルを助けたら公式配信に映っていたようでバズってしまいました。
夜兎ましろ
ファンタジー
高校を卒業したばかりの少年――夜見ユウは今まで鍛えてきた自分がダンジョンでも通用するのかを知るために、はじめてのダンジョンへと向かう。もし、上手くいけば冒険者にもなれるかもしれないと考えたからだ。
ダンジョンに足を踏み入れたユウはとある女性が魔物に襲われそうになっているところに遭遇し、魔法などを使って女性を助けたのだが、偶然にもその瞬間がダンジョンの公式配信に映ってしまっており、ユウはバズってしまうことになる。
バズってしまったならしょうがないと思い、ユウは配信活動をはじめることにするのだが、何故か助けた女性と共に配信を始めることになるのだった。
【完結】幼馴染にフラれて異世界ハーレム風呂で優しく癒されてますが、好感度アップに未練タラタラなのが役立ってるとは気付かず、世界を救いました。
三矢さくら
ファンタジー
【本編完結】⭐︎気分どん底スタート、あとはアガるだけの異世界純情ハーレム&バトルファンタジー⭐︎
長年思い続けた幼馴染にフラれたショックで目の前が全部真っ白になったと思ったら、これ異世界召喚ですか!?
しかも、フラれたばかりのダダ凹みなのに、まさかのハーレム展開。まったくそんな気分じゃないのに、それが『シキタリ』と言われては断りにくい。毎日混浴ですか。そうですか。赤面しますよ。
ただ、召喚されたお城は、落城寸前の風前の灯火。伝説の『マレビト』として召喚された俺、百海勇吾(18)は、城主代行を任されて、城に襲い掛かる謎のバケモノたちに立ち向かうことに。
といっても、発現するらしいチートは使えないし、お城に唯一いた呪術師の第4王女様は召喚の呪術の影響で、眠りっ放し。
とにかく、俺を取り囲んでる女子たちと、お城の皆さんの気持ちをまとめて闘うしかない!
フラれたばかりで、そんな気分じゃないんだけどなぁ!
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる